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石川幸宏コラム 『My POV』 vol.9|オープンゲート特集<2> オープンゲートの活用法

オープンゲートイメージ

前回のVol.8では、オープンゲートを理解する前に、映像・画像のさまざまなアスペクトレシオ(画角)について解説した。現在よく利用されているアスペクトレシオが、どんなメディアや目的で使われているかが概ねお分かり頂けたのではないだろうか?そしてそのアスペクトに自由に切り出せるオープンゲート記録の意味もご理解頂けたら幸いだ。
そんな中で、キヤノンからも2026年5月13日、最新機種の”EOS R6 V”という、EOS/PowerShot V seriesの最上位機種が発表された。EOS R6 Vは、7Kフルサイズセンサーを搭載しており、オープンゲートでの記録が可能だ。まだ6月下旬発売予定ということで、この機種についての詳細などは、こちらを参照頂きたい。またこの機種の発売時期の6月下旬には、オープンゲートのメリット解説などが提示される専門サイトもオープンするそうなので、こちらも各自のクリエイティブの参考になるのではないだろうか。

そんな中で今回のMy POVでは、実際のオープンゲート収録の活用法や注意点、実際の記録する際のメリット/デメリットについて話したいと思う。

新商品説明会でお披露目されたEOS R6 V

オープンゲートの主なメリットについて

簡単にオープンゲート記録の一般的な利用価値とメリットを簡単にまとめると下記のようになる。

  • 縦・横動画の切り出しが自由:センサー全体(3:2など)で記録するため、後からYouTube用の横長(16:9)やTikTok用等の縦長(9:16)へ自在にトリミングが可能。
  • 高画質を維持:撮影後にクロップしても十分な解像度が残るため、高画質なままでさまざまなSNSプラットフォームに対応できる。
  • アナモフィックレンズへの対応: シネマスコープサイズを撮影できるアナモフィックレンズで圧縮された映像を、センサーの全域を使っての記録が可能。

これまでシネマの世界では、特に3のアナモフィックレンズを用いた、シネマスコープサイズの映像をなるべく大きなサイズで解像度も最大限に維持したまま撮りたいという要望に応えるためにオープンゲート記録が使われてきた経緯がある。

キヤノンの幻のアナモフィックレンズ K-35 30mm T2.8A

オープンゲートの歴史

デジタルカメラの機能として「オープンゲート(Open Gate)」という言葉を最初に使い始めたのは、ドイツの映画用カメラメーカーARRI社(アリ)(Arnold & Richter Cine Technik)だ。
2013年、同社のデジタルシネマカメラ ALEXA XTにおいて、それまでは、センサーの一部を横長(16:9など)にクロップして記録するのが一般的だったが、同社のセンサーが持つ「3424×2202」サイズのセンサーの『全領域を余すことなくRAW(生データ)として丸ごと記録するモード』を開発、これを「Open Gate(オープンゲート)モード」と命名したことに始まる。
「オープンゲート」という言葉の語源は、ARRI社がフィルム映画の時代のフィルムカメラから映画用カメラを手掛けてきたことで、その物理構造が語源となっている。フィルムカメラには、レンズから入ってきた光をフィルムに当てるための「アパーチャ・ゲート(Film Gate/フィルムの通り道の窓)」という金属製の枠(マスク)がある。通常は、上映フォーマット(例:1.85:1のビスタサイズ)に合わせた細い窓のゲートを装着し、余計な部分に光が当たらないようにしていたが、特殊効果(VFX)の合成用素材を撮る際や、フィルムの最大面積を使いたい時は、マスクのない一番大きな窓に交換していた。この「遮るマスクを外して、窓(ゲート)を全開(オープン)にする」というフィルム時代の業界共通の概念を、デジタルの「センサー全画素読み出し」の名称としてそのまま流用したのが始まりのようだ。
当初は映画業界の高級シネマカメラだけの機能だったオープンゲートは、一般のミラーレスカメラにも搭載されはじめ、キヤノンも対象機種を拡大してきたことで、現在のカメラ業界全体のトレンド機能となってきている。

EOSにおけるオープンゲート

キヤノンの最近のオープンゲート対応機である、EOS R6 V/EOS R6 Mark III/EOS C50の優位点といえば、圧倒的な高解像度を誇る「7K RAW/MP4」からの柔軟な切り出し機能だろう。(EOS C400は6K RAW)
キヤノンのこの三機種のオープンゲートは、最大有効画素数約3250万画素のセンサー全域を活用した「7K」の解像度で記録が可能である(RAW:6960×4640/MP4:6912×4608)。
その優位性として 7Kの画素数があるため、SNS用の縦型(9:16、解像度はRAWで2610×4640)に大きくクロップしたり、編集時にデジタルズームやパン(カメラを振る動き)を加えたりしても、最終出力で極めて高精細な4K映像を維持できる。
さらにキヤノン最大の武器とも言えるディープラーニング技術を融合したオートフォーカス機能「デュアルピクセル CMOS AF II」が全域で機能することだ。センサーをフルに使うオープンゲート撮影時でも、ディアルピクセルCMOS AF Ⅱ は、高速・高精度な被写体認識・追尾AF(人物、動物、乗り物など)が画面の隅々まで機能し、ワンマン撮影や動きの激しい現場でも、ピント外れの心配が少ないことも大きなメリットとも言える。
またカメラ内部収録が可能な扱いやすいRAW収録ができること。
本格的なシネマカメラ(EOS C50/EOS C400)だけでなく、ミラーレス機(EOS R6 Mark IIIなど)でも、キヤノン独自の形式で12bit RAWをカメラ内に直接記録が可能だ。センサーが捉えた光の情報を12bit(約687億色)で丸ごと残せるため、編集時のカラーグレーディング(色調整)の耐性が非常に高い。
そして、暗部などでの高い階調表現を可能にする「Canon Log 2」への対応や、15ストップ以上の広いダイナミックレンジを活かした、シネマティックで空気感のある映像表現が可能になる。

Canon FDオールドレンズを使ったEOS C50での撮影現場

オープンゲート記録の活用メリット

大きな面積で捉えた画像から、横/縦などの好きなアスペクトレシオで後から切り出せるのが、オープンゲート記録の主なメリットだが、細かく見ていくと、その他にも現状の映像クリエイティブにフィットしそうな、さまざまなメリットが見えてくる。

1. 後から「手ブレ補正」をかけても画角が広く使える

通常、動画の編集ソフト(DaVinci ResolveのスタビライズやPremiere Proのワープスタビライザーなど)で後から手ブレを補正すると、画面の揺れを相殺するために映像の周辺が強制的にクロップ(拡大)され、画角が狭くなってしまう。 オープンゲート(3:2)で広めに撮っておくことで、最終出力である横型16:9や縦動画の9:16の枠外に「余白(のりしろ)」がたっぷり残ることになる。そのため、編集時に強力な手ブレ補正をかけても、本来見せたかった画角(広さ)を犠牲にすることなく滑らかな映像に仕上げることができる。

ダンスシーンの撮影などでも威力を発揮する(イメージ)

2. カメラの上下の「首振り(チルト)」を編集でコントロール

横長の16:9で撮影している場合、もし被写体の頭や足元が画面からはみ出してしまったら、後から修正することは不可能だ。オープンゲート記録しておくことで、上下の高さが最大まで記録されているため、16:9に切り出す際に「映像の位置を上下にスライド(チルト)」させることができ、撮影現場でフレーミングを細かく微調整する時間が省け、特にワンマン撮影での構図の失敗(頭切れなど)を後から救済できる。

3. レンズが持つ本来のポテンシャル(イメージサークル)を最大限活かせる

一般的な16:9動画は、フルサイズセンサーの上下を捨てて記録しているため、レンズが描く円形の光(イメージサークル)の「中央の細長い部分」しか使っていない。オープンゲート記録では、センサーの四隅まで光を捉えるため、レンズが持つ「周辺減光(周辺が暗くなる効果)」や「独特のボケ味」「周辺の歪み」といった、レンズ本来の味や個性を画面全体に余すことなく表現できる。特にオールドレンズや高級シネマレンズを使う際にはその辺にも大きな恩恵が得られる可能性があるだろう。

レンズの特性を活かせる撮影が可能(イメージ)

4. 特殊効果(VFX/CG合成)やモーショングラフィックスがやりやすくなる

映画やハイエンドな映像制作の現場では、実写映像にCGを合成したり、テキストを画面に配置したりする作業が頻繁に行われるが、 画面外に広いエリア(情報)が残っているため、例えば「画面の外からCGの物体が飛び込んでくる」ような演出をつくる際、合成の境界線(のりしろ)に余裕が生まれ、マッチムーブやトラッキング(画面の動きの同期)の精度が上がる。

VFX素材撮影にも有益(イメージ)

要するに、現代のオープンゲート記録の本質は、単なる「縦横の切り出し機能」ではなく、「現場でのフレーミングを気にするようなプレッシャーを軽減しつつ、ポストプロダクション(後編集)での自由度を最大化できる」といった役割を果たす点にある。

EOSのオープンゲート記録に関する留意点

ここでオープンゲート記録について、注意すべき点がいくつかある。

1. フレームレートが「最大30P」に制限

センサーの膨大な全画素データをリアルタイムで処理・記録するため、キヤノンの7K/6Kオープンゲートは最大29.97fps(30P)までしか対応していない。そのため、オープンゲートの状態で60P動画やスローモーション(120pなど)の撮影ができない。それらを行うには、従来のオープンゲートではない16:9や17:9で記録する必要がある。

2. データ容量の圧迫と「高速・高価なカード」の必須化

7K/6Kのデータを丸ごと記録するため、消費するデータ量は膨大になる。長時間の撮影には大容量のメモリーカード(特にCFexpress Type Bなど)が必須となり、メディア代や撮影後の保存用ストレージ(SSD/HDD)に注意を払う必要がある。

L.GOP(H.265等)とIntra、データ容量問題

最後に少々厄介な話で時節柄の問題ではあるが、2026年5月現在、市場でのメモリーカードやSSDの急激な高騰が叫ばれている。その中で映像制作における「データの軽さ」と「編集のスムーズさ」のジレンマが存在するが、キヤノンのオープンゲート記録は7K/6Kサイズのデータを取り扱うため、どうしてもこのデータ容量を気にせざるを得ない。
オープンゲート記録に関しては現在L.GOPと、Intra/RAWが用意されているが、「L.GOP=高圧縮だがPC負荷が高い」と「Intra/RAW=編集は軽いがデータ量が大きい」という、この二つのコーデック性質上のトレードオフは、動画制作者を最も悩ませる問題だろう。 

編集環境別に考えた場合、下記の方法が考えられる。

ハードウエアで解決(Macの場合): Apple Silicon(M2やM3、M4シリーズなど)を搭載したMacであれば、チップ内に「H.265(HEVC)ハードウエアアクセラレータ」が組み込まれているため、7KのL.GOPであってもある程度滑らかにネイティブ編集できる。
「プロキシ(Proxy)編集」を活用する: Windowsやスペックに余裕がないPCの場合、カメラの機能でメイン動画(7K/6K)と同時に「軽量なプロキシ動画(低解像度MP4)」を別カードに同時記録。編集時はこの軽量ファイルで作業し、最後の書き出し(レンダリング)の時だけ、メイン動画の7K/6Kデータに差し替えるワークフローが一般的だろう。

結局、どの撮影モードを選ぶべきか?
あくまで参考アイディアだが、編集環境のPCスペックと、用意できるメモリーカードの予算等に合わせて、以下の3つのワークフローから選ぶことが想定される。

  • PCスペックが高く、Macである場合、また細かい編集の必要がない場合
    「L.GOP(H.265/7Kオープンゲート)」 で撮影。データ量が最もコンパクトでカード枚数も抑えられる。
  • PCが標準スペックで、プロキシを作るのが面倒な場合
    「MP4 Intra(7Kオープンゲート)」 で撮影。データ量は大きくなるが、RAWほどではなく、タイムライン上の編集はかなり軽くなる。
  • データ量をミニマムに抑え、編集も簡単に終わらせたい場合
    無理にオープンゲートを使わず、EOS C50に搭載されている「縦横同時記録」機能を使用。最初からスマホ用の縦動画(軽量な2K/フルHDなど)が別ファイルとして完成しているため、切り出す作業は不要。
オープンゲート記録からのシネマスコープサイズの切り出し(イメージ)

オープンゲート記録はこれから一般に浸透していく撮影方法の一つだと思われるが、その中でいかに自分の制作するコンテンツにフィットするのかを設計段階で考えてから撮影することが重要だと思われる。
その中でも、特にキヤノンのオープンゲートは、やはり「7K/6K解像度の高画質」と「最強クラスのAF」の組み合わせが最大の魅力と言えそうだ。

本コラムについて

本コラムは、映像制作や上映方式に関する一般的な技術背景や歴史的な事例を紹介することを目的とした解説記事です。
本文中で言及しているフォーマット名、上映方式、配信サービスなどは説明上の例示であり、特定の企業・製品・サービスとの提携、認証、推奨、または公式的な見解を示すものではありません。

PROFILE

石川 幸宏(いしかわ ゆきひろ)

映像プロデューサー/ジャーナリスト
日本映画撮影監督協会 機関誌「映画撮影」編集長
映像関係専門のジャーナリストとして約30年に渡って活動。国内外で映像制作機材、技術、制作ワークフローなど取材し、記事執筆も多数。
DV Japan誌、HOTSHOTなどの専門誌の編集長を歴任。映像関連のアドバイザー/コンサルタント/スーパーバイザーや、近年は映像プロデューサーとして作品制作にも参画。日本映画撮影監督協会 賛助会員、(一財)プロジェクションマッピング協会 理事/広報アドバイザー。

関連リンク

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My POV vol.9
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/tips/movie-tech/mypov-09
2
https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/tips/movie-tech/mypov-09/image/mypov-09-720x444.jpg?sc_lang=ja-JP&hash=01B62AE64ACB0DE2AB8E93D0A7AE7C8B
2026-05-29