石川幸宏コラム 『My POV』 vol.8|オープンゲート特集<1> アスペクトレシオ考察〜その沿革といま〜
公開日:2026年4月30日
©︎2026YukihiroIshikawa

ピンク → 4:3、ブルー →16:9、イエロー →9:16
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このところカメラの「オープンゲート撮影」という言葉をよく耳にするようになってきた。
映画撮影用カメラの世界ではよく使われてきた言葉だが、市販のカメラでもこの言葉が聞かれるようになってきたのには少し驚かされる。
オープンゲートとは、カメラのセンサーサイズを全面フル活用した撮影のことである。
2026年4月現在、キヤノンカメラの現行機種でオープンゲート動画撮影に対応しているのは、CINEMA EOS SYSTEMのトップエンド機EOS C400、昨年発売された最新機種のEOS C50、そして最新ミラーレス機のEOS R6 Mark IIIの3機種だ。特に最新のEOS R6 Mark IIIは、ミラーレスEOSシリーズでは初となる約3250万画素のセンサーを使用した3:2センサーからのオープンゲート撮影に対応しており、7K30PのRAW/MP4動画をオープンゲートで収録できる。
他社製品も含め、こうした通常ラインナップのミラーレスカメラでもオープンゲート撮影に対応してきたことは、今後この動向がますます加速すると予測される。
しかしこのオープンゲート撮影とは一体どんな意味を持つのか?
それを知るには、まず映像の画角、つまり”アスペクトレシオ”と呼ばれる画像の縦と横の比率について、まず基本的なことを知っておくべきだろう。
今回から数回に渡り、いま話題のオープンゲート撮影を理解するための、いくつかの予備知識、基本的な技術情報などをこのコラムで取り上げていこうと思う。
初回は、映像の縦・横比率を意味する『アスペクトレシオ』について、過去からこれまでの歴史を振り返りつつ、オープンゲートを知るための基礎知識として、現在におけるこの「アスペクトレシオ」のあり方を考察してみたい。
映像世界のオープンゲート=シネマスコープ
映画撮影の世界で『オープンゲート』といえば、以前からアナモフィックレンズを使用したシネマスコープ撮影というイメージが強い。アナモフィックレンズはいわゆるシネマスコープ=シネスコと言われる横長の映像を記録するために用いられてきた。逆にスチルカメラ撮影出身の方には、オープンゲートという言葉自体が聞き慣れないものなのかもしれない。
多くのデジタルカメラはフィルムに由来するところから、そのアスペクトレシオは4:3という比率だった。そのセンサーの撮像面の全面を使って、そこにアナモフィックレンズを用いることで、シネスコサイズの映像を得られるようにしたことから、一般的にもセンサー全面=「オープンゲート」という言葉が使われ始めたように思う。
シネスコ自体の始まりは、まだフィルムカメラの時代、古くは1950年代に映画業界が当時普及してきたテレビに対抗するために、より迫力のある圧倒的な映像を観客に届けようと4:3のテレビ画面では味わえない、ビッグスクリーンによるワイド画面を提供しようとしたことに端を発する。
さらにトリビア的な細かい話をすると、この『シネマスコープ』という呼称自体も実は商標のある固有名詞で、20世紀フォックス社が権利を有するものだ。しかし時代が経つにつれてその後、この横長ワイドサイズの代名詞として一般的に使われるようになった。またシネスコサイズとほぼ同じ画角のものだが、パナビジョン社は『パナビジョン』と呼んでいるようなものもあるし、1950年代の日本の映画会社でもその商標の問題で、同じ2.35:1の画角で、東宝の『東宝スコープ』、東映の『東映スコープ』、松竹では『松竹グランドスコープ』などの固有名称がついていて、作品の上映の最初にその表示がドーンと画面に表示されていた。
一般的な動画のアスペクトレシオ
それでは実際に、現在ではどのようなアスペクトレシオの画像が存在するのだろうか?現在において一般的に使われているアスペクトレシオの画像を1枚の画像から切り出してみた。縦横の比率比較表を参考にして各画像を見てほしい。なお基本として撮影した元の画像は、4:3と言われるスタンダードサイズで画像データの最大のピクセル数は、ヨコ4032 × タテ3024 pixel。全ての画像はそこから切り出している。
<1>スタンダードサイズ(4:3)
フィルムの時代のクラシック映画やアナログ放送時代のテレビなど、映像が始まった頃からずっと使われ続けてきた、いわゆるスタンダードサイズと言われる画角。アスペクトレシオを語る際にはいつも基本となる画角だ。多くのカメラのセンサーも元々フィルムの撮像面を基準に設計されてきたので、そもそもオープンゲートで記録される画像は、これまでこの4:3の画角になるものがほとんどだった。
<2>テレビモニター(16:9)
現在、映像といえばこの画角、いわゆる16:9と言われるテレビモニターの標準的な画角だ。2003年のデジタル放送開始以来、従来のテレビの4:3から、この16:9に変更になった。歴史的には2003年に、テレビがアナログ放送からでデジタル放送に変わり、その時に国際電気通信連合(ITU)によって国際的に規格標準化されたアスペクトレシオが16:9で、その時に多くの映像が4:3から16:9の画角に変わり、一般的に撮る映像もハイビジョン=16:9というのが主流になった。
<3>アメリカンビスタ(1.85:1)
米パラマウント社がシネマスコープに対抗して開発したビスタビジョンの流れから生まれた。現在のハリウッド映画など16:9に近い画角というのもあり、現在最も普及しているアスペクトレシオだ。
<4>ヨーロッパビスタ(1.66:1)
横長のアメリカンビスタに対して欧州、特にイギリス、フランスでは、縦長の1.66:1という比率が好まれ、1990年代までのヨーロッパ映画で使用された。縦の比率が大きいことから、人物の表情やクローズアップ、縦方向の空間(空や足元など)の演出をより広く見せるのに適すると言われる。テレビで見ると、画面の左右に細い黒帯(ピラーボックス)が入ることがある。
<5>シネマスコープ(2.35:1/2.39:1)
大方の説明は前述の通りだが、元々2.35:1という画角が基本だった。しかし、2.35:1は古い規格(1970年以前)で、現在は2.39:1(または2.40:1)が業界の標準規格となっている。2.35:1から2.39:1へ変わったのには理由がある。1950年代に登場した最初のシネスコは2.35:1だったが、1970年にSMPTE(映画テレビ技術者協会)によって規格が変更、その理由は「編集点」を隠すためだ。フィルム時代、映画を上映する際にはフィルム同士を繋ぎ合わせる「スプライス(接合部)」が必要だった。しかし2.35:1のままだと、映写時にこの繋ぎ目が画面の上下に一瞬見えてしまうことがあり、この問題を解決するため、画面の上下を少しカットして(高さを減らして)繋ぎ目を見えないようしたことが事の由来だ。その結果、横比率が相対的に長くなり、2.39:1という数値になった。
しかしここでまた疑問が残る。なぜ現在も多くの人がシネスコサイズ=「2.35:1」と言うのか?である。現在、実際に上映されている映画のほとんどは2.39:1で作られている。しかし今でも「2.35:1」と呼ぶ人が多いのは、それが慣習的な呼び名であったことが原因のようだ。シネスコ=2.35:1が長年親しまれた名称であるため、2.39:1や2.40:1のことも含めて、総称として「シネスコは、2.35:1」と呼ぶ慣習が残った、というのが実情のようである。
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デジタルシネマでの現状として、現在のデジタル上映(DCP)規格では、正式には2.39:1が採用されている。
<6>IMAXフルサイズ(1.43:1)
IMAXの歴史は、ある意味で万博用映像の歴史でもある。1967年のモントリオール万博の際にカナダの映像技術者が、万博のための大型映像を複数台の映写機を利用して投影しようとしたところ、複数の映像の同期を取ることが当時の技術では非常に難しかった。そこで1台の強力な映写機で1枚の巨大な映像を映し出す手法として考案されたのがIMAX(Image Maximum)の起源だ。一コマあたりの面積が35mmフィルムの9倍、70mmフィルムの約3倍というサイズで、巨大な画面に投影しても鮮明な画像が保たれる。また特殊な空間演出用の映像として誕生したことから没入感を重視したことで縦方向の解像度も重要視されて、1.43:1という正方形に近いアスペクトレシオになったようだ。そしてこのIMAX映像が初めて公開されたのが、実は1970年に日本の大阪で開催された万博会場だったというのも実に興味深い。
<7>デジタルIMAX(1.90:1)
2008年、シネマコンプレックスの世界的普及とともに、それまで巨大でコスト高だったフィルムのIMAXに変わって、導入しやすいデジタル上映用IMAXが開発された。そこで採用されたのが、従来よりも横幅がある1.90:1というワイドな画角だ。また3D映像の上映にも対応するため、2台のプロジェクターで一つの画面を映し出す方式が採用された。デジタルIMAXが画期的なのは、それまでIMAX専用カメラで撮影しなければIMAX上映ができなかったが、デジタルになって、IMAX DMR(Digital Media Remastering)という技術で、IMAX品質にアップコンバートできるようになった点だろう。これによって多くの作品がIMAXシアターで鑑賞できるようになった。
<8>ユニビジウム(2:1)
映画「地獄の黙示録」などで有名なレジェンド撮影監督、ヴィットリオ・ストラーロ氏が1998年ごろに提唱した画角。「Unity of Vision」(=視覚の統一)を意味する、どんな環境でも作り手の意図した構図を損なわず上映することを目指したアスペクトレシオとして提唱された。かなり昔に提唱されたフォーマットで、その後はあまり使われることもなかったのだが、実はここ近年になって、このアスペクトレシオが急速に注目され始めた。特にNetflixやAmazonPrime Videoなどの動画配信サービスの映画やドラマ作品で、この2:1という画角がスタンダードになりつつあり注目されている。さらにスマートフォンの画角(2.33:1)に近いことや、2:1がテレビ標準の16:9とシネスコの2.39:1の間の数字で、レオナル・ド・ダビンチが描いた「最後の晩餐」の比率にも近いことなど、作品の構図の美しさを最も引き出すアスペクトレシオとして近年、大きく注目されている。
<9>ウルトラワイド/スマートフォン(2.33:1)
近年、上記の動画配信サービスをスマートフォンで鑑賞するケースが増えたこと。そして従来の16:9の画面だったスマートフォンで問題だった、ベゼル(縁)の問題が解決し、表画面全体に表示ができるようになったことで、このアスペクトレシオを持つスマートフォンが近年大きく増えた。ゲーム需要としてもPCでもこのサイズの画面が普及し、よりシネスコに近い画角で迫力ある映像が楽しめる。
<10>スチルカメラ(3:2)
APS-Cサイズと言われる、スチルカメラの撮像素子の標準的なアスペクトレシオ。その流れから最近の35mmフルサイズのカメラも概ねこの3:2のセンサーが搭載されている。キヤノンのEOS Rシリーズもこの3:2なので、キヤノンで言うところのオープンゲートとはこの3:2のフルサイズセンサー全面を使ったものだ。
その他、下記については、一応最近の流行りの動画画角を並べてみた。
各アスペクトレシオの比較表も参考してほしい。
<11>タテ型動画ワイド(1:2.33)

<12>スクエア(1:1)

参考までに、現在のキヤノンカメラのオープンゲート規格である、3:2の画像から、いくつかの画像をサンプル的に切り取ってみた。要は現在のオープンゲートとは、フォーマットフリーを実現する収録方法であり、センサー全面の画角で切り取っておけば、配信や上映先の使用用途によって、様々なアスペクトレシオの動画が切り取れる、という点が最も大きなメリットになるわけだ。
ただそこには切り出す際の解像度やセンサー特性などの問題も生じてくる。次号では、その点についての話も拡げてみたい。
| 名称 | 比率(X:1) | 整数比 | 横ピクセル数 | 縦ピクセル数 | デバイス/使用用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| スタンダードサイズ | 1.33:1 | 4:3 | 4032 | 3024 | 35mmフィルム、およびデジタル放送開始前のテレビ |
| テレビモニター | 1.78:1 | 16:9 | 4032 | 2265 | デジタル放送開始後の現在のテレビモニターの標準画角 |
| アメリカンビスタ | 1.85:1 | 37:20 | 4032 | 2179 | 16:9に近い、パラマウント社が開発、ハリウッド映画の標準 |
| ヨーロッパビスタ | 1.66:1 | 5:3 | 4032 | 2428 | イギリス、フランスで1990年ごろまで普及 |
| シネマスコープ | 2.35(2.39):1 | 47:20 | 4032 | 1716(1687) | 実写大型映画 20世紀フォックスが開発、商標保有 |
| IMAX(フルサイズ) | 1.43:1 | 4032 | 2820 | フィルムのIMAX、一部のIMAXシアター | |
| デジタルIMAX | 1.90:1 | 4032 | 2122 | 近年のIMAXデジタルシアターやデジタルシネマの標準規格DCPサイズ | |
| ユニビジウム | 2.00:1 | 2:1 | 4032 | 2016 | 動画配信サービス等の映画ドラマで採用、V.ストラーロ氏が提唱 |
| ウルトラワイド/スマートフォン | 2.33:1 | 21:9 | 4032 | 1730 | ワイドPCモニターやワイドスマートフォンで採用 |
| スチルカメラ | 1.50:1 | 3:2 | 4032 | 2688 | EOSシリーズなどのスチルカメラ |
| 縦型スマートフォン | 1:2.33 | 1298 | 3024 | スマートフォンのタテ型動画(ワイド版) | |
| スクエア | 1:1 | 3024 | 3024 | 正方形/インスタントカメラ等 |
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本コラムについて
本コラムは、映像制作や上映方式に関する一般的な技術背景や歴史的な事例を紹介することを目的とした解説記事です。
本文中で言及しているフォーマット名、上映方式、配信サービスなどは説明上の例示であり、特定の企業・製品・サービスとの提携、認証、推奨、または公式的な見解を示すものではありません。
PROFILE
石川 幸宏(いしかわ ゆきひろ)
映像プロデューサー/ジャーナリスト
映像関係専門のジャーナリストとして約30年に渡って活動。国内外で映像制作機材、技術、制作ワークフローなど取材し、記事執筆も多数。
DV Japan誌、HOTSHOTなどの専門誌の編集長を歴任。映像関連のアドバイザー/コンサルタント/スーパーバイザーや、近年は映像プロデューサーとして作品制作にも参画。日本映画撮影監督協会 賛助会員、(一財)プロジェクションマッピング協会 理事/広報アドバイザー。