技術解説③|RAW収録とLog収録
公開日:2025年7月31日
RAW収録
RAW収録とは、カメラのセンサーが捉えた光の情報をほぼそのまま保存する記録方式で、感度やガンマカーブ、ホワイトバランスが固定されず、後処理で自由に調整できるのが特徴です。高いビット深度により広いダイナミックレンジを確保し、暗部からハイライトまで豊かな階調を記録できます。これにより、ポストプロダクションにおいて露出やホワイトバランス、色調整の自由度が非常に高く、最高画質を維持しながら柔軟な画づくりが可能です。
Log収録
Log収録とは、カメラが捉えたセンサーデータに対して、あらかじめ特定のガンマカーブ(Canon Log 2/Canon Log 3)を適用して記録する方式です。この手法により、映像は撮影時点では「フラット」な印象となり、ハイライトやシャドウのディテールが失われにくく、広いダイナミックレンジが保持されます。ガンマカーブやホワイトバランスは固定されますが、圧縮コーデックにより記録する工程で、オーバーサンプリングの処理やノイズリダクションもかけられるため、RAWデータよりもノイズが少なく扱いやすいデータを得ることができます。
RAW収録では、センサー出力そのままの豊富な情報量をもったデータが得られますが、その分データ量が非常に大きくなります。
Logは圧縮されたデータなので、RAWほどデータ量が大きくならず、扱いやすいファイルサイズを保ちながらも、カラーグレーディング耐性に優れた映像が得られる点にあります。そのため、ポスト処理の自由度と効率的なワークフローのバランスを取りたい撮影に最適です。
Logの映像はフラットでコントラストや彩度が低く見えますが、これは後処理に適した状態であり、現場ではLUT(ルックアップテーブル)を適用することで、仕上がりに近いイメージを確認することができます。
Log収録に対応したキヤノンのカメラには、「ビューアシスト」機能が備わっており、この機能を使用することで、プリセットされたRec.709変換(CMT 709等)を適用し簡易変換し、仕上がりをイメージしやすい状態の映像でファインダーや液晶モニターで確認することができます。EOS R5 Mark IIのビューアシスト機能ではCMT 709に簡易変換される仕様になっています。
コラム
RAW収録時に「ガンマ」を選ぶ理由とは?
RAWで撮影する際、カメラはセンサーからの生データを記録するため、Canon Log 2/Canon Log 3 など、どの「ガンマ」を選んでも記録される映像そのものには影響しません。では、なぜ「カスタムピクチャー」でガンマ設定を選ぶ必要があるのでしょうか?
答えは、モニタリングとLUT運用に深く関係しているからです。
RAW収録の現場では、液晶モニターやEVF、HDMI出力を通じて表示される映像に、プリセットまたはカスタムLUTを当ててモニタリングするのが一般的です。このとき重要になるのが、そのLUTが“どのガンマ”を前提に作られているかという点です。
たとえば、「Canon Log 2」に基づいたLUTを、「Canon Log 3」の映像に適用した場合、意図したルックが得られず、明るさやコントラストがズレてしまうことがあります。つまり、モニタリング用LUTと表示ガンマが一致していないと、現場での判断を誤るリスクが高まります。
さらに、現場で使用したLUTは、ポストプロダクションでも色調整のガイドとして活用されることが多く、「どのガンマで撮影時にモニタリングしていたか」を正しく記録しておくことは非常に重要です。
このように、RAW収録であってもガンマの選択はモニタリング精度や制作全体の色管理に大きく関わっており、見過ごせない設定項目です。