想像をかきたてる、フォトストーリー的ポートレート写真の撮り方
公開日:2025年4月21日


中華料理店にて、席に着いてからお店を出るまでの女の子の姿を、フォトグラファーのあべあさみさんが撮影。この記事では、一連の作品と共に、ストーリーのあるポートレート写真・動画の撮り方をご紹介。使用機材は、2025年3月27日(木)に発表されたAPS-Cサイズセンサー搭載のミラーレスカメラ「EOS R50 V」と、EOS R50 Vのために新開発されたキットレンズ「RF-S14-30mm F4-6.3 IS STM PZ」。EOS R50 Vは、動画撮影にも便利な縦位置の撮影に適した小型軽量と操作性を誇り、昨今のSNS発信をメインとした撮影にもぴったりの1台です。
PROFILE
あべあさみ
フォトグラファー 1995年生まれ、東京都出身。ファッションメディア「Droptokyo」のフォトグラファー、編集者として活動したのち、2022年6月に独立。女性を中心にモデル、アイドル、アーティスト、女優、声優などのポートレート他、ライブ撮影やアイドルグッズなどの撮影をしている。また、フォトグラファーとしての活動だけでなく、幅広いコネクションを活かしたキャスティングなども手がけている。オリジナル企画に「町中華と女の子」がある。
1.ポートレート写真の魅力は「想像させる」ことにある

ポートレート写真を撮る際に私が心がけていることは、「あまりリクエストをしない」ということです。この背景を入れたいからここに立ってほしい、光に対してどっちを向いてほしいなどの、撮影に最低限必要なことだけを伝えて、あとの表情や動作などはモデルに任せるようにしています。私のポリシーは「自分の見たいものを撮る」なのですが、自分の決めたシチュエーションにおける被写体の自然なふるまいこそが、私の見たいもの。あれこれリクエストはしないほうが、結果的に自分が求めているものにもなるし、その人だからこその、ストーリーのあるポートレート写真になります。
そのうえで、ポートレート写真の魅力は「想像させる」ことにあります。この表情を撮るのにどんな会話をしたのだろう、撮影者と被写体はどんな関係性なのだろうなど、見る人に写真のバックストーリーを想像してもらえることが、ポートレート写真の醍醐味。写真にストーリーを包含させることで、その魅力へとより近づけることができます。
今回、私とモデルの桃果ちゃんが訪れたのは、東京・高円寺にある「中華料理 七面鳥」。この記事に掲載している写真も、1枚ずつで見るというよりも7枚全てを通してストーリーを想像し、読み取ってもらいたいという意図で撮影しています。
2.ストーリーを意識したポートレート撮影のイロハ
scene1. 入店 ——店の雰囲気と被写体の表情、両方を引き立てる

席に座って、店内を見回したりメニューを眺めたりしているところを切り取ったなかの1枚です。この時の私は、店に入った時のワクワク感や、空腹の状態でメニューを眺めている真剣な表情に注視して撮影していました。顔に光が当たるように、外からの光が入る窓や入り口の向かいにある席に座ると、あまりISO感度を上げずに済み、ノイズの少ない写真を撮ることができおすすめです。
撮影のポイントは、できるだけ焦点距離を短くし、被写体と店内が半分ずつ入るぐらいのアングルを探すこと。被写体の表情に加えて、店の雰囲気も伝えることができるからです。この時は席が壁にくっついていたため、まずは画角的に写し込める範囲にある店内の特徴的なものを探し、メニューが書かれたホワイトボードに決めました。写真を見る人が店の雰囲気やどんなメニューがあるかなどを感じられるように、被写体を右に寄せてホワイトボードも入るようにしています。店の雰囲気とともに、何をオーダーするか迷っているのかな、という被写体の状況を想像させることができます。
撮影の手順
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被写体の顔に光が当たるよう、正面かサイドに入り口や窓が来る席を選ぶ
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席では、背景が充実している方に被写体を座らせる
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被写体の背景に、店の雰囲気がわかる特徴的なものを探す
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店と被写体が1:1になるアングルで撮る
scene2. 料理 ——その場の臨場感を伝えつつ、メインの一皿を引き立てる

料理を撮る時は、メインのものだけをフレーム内に配置するのではなく、副菜や飲み物も一緒に写り込ませると、その場の臨場感をストーリーとして見せつつ、よりメイン料理を引き立たせることができます。
そこで大事なポイントが、メインの料理以外はぼかすこと。ズームレンズの場合は、望遠側にズームするほど被写界深度が浅くなり、ピント位置の手前や奥がよくぼけるようになります。メインの料理がより浮き出て見えるので、副菜や飲み物などの副題はあくまで引き立て役に、とにかくぼかしてしまいます。
そして、私がよくやる手法が、メインをど真ん中に配置しないこと。あえて余白をつくることで、少し上級者っぽい写真になります。
撮影の手順
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メイン(主題)とする料理を決める
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メインの周りに副菜などを配置する
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メインの料理がど真ん中に来ないよう、フレーミングで余白をつくる
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F値を小さくするか長めの焦点距離で、メインの周りをぼかして撮影する
scene3. 食べている表情 ——アップで「美味しい顔」をキャッチ!

食べている時の自然な表情の撮影は被写体は動いている状況なので、被写体がブレないようシャッタースピードを調整します。シャッタースピードは速いほど露出は暗くなってしまうので、ISO感度を上げることで調整をし、ブレず、暗すぎもしないベストの設定で撮っていくようにします。
表情がよくわかるのは、画像の8割くらいが顔で埋まるアップでの撮影。ただし、顔に寄りすぎると食事中であることは伝わりにくくなってしまうので要注意。顔の近くに箸や食べ物が来たタイミングでシャッターを切ると伝わる写真になります。
また、ピントは顔に合わせて撮りますが、その時に食べ物がぼけてしまう場合は、F値を少し絞るか、広角側の焦点距離でカメラ自体を被写体に近づけて撮ると、食べ物にもピントが合った写真が撮れます。
撮影の手順
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シャッタースピードとISO感度を調整して被写体ブレと暗さを防ぐ
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モニターの8割が人物の顔で埋まるくらいに焦点距離を調整する
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顔の近くに食べ物が来たタイミングでシャッターを切る
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食べ物がぼけてしまう時は、F値か焦点距離で調整する
scene4. モグモグタイムから食べ終わりまで ——とにかくシャッターを切りまくる



食べているシーンの写真は、動作を止めてもらって撮ると不自然になってしまいがちです。被写体にはあくまで自然にしてもらい、大切なのはとにかくシャッターをたくさん切ることです。
その際、動いているものを撮ることになるので、表情同様、ブレてしまわないようにシャッタースピードを落としすぎないこともポイントです。とはいえ、前述の通り、シャッタースピードを速めるほど写真は暗くなっていきます。ISO感度を上げて、ベストな塩梅へと導いていきましょう。
また、ある程度被写体が動くことを予測した画角をあらかじめ決めておくと、いい瞬間だったのに被写体がフレームアウトしてしまった、追いきれなかった、といった撮りこぼしを防げます。
撮影の手順
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ブレないようにシャッタースピードを調整する
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写真に暗さを感じたらISO感度を上げて調整する
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被写体が動作をしてもフレームアウトしない焦点距離をあらかじめ決めておく
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とにかくたくさんシャッターを切る
scene5. 退店 ——趣向を凝らしてテクニカルな1枚を撮る!

最後はちょっとアーティスティックに締めてみました。店からモデルが出ていく姿を、ガラスの扉越しに撮影しています。
暗い店内に露出を合わせた状態で外を写すと、明るすぎて外が白飛びしてしまうので、レンズを外に向けたままISO感度を下げて調整します。外だけに合わせて下げるのではなく、被写体の明るさもちょうどいいところを探って設定しましょう。
ピントは被写体に合わせます。この時、扉と暖簾の間に被写体がいることを伝えるためには、扉と暖簾がぼけすぎてしまわないようにします。モニターで確認をしながら、認識できる程度までF値を絞り、撮影します。店の外に出て、扉を閉めてこれから帰るシーンを、フィルターがかかったような雰囲気のある写真で表現できます。
撮影の手順
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外の明るさに合わせてISO感度を下げる
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被写体にピントを合わせる
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手前の扉と奥の暖簾もぼけすぎないようF値を調整する
3.「動画」で表現するストーリーのあるポートレート
ポートレート写真の魅力は「想像させる」ことだと話しましたが、 ポートレート動画の魅力は「体験させる」ことだと思っています。一瞬を切り取る写真とは違って、動画は過程までも写すことができます。撮影者と被写体との関係性がわかるようにつくり上げることができ、見た人は自分がまるでそこにいるかのような気持ちになれます。それこそが、動画の面白さだと思います。写真では伝えきれない、些細な表情の変化や身体の動き、料理から出る湯気などを、部分的に切り取ることを意識しました。また、中華店にあふれる笑い声や食器がぶつかる音など、環境音をあえて活かすことで感じられる情景もこだわったポイントです。
4.使って実感したEOS R50 Vの魅力


私がポートレートを撮る時に意識しているのは、被写体との心の距離と、空気感です。EOS R50 Vは、がっしりどっしりとは程遠い軽量でコンパクトなカメラなのに高機能。カメラに信頼を置きながら、撮影はラフな雰囲気でできるため、被写体のより自然な表情を引き出せると感じました。また、AF機能がとても優秀で、シャッターチャンスを逃さずに撮影できるのも魅力的でした。日常のスナップや、家族や友人をたくさん撮りたい方、カメラの基本を勉強しながら技術をつけたいと思っている方におすすめです。ボディーとRF-S14-30mm F4-6.3 IS STM PZがセットになったレンズキットで、ほとんどのシチュエーションをカバーできます。景色を撮りたい時も、家族やお子さんの顔を撮りたい時もばっちり撮れます。広角までカバーされているため、カフェなどであまり動き回れない状況での縦写真でも、しっかり背景を入れるなど、座ったままでいろいろな写真を撮ることができます。
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