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技術解説①|Canon Log

 EOS カラーワークフロー

EOS/CINEMA EOS SYSTEMにおいて、鮮やかな色再現、豊かな階調表現を実現するためのカラーマネジメントをコントロールする機能は、日々進化しています。現在では、EOS Rシリーズのカメラでも、動画専用のシネマカメラ、CINEMA EOS SYSTEMシリーズと同等の映像表現ができるようになりました。

2011年に発表したEOS C300を皮切りに発売されてきたCINEMA EOS SYSTEMシリーズで初めて搭載された、Canon Log(キヤノンログ)は、映画質感の色再現性と豊かな階調表現を可能にする撮影モードです。
現在Canon Logには、Canon Log 2とCanon Log 3の2つがありますが、この10年で動画撮影カメラの性能も、HDから4Kを超える解像度へ、1ピクセルあたりの色の情報量を示すビット深度も、8bitから10bit、12bitへ進化したことなど、新たな映像撮影/収録機能の搭載によって、さらなる高画質、高品質な映像制作が可能になっています。
映画、TV、Web映像など、配信や上映先別の新しいワークフローにも対応するなど、時代の映像トレンドにフィットするように、キヤノンのカラーワークフローソリューションは日々進化しています。

Canon Logについて

Log(ログ)とは、暗部から明部までをクリアに表現する、広いダイナミックレンジを確保するために設定されたガンマカーブです。現在シネマカメラと言われるカメラのほとんどには、このLogモードが搭載されています。

Logとは何か?

通常のTVモニターで表示する際の標準的な表示規格にRec.709があります。
このRec.709とは、一般的なTVモニター表示に適性な色域(sRGB)とガンマカーブ(2.4)を持つ標準規格ですが、Logは、このRec.709の映像表示よりも、暗部からハイライトまでの諧調(暗部から明部までのグラデーション)が圧倒的に広く再現できる記録方式のことです。
Rec.709の設定で撮影した際には、TVモニターのダイナミックレンジが人間の見た目よりも狭いため、より暗い部分は黒つぶれになり、輝度が高い発光部分などは白飛びしてしまうという現象が起きます。
こうした場合に、Logで収録することにより、より暗い部分からハイライトの細かい部分までディテールが残り、フィルムのような豊かな階調で映像表現をすることができます。

Canon Log 2で撮った素材(コントラストが低く白くて眠い状態)
Canon Log 2に709LUTを当てた画像(撮影時の見た目に近い状態)
カラーグレーディング後の最終画像

Rec.709とLogの使い分け

Rec.709

完成した映像を一般的に表示する場合、Rec.709で撮影または変換された映像を使用します。

メリット:
編集不要:Rec.709で撮影した映像は、そのままモニターで表示しても、通常のビデオと同じように見えます。
データ容量が小さい:10bitのLogと比べると8bitのRec.709はデータ容量が小さいため、編集時の負荷が軽減されます。
モニターで確認しやすい:撮影時に意図した色味を確認しやすいです。

デメリット:
ダイナミックレンジが狭い:明暗差の激しいシーンでは、白飛びや黒潰れが発生しやすくなります。
色調整の自由度が低い:Rec.709で撮影した映像は、Logに比べて色調整の自由度が低く、大幅な色変更は画質劣化を招く可能性があります。
クリエイティブな表現に限界:Logに比べて、自由な色表現やクリエイティブな表現に限界があります。

Log

編集時に柔軟性を高めたい場合、広いダイナミックレンジを記録したい場合にLogで撮影します。

メリット:
広いダイナミックレンジ:明暗差の激しいシーンでも白飛びや黒潰れを抑え、ディテールを保持できます。
柔軟な色調整:カラーグレーディングで自由度の高い色表現が可能です。
クリエイティブな表現:意図した通りの色味や雰囲気に調整できます。

デメリット:
編集が必要:Logで撮影した映像は、そのままではフラットでコントラストが低い(白っぽい画像)になるため、編集ソフトでLUT(ルックアップテーブル)を適用したり、カラーグレーディングをする必要があります。
情報量が多い:10bitなど大きなビット数(色深度)で記録することになるため、データ容量が大きくなります。
モニターで確認しづらい:Logで撮影した映像は、モニターで見たときに通常の映像と異なり、Logそのままでは意図した色味を確認しづらい場合があります。

Canon logの種類

現在、キヤノンカメラに搭載されているCanon Logには、Canon Log 2とCanon Log 3の2種類のLogが存在します。

Canon Log 3(取り扱いが容易なLogカーブ)

初代のEOS C300に実装された最初のCanon Logを進化させた、新たなLogカーブです。Logのままでもより見た目に近い画像に見えるので、扱いやすさとノイズ低減を優先したカーブになっており、簡単なワークフローを求める撮影向けに設定されています。

Canon Log 2(プロフェッショナル向けLogカーブ)

見た目がかなり眠い(白っぽい)画像になりますが、これはフィルムでいうネガに近いデータのガンマカーブで、例えば黒い暗部の階調もより細かく認識できます。Canon Log 2は、CMや劇場用映画など、より凝った微細なカラーグレーディング処理を行う際に用いられます。

Canon Log 2
Canon Log 3

Canon Log 2/Canon Log 3の違い

Canon Log 2の方がよりハイライトの情報とシャドウの情報を保持し、ポストプロダクション作業での後処理で色の調整がしやすく、白飛びせず黒つぶれしにくい点にありますが、これによりシャドウ部にノイズが出やすいという特性があります。
より広いダイナミックレンジを確保する Canon Log 2は、ハイエンドの映画・CMの制作で選ばれることが多く、VFXを多用する撮影にもその情報量の多さからキーイングがしやすくなっているので Canon Log 2が用いられることが多いです。

Canon Log 3の特徴は、扱いやすさとノイズ低減を優先したガンマカーブで、誰でも取り扱いが容易で、特にWeb映像やテレビ番組など撮影後にすぐに納品が求められるようなコンテンツ制作や、暗部のノイズ処理をしなくて済む分、手間が少なくて済むので、ポストプロダクション作業に多くの時間が割けないドキュメンタリー制作などに適しています。

コラム

Logで収録した映像はなぜ白っぽい映像=眠い映像に見えるのか?

Log撮影は、映像のダイナミックレンジ(明るさの幅)を最大限に活用し、編集時に自由な色調整を可能にするための撮影方法です。Logのままの映像素材はそのままだと白っぽく、映像業界では”眠い”映像という表現で表されます。この理由とは?

①コントラストの低さ:Logガンマカーブは、暗い部分と明るい部分の差(コントラスト)を小さくして記録します。これにより、全体的にコントラストが低く、白っぽく見えます。
②彩度の低さ:Log映像は色域(Color Gamut)も違うので、Rec.709に比べて彩度(色の鮮やかさ)も低く抑えられています。これも、編集時に色を調整しやすくするための工夫です。

キーイングとは?

映像編集技術の一つで、特定の色や明暗の情報を基に画像や映像の一部を抜き出し、透明化する技術です。この技術は、映画やCM撮影で使用されるグリーンバック(緑色の背景)を用いたクロマキー合成でよく知られています。

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技術解説①|Canon Log
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/tips/movie-tech/canonlog
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/tips/movie-tech/canonlog/image/thum-canonlog.jpg?la=ja-JP&hash=D2695504F38009B27CF8553A17D4A4D6
2025-07-31