写真も動画もガラリと変わる!“そそる”フード写真の撮影ポイントを伝授
公開日:2024年12月2日
心が温まるような料理の写真を投稿・紹介している、SNSで開店する喫茶店「喫茶トラノコク」さん。フルサイズミラーレスカメラCanon EOS R8を使って、瑞々しくてそそるフード写真・動画の撮影方法を教えてもらいました。
PROFILE
喫茶トラノコク
クリエイターのKon、7、ツッチー、ユーピケの4人組ユニットによる、SNSで開店する喫茶店「喫茶トラノコク」。心が温まるような料理や旅、お店を写真や動画を通してSNSでゆったりまったり投稿中。カメラ歴は各メンバーで7年〜10年程。
1.写真に透明感・光沢感を出す
目の前に出された食事が、時間が経って乾燥していたりしおれていたりするようだと、少し残念な気持ちになるものです。食事は鮮度がとても大切。そしてそれは、フード写真においても同じことが言えます。透明感や光沢感があり、鮮度が高く美しく表現できると、ぐっと魅力的で“そそる”フード写真になります。
色が異なる複数のゼリーがテーマのゼリーポンチでは、まず副題となる要素にガラスの器や金属のトレーやスプーンを用いることで、きらめく色や様子を見せるよう意識します。そうすることで、ゼリーそのものの光沢感を写真の中でさらに引き立てていくことができます。
その上で大事になってくるのが、「光源の調節」です。自然光の入る窓付近に被写体を配置して、レースのカーテンを使って光の調整を行うことが、おうちカフェの撮影では効果的です。カーテンで光をふわりとさせてみたり、半分だけ開けて光量を調整したり、完全に開けて強く硬い光にしてみたりすることで、被写体の印象や表情も変わってきます。またこのとき、逆光~半逆光を意識できると、より被写体が印象的になります。
次にポイントとなるのが、WB(ホワイトバランス=色温度)の設定を5000〜6000Kにすること。このくらいの値にすると、写真の色が少し青っぽくなります。寒色はゼリーの透明感やドリンク、ガラスの器の清涼感を引き立たせ、光沢もより美しいものにしてくれます。ただし、撮影後に写真の色味を編集する予定がある場合は、オート設定などで実際に目に見えている色と乖離がないように撮影しておきます。撮影時に極端な色の設定をしてしまうと、思ったとおりの色編集がしにくくなるためです。
これは、ソーダをゼリーの入ったガラスの器に流し入れるシーンです。ソーダの着水時、どのゼリーに当てるかを試行錯誤しながら、半逆光で撮影しています。加えて、ソーダの当たる部分に赤いゼリーを置くことで、見る人の視点が注がれた部分に行きやすくなるようにしています。
こちらは、ゼリーにぐっと寄った写真です。ゼリーの輪郭ではなく、ソーダの中に広がる色を意識し、レースのカーテンを半分ほど開けて強めの逆光下で撮影しています。そのためゼリーが入ったソーダの表面は照り返しが多くなりますが、一方でトレーにゼリーの色味が反射して、虹のような美しい色が現れてくれます。1つのフードでも、どこにフォーカスするかで表情が変わるのを楽しむことができます。
撮影の手順
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自然光の当たり方を調整する
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清涼感を出すため、WBを青め(5000K〜6000K)に設定する
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逆光~反逆光で被写体の位置調整をする
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撮りたい工程をシミュレーションする
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F値の小さい単焦点レンズをつける
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撮影する
2.動画は見せ場を明確に
現在のショート動画などは、SNSといったプラットフォームの特性としても、瞬間的に人の目を惹きつけることが求められています。そのために動画撮影で大切にしたいのが、見せ場を明確にした、人の目に留まりやすい動画に仕上げることです。
それには「動きのあるシーンを意識して撮影する」ことと、「カットのつながりを意識して編集する」ことが重要になります。
1つ目の「動きのあるシーンを意識して撮影する」は、注ぐ、かき混ぜる、すくい上げるといった、動画だからこそより伝えられる動作に注目し、それらを意識的に撮影していくことです。
次いで、「カットのつながりを意識して編集する」は、まずポイント=見せ場となる瞬間を決め、そこから全体の構成を決めて編集していくことです。
ここで紹介した動画では、ソーダを注ぐシーンが見せ場です。ソーダを注ぎ入れる瞬間の外からの様子と、ソーダが注ぎ込まれている中身のシーン動画を起点に、ここも見せたいという他のシーンをつなげていくようにします。この動画では、動画に流れを持たせるため、見せ場を意識しつつ、注ぐ→かき混ぜる→すくい上げるという、自然の流れで構成しています。
撮影の手順
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見せ場を決める
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動きを出すシーンを決める
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前後のつなぎのシーンを決める
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撮影する
3.ミルクが混ざりあっていく様子を写し出す
普通に紅茶だけを撮るのではなく、紅茶にミルクが混ざりあっていく様子を撮ることで、ぐっとフォトジェニックに、生き生きとした写真になります。
ホットティーの場合は、浅いティーカップを準備すると、注いだミルクが速く底に接触し、反動で表面にもくもくと上昇していく広がりを捉えることができます。ミルクを注ぐ位置の高さやティーカップの形によっても広がり方が違うので、いろいろ試行錯誤してみるのも楽しいと思います。
ミルクを注ぐ瞬間は、アイスティーでも応用できます。
アイスティーの場合、ホットティーとは準備のポイントが少し異なります。なぜなら、ホットとアイスでは、ミルクの溶け出し速度や広がり方が異なるからです。アイスティーで意識したいのは、高さのある透明のグラスを用意すること。そして、グラスの横から見るミルクの流れを見せることです。さらに、氷を多く入れることでミルクが氷の隙間を伝いながらゆっくりと落ちていくようになります。とても美しい現象で、シャッターチャンスも多く、伸びのあるミルクの動きを収めることができます。
毎回表情が異なる面白さもありますし、氷のここに当ててみようというチャレンジ心もどんどん出てくるのが、楽しさにもつながります。
撮影の手順
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写したいシーンをイメージして容器を選ぶ
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ミルクの入れ方をシミュレーションする
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カメラを連写設定にする
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注ぎ入れる場所に仮でスプーンなどを入れて、ピントを合わせておく
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ミルクを注ぎながら、連写撮影する
4.シズル感を捉える
見る人の視覚的好奇心を誘うものとして、食品広告写真などでも大切にされているのが、シズル感です。食材の熱さや冷たさ、なめらかさやとろみ、ジュージューと焼かれる音が想像できるようなシーンなど、臨場感を写真に吹き込むことで、シズル感が表現できます。
この写真は、少しずつ垂れていくはちみつの粘度とツヤ感をシズル感として表現したくて、それが際立つよう、サイドから光を当てて撮影。懐かしいホットケーキを想起させながら、一番見せたいはちみつの部分にピントを合わせ、視線を誘導するよう工夫しています。また奥にバターとはちみつのパッケージをかなりぼかして写し込むことで、シンプルながらも立体感が出るようにしました。
シズル感を出したいシーンでは、マクロレンズやF値の小さい単焦点レンズの使用がおすすめです。ピント合わせは大変ですが、フォーカスの範囲を絞りやすく、見る人の視点をシズル部分に誘導しやすくなります。
また、はちみつが流れていく先は撮影の準備段階である程度コントロールすることができます。例えば、ホットケーキ1枚でも均一に膨らんでいるわけではないので、ホットケーキをくるくる回転させながら積み方を調整することで、カメラに向かって意図的に傾斜を作ることが可能です。あとはバターにはちみつを当てながら、傾斜に向かうように流し入れます。
ホットケーキ×はちみつだけでなく、ワッフルにチョコレートソースをかけるシーンなど、さまざまな場面で応用ができます。
撮影の手順
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はちみつの流れをシミュレーションしながらパンケーキを積む
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サイドから光を当てて、視線を誘導する
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単焦点レンズをつける
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カメラを連写設定にする
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はちみつのツヤ感に焦点を当てて、連写撮影する
5.「自分の好きな写真と出会える」EOS R8の魅力
「EOS R8を使ってみて、まず感じた魅力がその“軽さ”です。普段テーブルフォトを撮影するときは、いろいろなシーンを見つけるためにテーブルの周りを動き回って、手を伸ばしていい構図を探すことが多いのですが、EOS R8くらい小型で軽いと、撮影の可動域が広がり撮影がはかどります。また、動画と写真の切り替えが感覚的にできるようボタン配置が施されているなど、インターフェイスがよく考えられていて、操作がしやすいと感じました。とりまわしやすさと、操作性のよさ、この2点は、カメラの扱いにおいてベースとなる部分。可動域が広がることは、それだけ撮影の幅が広がり、シャッターチャンスが増えることでもあります。チャンスが増えれば、いろいろな表情を撮ることができ、それらを比較して検証することもできるので、撮影の腕もあがり成長ができると感じました。EOS R8、自分の中での『これ好きだな』という写真と出会える確率が高くなるカメラです。