人物に視線をくぎ付けにする
F1.2の圧倒的なボケの美しさ
公開日:2026年7月30日
写真家・福井 麻衣子さんがRF50mm F1.2 L USMの魅力を解説。開放F1.2が生み出す美しいボケ表現や視線誘導、人物を引き立てる描写力など、ポートレート撮影で活躍する理由を豊富な作例とともにご紹介します。

オレンジ色のベゴニアの花をぜいたくにぼかしています。イエベ寄りの肌とベゴニアのオレンジ、衣装の色がマッチしました。植物園の飾り棚はきれいにぼけて、花の色成分だけが残っているのはさすがF1.2のボケ方です。
モデル●春凪 櫻子
ヘアメイク●川口 陽子
福井 麻衣子のレンズ選びの条件
ポートレートの撮影にRF50mm F1.2 L USMが欠かせない理由とは?
福井 麻衣子の使用開始日:2026年3月
人物をナチュラルに捉えることが好きなので極端な誇張のない、標準レンズならではの素直な描写が好きです。なおかつ、自分の足で動いて表現をコントロールできる単焦点レンズがとても使いやすいのです。特に、このレンズは周辺部までの描写性能が高いだけではなく、ピント面が非常にシャープです。開放F1.2ならではの圧倒的なボケとピント部分のコントラストはポートレート撮影の幅をぐんと広げてくれます。
RF50mm F1.2 L USM
画角(水平・垂直・対角線):40°・27°・46°
レンズ構成:9群15枚
絞り羽根枚数:10枚(円形絞り)
最小絞り:16
最短撮影距離:0.4m
最大撮影倍率:0.19倍
フィルター径:77mm
最大径×長さ:φ89.8×108.0mm
質量:約950g
RFマウントを代表する大口径の標準単焦点レンズ。最大の魅力は、開放F1.2の極めて浅い被写界深度がもたらす、とろけるような美しいボケ味です。同時に、Lレンズの高度な光学設計により、開放絞りから画面全域で圧倒的な解像力を誇ります。暗所にも強く、高速なAF性能も備えています。ポートレートを中心に、最高峰の描写性能を求める写真家には必携のレンズです。
Photographers’ File 05 福井 麻衣子
Maiko Fukui
大阪府生まれ。写真家・内池秀人氏に師事。フリーランスフォトグラファーとして雑誌や広告でのポートレート、旅、ライフスタイルの撮影を中心に活動。カメラ誌や書籍への執筆、展示なども精力的に展開する。「日々の小さな感動を糧に」きらりと光る瞬間や、そのものの生命力、その時の空気やにおいまで写したい、という想いを大切にしている。https://www.fukuimaiko.com/
Instagram:@caby_maiko
ポートレート写真で重要なF1.2による強力な視線誘導

ピンクの花を前ボケに使い、全身を引きで狙いました。広角レンズのような使い方をしつつ、広角レンズでは難しい大きなボケで人物に視線を誘導しています。奥行きを強調するポートレートも思いのままです。
ポートレートレンズというと、50mmが使いやすいと思う人は多いのではないでしょうか。全身でもバストアップでも1本で対応できるし、人物から離れれば広角レンズのような表現になり、人物と背景の距離をコントロールすれば望遠レンズのような引き寄せた表現も可能です。現在、RFレンズにはF1.2、F1.4、F1.8という3本の50mmレンズがラインアップされていますが、その中でも一番大口径であるRF50mm F1.2 L USMは、F値による恩恵を最大に受けられるレンズです。背景をぼかしたり、前ボケを作ったりして人物を浮かび上がらせる効果が強いので、印象的なポートレート写真が撮影できます。
私は、性別にかかわらず、アイドルや俳優などさまざまな分野で活躍する方のポートレートを撮影しています。一番大事にしているのは、その人のナチュラルなパーソナリティーや物語を写し込むことです。人物とコミュニケーションが取りやすい撮影距離になるのも本レンズの魅力です。その人の一番すてきな顔の角度、表情、スタイルを良く見せるためのポージング、それらを撮影現場の雰囲気を大切にしながら「もう少し体を左に傾けてみて?」などと、伝えていきます。相手はそれに応えてくれ、重ねて提案もしてくれます。被写体となる人物と写真家が表現の意図を伝え合いながら撮影するのにちょうど良いのです。最短撮影距離は40cmなので、顔のアップも簡単に狙えます。瞳の力や表情から物語を伝えるようなポートレートも撮りやすいです。

光がきれいに回っている場所を見つけて撮影しました。背景を緑色にするべく、アングルは緻密に追い込みました。幹の茶色の主張を弱めつつ、葉のディテールが失われないバランスを探り、F1.8まで絞っています。
福井 麻衣子のF値別使用率

RF50mm F1.2 L USMを使用するときは、F1.2の描写性能が欲しくて使うことが多いです。背景と距離のバランスや、他にはっきりと見せなければならない副題がある場合は絞り込むこともあります。また、ソロショットのポートレートではなく、グループポートレートを撮る場合には、F8程度まで絞って使うことも多いです。開放F1.2から自由にF値を選択できるアドバンテージは大きな強みです。
切れ味の鋭いピント面の描写が人物の印象を強めてくれる

黄色い花に近づいて大きくぼかしました。前ボケのサイズや人物との重なりがポイントとなるので、ファインダーの中をしっかりと確認して構図を決めています。
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建物の鉄骨が主張するとうるさい背景になってしまうので開放絞りでぼかしています。開放F1.2にしても、シャープに見えてほしい人物ははっきりと描写できました。
F1.2によるボケ描写もさることながら、本レンズは隅々まで高い解像性能を誇るので、背景や副題選びの自由度が高いところもポイントです。さまざまな要素が整理されてフレーム内に共存できるため、写真を見た人が物語を感じる画作りがしやすいのです。そんな中でも肌の描写が美しいのも特徴だと感じます。背景の中で肌の色が変に浮いてしまうと困りますが、自然でいてつややかに発色してくれるため、このレンズはどんどん撮りたくなります。同行する撮影チームとも仕上がりのイメージが共有しやすいです。
桁違いの解像感による「エモい」表現とはまた違った高品質な写真が撮れるのが楽しいです。ピント面の切れ味が抜群なので、人物を小さく配置したとしても、シャープに描かれる瞳の力は失われません。どちらかと言えば中判カメラを使用しているときの感覚に近いです。写真が上手になったように感じられるので、もっと撮りたいという写欲が湧いてきます。ポートレート以外の静物、例えば花などをしっかりと撮りたくなる気持ちも生まれます。自分の画作りを極めていける、そんなレンズだと思います。

一番奥の森と、人物の背後にあるイネ科の植物ダンチクは両方ともぼけていますが、そのボケ方にはグラデーションがあります。撮影距離をコントロールし植物のディテールが溶けきらないように計算しました。
このレンズを買う前に知っておきたいこと
開放F1.2のレンズが生み出す美しいボケ味は、ポートレート撮影において被写体の魅力を最大限に引き出します。しかし、被写界深度は極めて浅いため、ピント合わせがとてもシビアです。人物撮影では瞳にしっかりと合わせることがセオリー。この幻想的な描写と確実なピントを両立させるためにもカメラで検出する被写体を「人物」にしたり、瞳検出(右目や左目が選択できる)などを積極的に活用すると良いでしょう。