ポートレート表現を磨く2本
王道の大口径中望遠、異端の超広角ズーム
公開日:2026年8月21日
写真家たちが選ぶ、愛すべきRFレンズの魅力を紹介する本企画。今回はポートレート写真家・土屋勝義氏が、RF135mm F1.8 L IS USMとRF10-20mm F4 L IS STMを使ったポートレート作品づくりや、レンズ選びのポイント、人物と空間を生かした表現方法について語ります。
Katsuyoshi Tsuchiya
東京工芸大学短期大学(旧写大)に入学。六本木スタジオでチーフアシスタントを経て、篠山紀信事務所に入社し篠山紀信氏に師事。チーフアシスタントを経て独立。雑誌・広告などで、タレント、アーティストのポートレート撮影を手がける。公益社団法人日本写真家協会理事。
ポートレートというと人物に目が向きがちですが、私はレンズ選びこそが作品の印象を大きく左右すると考えています。どの焦点距離を選ぶかによって、被写体との距離も背景の描写も変わります。つまりレンズは単なる道具ではなく、写真家の視点そのものを変える存在です。
今回選んだのはRF135mm F1.8 L IS USMとRF10-20mm F4 L IS STM。ひとつはポートレートレンズの王道、もうひとつは超広角という異端の存在です。一見対極にある2本ですが、どちらも私にとってはポートレート表現を広げてくれる大切なレンズです。人物をどう見せるかだけでなく、空気や距離感まで描けるからこそ、いま特に面白いと感じています。
RF135mm F1.8 L IS USMは距離感とボケを教えてくれる
RF135mmの魅力は、まず被写体との距離にあります。85mmより一歩遠い。その距離感が写真に独特の空気を生み出します。単焦点レンズなので、自分が動かなければ構図は決まりません。寄るのか、下がるのか。その動きが撮影者の感覚を磨いてくれます。
単焦点レンズだから撮影している内容もお互いに伝わりやすいです。全身を狙っているのか、アップを狙っているのかが距離感そのものに表れます。単焦点レンズにはそんなコミュニケーションの良さもあります。
そしてRF135mm最大の魅力はボケです。私は「開放ボケ」「焦点距離ボケ」「抜けボケ」「寄りボケ」というボケの4大要素を最も効果的に写し出すレンズだと思っています。F1.8の明るさと135mmという焦点距離が生み出す描写は、人物を自然に浮かび上がらせます。
さらに強力な手ブレ補正のおかげで、望遠での夜景ポートレートの自由度も大きく広がりました。今まで撮れなかった光や空気感を作品にできるのは、このレンズならではの魅力です。

RF135mm F1.8 L IS USMの大口径と望遠効果が生み出す印象的なボケを生かし、参道の光を背景に撮影。EOS R3との組み合わせなら協調ISで約8.0段分の手ブレ補正があるので低速シャッターでも手持ちで対応し、帯の動きに躍動感を与えた。

最短撮影距離70cmとF1.8の大口径を生かし、被写体へ大胆に寄って撮影。メイク用の小さな鏡に点いたライトを大きな真ん丸の玉ボケを取り込みながら、浅い被写界深度で視線を瞳へ導く。

RF135mmはファインダーをのぞいた時点で目の前の光景の「トリミング」が始まるレンズだ。どこまでを入れるか四隅まで丁寧に見ながら構図を決め、F1.8の大きなボケで背景を整理。人物の存在感だけを際立たせている。
RF10-20mm F4 L IS STMで空間ごとポートレートを撮る
私は広角端が14mm、11mmのズームレンズを使ってきました。そして今回のRF10-20mmは10mmとさらに広がりました。夜桜や橋、都市風景などを背景に人物を撮るとき、RF10-20mmはその場の空気まで一緒に写すことができます。下がれない場所でも人物と景色を同時に取り込めるのは、大きな魅力です。
RF10-20mmで見えている世界は、私にとって肉眼で感じている空間に近いものです。背景を切り取るのではなく、目の前に広がる世界全体を構成として使える。その感覚が好きなのです。
RF135mmが人物を際立たせるレンズなら、RF10-20mmは人物と空間を結びつけるレンズだと思っています。まず空間を決め、その中で人物に動いてもらう。そんな撮影スタイルになります。
超広角特有のパースも、私は積極的に生かします。歪みを消すのではなく、手首のひねりを使ってシフト効果を見極めて利用する。そこにRF10-20mmならではの表現があります。
ポートレートの常識から見れば異端かもしれません。しかし、助手時代から師匠が17mmで撮るのを見ていたので、何ら抵抗はなく撮っています。刺激的な世界、個性を引き出したい人にとってRF10-20mmはそのきっかけを与えてくれるレンズです。

RF10-20mm F4 L IS STMは当然ズームレンズなのだが、私はほぼ10mm側でしか使ったことがない。超広角ならではの大胆なパースを生かし、下がれない場所でも人物と空間を同時に表現できるからだ。低速シャッターで連写し、手からスカートが離れた瞬間をブラして表現する。

RF10-20mmの圧倒的なパースを生かし、高層ビル群と人物を一体化して表現した。三脚を使用して8秒露光を行い、流れる車の光跡と雲の動きを写し込みながら、都市のスケール感を際立たせている。通過する車の車高によって光跡の位置が変わってくる。
レンズは写真家に新しい視点を与えてくれる
写真の世界では、しばしばカメラボディの進化が注目されます。ポートレートの分野でも瞳を認識するAFの出現などによって撮り方も変わりました。ただ、長くポートレートを撮り続けてきた私の実感としては、写真家の表現を最も大きく変えるのはレンズではないかと思っています。
レンズとは、単に大きく写したり広く写したりするためのものではありません。どのように世界を見るか。どのように被写体と向き合うか。その視点そのものを決定づける存在です。だから私はレンズを選ぶとき、性能だけではなく、そのレンズが自分に何を与えてくれるのかを考えます。
今回使用したRF135mm F1.8 L IS USMとRF10-20mm F4 L IS STMは、焦点距離だけを見れば正反対の存在です。
RF135mm F1.8 L IS USMは、私がフィルム時代には撮れなかった夜景ポートレートを可能にしてくれました。一方のRF10-20mm F4 L IS STMは、その場から一歩も下がれない状況でも、人物と巨大な橋や都市風景を同時に画面へ収めることができます。
どちらも単なる画角の違いではありません。写真家に新しい視点を与え、撮れる作品そのものを変えてしまうレンズなのです。
レンズを「選択する」から面白い
写真を始めたばかりの頃は、つい何でも画面の中に入れたくなります。ですが経験を重ねるにつれ、写真とは写し込む作業ではなく、省く作業なのだと感じるようになります。
RF135mm F1.8 L IS USMはそのことを教えてくれるレンズです。望遠レンズをのぞくと、視界は自然に整理されます。余計な情報が消え、人物という主題が浮かび上がる。だからこそ撮影者は、背景のわずかな違いにも敏感になるのです。
一方でRF10-20mm F4 L IS STMは正反対です。何も省かない。むしろ周囲の世界まで積極的に取り込んでいく。しかし実際には、広く写るからこそ高い構成力が求められます。何でも入るレンズだからこそ、何を見せるのかが問われる。そう考えると、RF135mm F1.8 L IS USMもRF10-20mm F4 L IS STMも「選択するレンズ」であると言えます。
ポートレートは人間を撮る写真です。だからレンズの違いは、そのまま人との関係性の違いにもなります。撮影現場で私が大切にしているのは、モデルとの距離です。距離が変われば会話のテンポも変わる。視線の交わり方も変わる。空気の流れさえ変わります。その積み重ねが最終的には写真に現れる。だから焦点距離の選択は、単なる画角の選択ではありません。被写体との関係性をどう築くかという選択でもあるのです。
新しいレンズを手に入れるという意味
私はポートレートを撮ってきて、良い写真は機材が撮るのではなく、最終的には人と人との関係が撮るものだと思っています。その関係を導いてくれるのがレンズなのです。
いまは非常に優秀なズームレンズが数多くあります。一本で広角から望遠までこなせる時代です。もちろんそれは素晴らしい進化です。でも、写真表現という意味では、ときに不便さも必要だと思っています。広くしか撮れないレンズ。遠くしか撮れないレンズ。そうした制約があるからこそ、足を使って写真を撮ることになります。
立ち位置を変える。構図を考える。光を読む。結果として、自分だけの撮り方が生まれていく。振り返れば私自身もそうでした。超広角ポートレートも、レンズを手にしたその日から撮り始めました。そして継続してきたことで、自分の写真になっていったのです。
個性とは、便利さの中から生まれるものではなく、制約の中から育っていくものなのかもしれません。写真を続けていると、どうしても撮り方が固定されてくる時期があります。そんな時こそ、新しいレンズを手にしてほしいと思います。
それは今まで見ていなかった世界を見るためです。RF135mm F1.8 L IS USMが見せてくれる世界、RF10-20mm F4 L IS STMが見せてくれる世界。それは単なる画角の違いではなく、物事の見方そのものの違いです。もし撮影がマンネリ化しているなら、新しいレンズを手にしてみること。RF135mm F1.8 L IS USMでもいい、RF10-20mm F4 L IS STMでもいい。いままで撮れなかった写真が見えてくるはずです。

RF135mm F1.8 L IS USMは背景を単にぼかすのではなく、光そのものを表現に変えてくれるレンズだ。開放F1.8から高い解像感を保ち、自動販売機の青い光や街灯を大きな玉ボケとして取り込みながら、人物だけを自然に浮かび上がらせた。

私が10mmという超広角域を好む理由は、人物だけでなく、その場の空気や風景まで作品にできるからだ。ややスローシャッターに設定し、ストロボを併用。モデルとの距離は、振り回した上着がぎりぎり当たらない程度。わずかなブレとカメラを傾けたことで動感のあるポートレートとなった。

勝鬨橋は可動橋であり、かつては橋の中央部が開いて船舶を通していた。可動橋だった時代の名残である信号機まで収めようとすると、RF10-20mm F4 L IS STMの画角が生きてくる。信号機と行き交う自転車をあえてブラして写し込むことで、橋が今も都市の動脈として生きていることを表現した。
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この記事は、フォトコンとのタイアップ記事です。