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GOTO AKIが選んだ表現力高めるRFレンズ|写真に深度を与える、レンズの力。

公開日:2026年5月21日

レンズが発売されると、「高い解像感」や「周辺まで像が流れない」といった評価が語られることが多いですが、RFレンズに関しては、そうした点をあらためて気にする必要はないと感じています。写りへの不安がないからこそ、撮影時には目の前の光景に集中することができるのです。
では、写真家はレンズに何を求めているのでしょうか。私の場合、モチーフは風景ですが、吹き抜ける風や岩肌のゴツゴツとした質感を丁寧に写し取ることで、その場の空気や、ここに至るまでの長い時間といった「目に見えないもの」を写し込めるかどうかを重視しています。

GOTO AKI

1972年、川崎市生まれ。上智大学経済学部経営学科在学中、世界一周の旅(1993~94年)を機に写真と出会う。卒業後、丸紅株式会社にて天然ガスのパイプライン輸送業務に従事。退職後、東京綜合写真専門学校写真芸術第二学科に入学し、鈴木清、小林のりおに学ぶ。1999年より写真家として活動を開始。2020年、日本写真協会賞新人賞受賞。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科(2017~2025年)、日本大学芸術学部写真学科(2021~2023年)にて非常勤講師を務め、2024年より日本大学芸術学部准教授。日本自然科学写真協会、日本写真芸術学会。

レンズの力と表現はリンクする

私は、名前の付いた場所を説明するような写真を撮っている感覚はあまりありません。一期一会の光景と出会っているという意識が強く、「空間を撮る」ことを大切にしています。今回も、新しいレンズを手に入れたときには必ず訪れる神奈川県三浦の城ヶ島で撮影しました。空があり、海があり、岩場が広がるあの場所で、地球の生々しい姿をとらえるには、細部まで丁寧に写し出せるかどうかが重要になります。

レンズそのものの描写力は十分ですが、私はさらに描写を引き出すため、デジタルレンズオプティマイザを常時オンにしています。岩肌の質感や水しぶきの粒、その一つひとつに目を向けながらフレームを決めているからです。展覧会で大きく引き伸ばしたときにも、その細部がきちんと立ち上がってくること――それが、私にとっての表現だと感じています。

EOS R5 Mark II・RF15-35mm F2.8 L IS USM(15mm)・F4 オート(-0.7補正・1/160秒)・ISO200

岩場までグッと迫り、縦位置で視線を奥へと誘導するように撮る。左の岩が大きくぼけているのは、最短撮影距離28センチよりも手前にあるためだが、これも遠近感を強調する方法の一つだ。

王道レンズの対応力

今回のテーマは「王道レンズと、もう1本の選択」です。RFレンズの王道という意味で RF24-105mm F4 L IS USM を選びました。読者の皆さんの中にも、最初にこのレンズを手にする方は多いのではないでしょうか。24mmから105mmまでを1本でカバーできる高い汎用性は、大きな魅力です。

一方で、その万能さが写真家にとっては「甘え」につながることもあります。ズームに頼ることで、被写体との距離への意識が希薄になりやすいからです。私が愛用している RF28-70mm F2 L USM は、ワイドもテレも少しだけ足りないレンズですが、その不自由さが撮影者の動きを促します。その積み重ねが、結果として写真に確かな輪郭をもたらしているように感じています。だからこそ RF24-105mm F4 L IS USM を使うときは、自分から動くことを意識しています。オールマイティーであるがゆえに被写体への対応力が高く、その魅力は使い手の姿勢によって大きく引き出されるレンズだと思います。

EOS R5 Mark II・RF24-105mm F4 L IS USM(100mm)・F8 オート(-1補正・1/320秒)・ISO400

富士山の宝永火口にて、王道レンズの望遠側105ミリで撮影。もう少し広く撮ると、奥に鉄塔などの人工物が入り込んでしまう。また、崖の上からはこれ以上前に出ることもできないため、ズームで画角を調整した。

EOS R5 Mark II・RF15-35mm F2.8 L IS USM(35mm)・F5.6オート(-1.3補正・1/1600秒)・ISO400

足元を15ミリのワイド端で捉えていたが、潮が満ちるにつれて波の表情も少しずつ変化していった。岩を砕く白波を意識し、35ミリ側へズームして「切り取る」。ズームの有効性を実感する場面だった。

超広角で「切り取る」

もう1本の選択として、あえて超広角の RF15-35mm F2.8 L IS USM を選びました。普段は風景の断片を切り取る表現が多いのですが、広角ならではの特性を活かし、「そこに流れる時間をすくい取る」ような感覚で撮ることを意識しています。

「広く撮る」という意識のままシャッターを切ると、表現が散漫になりやすくなります。そこで私は、ファインダーを覗く前に、まず切り取る範囲を予測します。そして、そのイメージが撮影できるように体を前後させながら、カメラ位置を決め、「広く切り取る」という意識で撮影します。

超広角は、遠くのものがより遠くに写るため、手前と奥の描写に大きな差が生まれます。この特性を意識せずに使うと、印象の弱い写真になってしまうこともあります。撮影後にモニターを見て、意図しないものの写り込みに気づくこともあります。扱いが難しいと感じられる場面もありますが、森の中や洞窟のような閉ざされた空間では、情報を整理し、人の視覚とは異なるかたちで風景を立ち上げてくれます。その力が、表現の幅を広げてくれると感じています。

EOS R5 Mark II・RF15-35mm F2.8 L IS USM(15mm)・F8オート(-0.7補正・1/125秒)・ISO200

海から少し離れた場所にできた水たまり。澄んだ水に、赤や黄色の海藻が彩りを添えている。カメラを地面に置いて水平を確認し、暖色から寒色まで15ミリの画角で広く捉えた。

レンズの力は表現と直結する

人間が何かを見ているときの感覚は、F1.0程度に近いとも言われています。ピントが合っている部分以外は、やわらかくにじむように見えているはずです。両眼で立体的に世界をとらえる人間と、単眼で切り取るカメラとレンズとでは、見える範囲や奥行きの感じ方が大きく異なります。その違いをどのように写し取るかが、写真家の表現につながっていくのだと感じています。そのためには、最短撮影距離や広角端での描写といった、使用するレンズの特性を理解しておくことが重要になります。

レンズを変えると、写るものも変わってきます。それは単に画角や写る範囲の違いだけではありません。レンズが変わることで、自然との距離感や、何を見ようとしているのかという意識そのものが少しずつ変化していきます。

私は15ミリであっても、500ミリであっても、「切り取る」という感覚を大切にしながら自然と向き合っています。この意識が曖昧になると、スケールの大きな風景に引き込まれるまま、ただシャッターを切ってしまうことにもなりかねません。レンズは世界を写すための道具であると同時に、自分がどのように世界を見ているのかを静かに問い返してくる存在のように思います。

EOS R5 Mark II・RF24-105mm F4 L IS USM(105mm)・F4オート(-0.3補正・1/640秒)・ISO400

私は歩いている中で、何かが目に入った瞬間にシャッターを切ることが多い。だから手前の岩も、「前ボケにしよう」と構図を意図したものではなく、反応を優先して捉えた結果、そこに写り込んだものだ。写真には、ある程度の「雑味」が残っているほうが、見る側に考える余地を与えると思う。

EOS R5 Mark II・RF24-105mm F4 L IS USM(58mm)・F5.6オート(-0.3補正・1/400秒)・ISO400

RF24-105mm F4 L IS USMを持ち歩くときは、50ミリ付近に設定していることが多い。写真学校時代に、50ミリで寄ったり引いたりしながら撮っていた感覚が、いまも身体に残っているのかもしれない。
24ミリ側で煽ってデフォルメするよりも、50ミリで、その場で見ているかのような距離感を保ちながら捉えることを選ぶことが多い。

EOS R5 Mark II・RF15-35mm F2.8 L IS USM(35mm)・F5.6オート(-1.3補正・1/1600秒)・ISO400

度重なる隆起と波の浸食によって形づくられた城ヶ島は、南関東では最も身近に地球の営みを感じられる場所のひとつだ。目に見えない時間の気配を写し取るには、信頼できるRFレンズと高画素のEOS R5 Mark IIの組み合わせが、ベストな選択だと感じている。

新しいレンズを手にすることは、単に新しい写りを得るというよりも、新しい視点に触れることなのかもしれません。信頼できるRFレンズがあれば、写りへの不安にとらわれることなく、その場の光や空気に意識を向けることができます。そうして切り取った一瞬の風景の中に、目には見えない時間や気配を重ねていけたらと考えています。

  • この記事は、デジタルカメラマガジンとのタイアップ記事です。

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https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/interview/lanscape-gotoaki-01
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/interview/lanscape-gotoaki-01/image/thumbnail-720x444.jpg?sc_lang=ja-JP&hash=8F1D3D73EC8A388E957B1CC24954B202
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