MY PARTNER 飛行機|ヒコーキ撮影の常識を覆す。全域F2.8がもたらす夜の超望遠ズーム
公開日:2026年6月25日

松山空港で日没後に離陸するボーイング787-9。離陸滑走中のため、シャッター速度を1/160秒まで上げて、衝突防止灯が赤く輝く瞬間を狙いました。機体の輪郭はシャープで背景から浮かび上がって見えます。
ルーク・オザワのレンズ選びの条件
ヒコーキの撮影にRF100-300mm F2.8 L IS USMが欠かせない理由とは?
ルーク・オザワの使用開始日:2023年5月
100~300mmのズーム全域で開放F2.8という、かつてないスペックのレンズが登場したときには胸が躍りました。手にすれば確かに相応の重量を感じるものの、それと引き換えに得られる圧倒的な描写力と、大口径ならではの明るさは唯一無二です。とりわけ光量の乏しい夜の空港といった過酷な条件下において、ヒコーキ写真に新たな表現の可能性をもたらしてくれます。
RF100-300mm F2.8 L IS USM
画角(水平・垂直・対角線):20°~6°50’・14°~4°35′・24°~8°15’
レンズ構成:18群23枚
絞り羽根枚数:9枚
最小絞り:22
最短撮影距離:1.8m
最大撮影倍率:0.06倍(100mm時)、0.16倍(300mm時)
フィルター径:112mm
最大径×長さ:約φ128mm×323.4mm
質量:約2590g
単焦点レンズに匹敵する高画質と、ズームレンズならではの機動力を高次元で両立した大口径望遠ズーム。ズーム全域で開放F2.8の明るさを誇り、夕暮れ時をはじめとする光量の少ないシーンでも高速シャッターを選択できます。手持ちでの撮影を可能にする設計と強力な光学式の手ブレ補正機構を備え、ヒコーキをはじめとする動体撮影でその真価を遺憾なく発揮します。
Photographers’ File 01 ルーク・オザワ
LUKE H. OZAWA
航空写真家。1959年、東京都生まれ。1973年、初めて乗った全日空B727に感動して以来、カメラ片手に羽田空港通いが始まる。ヒコーキと向き合い52年、航空写真の第一人者。風景とヒコーキをシンクロさせた情景的写真を確立し、カメラ写真業界にヒコーキジャンルを根付かせた。時に神がかり的な画は、見る者に感動を与えている。2018年キヤノンギャラリー Sで個展を開催。写真集「PHOTOGRAPHERS’ ETERNAL COLLECTION」(キヤノン)がある
夜の空港で真価を発揮するズーム全域開放F2.8が限界の光量を克服する

羽田空港の展望デッキからエアバス A320を流し撮りしたカット。開放では航空機のライトがわずかににじむ場合があるため、あえて1/3段絞ったF3.2を選択しています。カメラの流し撮りアシスト機能を活用し、目の前を離陸していく機体の主翼先端のストロボライトが点滅した瞬間を捉えました。
航空写真家として長年、情景の中にヒコーキの姿を捉えてきました。ズーム全域で開放F2.8という明るさを備え、高い機動性と描写力を兼ね備えた本レンズは、私の撮影スタイルに寄り添うフラッグシップレンズです。
このレンズが真価を発揮する場面は、ずばり「夜の空港」です。日中の撮影では、より幅広い焦点域をカバーする100~500mmを優先しますが、日没を迎えた瞬間から、このレンズの持つ「ズーム全域F2.8」というスペックが本領を発揮します。私自身、夜の撮影に適した新千歳、羽田、成田、伊丹、松山、福岡といった空港へ赴く際のみ持ち出すという、完全に「夜専用」として割り切った少しぜいたくな使い方をしています。
夜のヒコーキ撮影は、常に限られた光量との戦いです。従来の望遠ズームレンズでは、必要なシャッター速度を確保するためにISO感度を極端に上げる必要がありました。しかし、ズーム全域F2.8を誇るこのレンズであれば、機体の鈍い金属の質感や滑走路の美しい明かりを、ノイズを抑えたクリアな画質で描き出せます。

雨上がりの夜を迎えた成田空港で捉えたボーイング 767-300F。雲が低く垂れ込めているときは、離陸する機体が放つ光が光軸となり、雲をドラマチックに照らしだします。1/40秒という低速シャッターでの流し撮りですが、ぶれることなく機体の細部まで精緻に表現されています。
ルーク・オザワの焦点距離別使用率

状況に応じて100mmから300mmまでを自在に使い分けています。流し撮りで機体全体を風景へと溶け込ませる際は引き気味の画角を選び、機体のディテールやコクピット周辺をダイナミックに狙う際は望遠端の300mmを選択することが多くなります。月を大きく引き寄せる場合に限っては、エクステンダーを装着しています。
単焦点レンズに匹敵する描写力と強力な手ブレ補正が夜間の流し撮りを支える

11月、夕暮れに染まる羽田空港。肉眼ではほぼ真っ暗な状況でしたが、雲のわずかな隙間に美しい残照が残っていました。焦点距離300mmに据え、そのわずかな光の隙間へと機体が飛び込んでくるドラマチックな瞬間を、連写で捉えました。
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空が落日を迎える前の明るい時間帯、離陸した機体が右旋回して、月と重なった瞬間を捉えました。月とヒコーキを絡める際は、エクステンダーを装着して撮影に臨みます。600mmという超望遠域になりますが、エクステンダーによる描写力の低下はまったく感じさせません。
夜間の流し撮りにおいても、この明るさと単焦点レンズに匹敵する切れのある描写力が大きな武器となります。特にピントが合った部分のシャープさと背景の滑らかなボケ味を両立している点は見事です。
暗闇に包まれた中で、画角を自在にコントロールしながらF2.8の明るさを維持できるアドバンテージは計り知れません。単焦点のサンニッパ(300mm F2.8)では機体が近づいた際にフレームアウトしてしまいますが、このレンズであれば、引きの画角を作りながら理想の構図でシャッターを切り続けられます。100mm側で情景をワイドに捉え、300mm側で機体をダイナミックに引き寄せるなど、一度のチャンスでまったく異なる写真を撮れる自由度の高さは、撮影者に大きな安心感をもたらしてくれます。
これほどの性能でありながら、質量は約2590gに抑えられています。EOS R1などのフラッグシップ機と組み合わせた際も重量バランスが良く、手持ち撮影でも安定感があります。夜の撮影では基本的に三脚とビデオ雲台を使用し、離着陸やタキシングの流し撮りをしますが、絶妙なバランス設計のおかげで、レンズを振る動作も非常にスムーズです。エクステンダーとの相性も抜群で、装着時の画質劣化は極めて少なく、さらに遠くを狙える超望遠ズームへと様変わりします。
私の夜のヒコーキ撮影において、いまや手放すことのできない最高のパートナーです。Lレンズにふさわしい堅牢性と防塵・防滴性能も、屋外での長時間撮影を力強く支えてくれます。このRF100-300mm F2.8 L IS USMは、これからも数々の決定的瞬間を切り取ってくれるでしょう。

羽田空港の展望デッキからの撮影。南風運用の際は、18時過ぎころまで東京都心の夜景を背景に着陸します。11月中旬、まだかすかに明るさの残る時間帯の東京タワーや麻布台ヒルズの輝きがクリアに捉えられ、トワイライトタイムの絶妙な空のグラデーションも美しく表現されています。
このレンズを買う前に知っておきたいこと
描写性能は間違いなく最高峰ですが、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、信頼できる堅牢な三脚が必須と言えます。夜間の撮影がメインとなるからこそ、三脚に据えてじっくりと構図を作り込み、機体を的確に狙い澄ますような、丁寧で落ち着いた撮影スタイルをおすすめします。