薄口
阿波紙 いんべ(薄口)白
厚口
阿波紙 いんべ(厚口)白
和紙は「厚口」でも一般的な用紙より薄めですが、それよりもさらに薄い「薄口」もあります。背面にあるものが透けたり、光を柔らかく透過するため、和紙の繊維が浮かび上がり、写真をより個性的に見せることができます。明るく優しい雰囲気に仕上げられるためハイキーの画面構成など淡い調子の写真に合いそうですが、シャドウなど濃度の高い部分はその効果が弱まりやすいです。また、色が淡い部分は影響は少ないですが、濃い部分はインクが多く乗るため薄口は波打ちしやすくなります。しっかり乾燥させることが大切で、デリケートで折れやすいので取り扱いに注意しましょう。
和紙には両面印刷が可能なものがありますが、なかでも「伊勢和紙Photo」シリーズは表裏の面質が異なる点がユニークです。スムースでわずかに光沢がある滑面と、ザラッとした凹凸のある粗面を選ぶことができます。1枚で2通りのプリント表現が楽しめるのです。どちらも和紙らしさが感じられる仕上がりで、写真の絵柄や見せ方などで使い分けると良いでしょう。
表(滑面)
用紙:伊勢和紙Photo 雪色
裏(粗面)
滑面のほうが発色が良く、階調も滑らかに再現されています。粗面より透明感があり、きめ細かい仕上がりです。粗面は色が少し濁り気味ですが、荒々しい感じで力強さがあります。どちらにするか迷ったときは両面を試して判断すると良いでしょう。
和紙には「手漉き」と「機械漉き」があります。前者はその名の通り手で漉くため、製造に手間がかかり値段も高めです。手漉きの和紙のほうが強度が高いと言われていますが、それは簀桁(すけた)と呼ばれる道具を前後左右に何度も揺り動かすことで、繊維が何層にも絡むからです。楮など長い繊維だけを使った和紙を作ることもできます。これに対し、生産効率を上げるために洋紙の技術を取り入れたのが機械漉きの和紙です。機械で繊維に絡みを付けていますが、手漉きほど多層にできないため強度は劣ります。
手漉きの際に、繊維の流れが周りに自然にできて縁取りされます。それを切り落とさないで残したのが耳付きの和紙です。縁取りにはバラツキがあり、1枚1枚表情が違って見えます。近年は機械漉きでも耳が付けられるようになり、手漉きの和紙と見分けるのが難しくなっているようです。
用紙:阿波紙 びざん 純白(中厚口)手漉き紙
耳付き和紙は縁が毛羽立っていて、手でちぎったようにギザギザで真っすぐではありません。角も直角でないなど手作り感や味わいがあり、和紙の風合いが感じられやすいです。とはいえ四辺が真っすぐではないため斜めに給紙されたり、思うようなレイアウトにならないなど、印刷時には試行錯誤を強いられることもあります。
このレッスンで取り上げる和紙
メーカー
製品名
ベース
紙厚
坪量
アワガミファクトリー
阿波紙 三椏 白 二層紙
三椏、木材パルプ
0.180mm
95g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 楮(厚口)白
楮、木材パルプ
0.230mm
110g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 楮(厚口)生成
楮、木材パルプ
0.230mm
110g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 楮 二層紙
楮、麻、木材パルプ
0.180mm
96g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 いんべ(厚口)白
麻、木材パルプ
0.230mm
125g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 雲流(薄口)白
楮、木材パルプ
0.130mm
55g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 竹和紙 110g/㎡
竹、再生パルプ
0.230mm
110g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 群雲こうぞ 晒
楮、木材パルプ
0.110mm
42g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 群雲こうぞ 未晒
楮、木材パルプ
0.110mm
42g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 プレミオ 楮 白
楮、麻、木材パルプ
0.350mm
180g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 プレミオ 雲流
楮、麻、木材パルプ
0.310mm
165g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 びざん 純白(中厚口)手漉き紙
楮、木材パルプ
0.480mm
200g/㎡
アワガミファクトリー
阿波紙 びざん 生成(中厚口)手漉き紙
楮、木材パルプ
0.480mm
200g/㎡
イルフォード
和紙 鳥の子
非公表
0.170mm
110g/㎡
イルフォード
手漉き和紙 越前
楮40%、麻60%
0.290mm
110g/㎡
イルフォード
手漉き和紙 パールセント※現行品は手漉き和紙パールセント
楮40%、麻60%
0.3mm
120g/㎡
イルフォード
手漉き和紙 柳瀬
楮40%、麻60%
0.300mm
120g/㎡
大豐和紙工業
伊勢和紙Photo 芭蕉
芭蕉
0.270mm
ー
大豐和紙工業
伊勢和紙Photo 平織目
長繊維針葉樹
0.270mm
ー
大豐和紙工業
伊勢和紙Photo 白銀
短繊維広葉樹、長繊維針葉樹
0.270mm
ー
大豐和紙工業
手すき伊勢和紙 純雁皮紙
雁皮
0.15mm
ー
大豐和紙工業
手すき伊勢和紙 純三椏紙
三椏
0.22mm
ー
大豐和紙工業
手すき伊勢和紙 晒し純楮紙
楮
0.22mm
ー
※白色度はメーカーにより測定条件や基準が異なります
和紙はマット系のファインアート紙と同様に顔料プリンターのほうが有利ですが、染料プリンターによるプリントも独特の雰囲気があって魅力的です。PRO-S1 Mark IIのユーザーも和紙特有の風合いを積極的に楽しむと良いでしょう。顔料プリンターでも印刷した直後はシャドウがつぶれて見えることがありますが、時間が経過するとディテールが浮かび上がってきます。そのためすぐに画像編集で改善しようとしないで、しばらく様子を見るのがおすすめです。
和紙は薄手のものが多いため、給紙前に紙粉を取り除くときなどその取り扱いには細心の注意が必要です。耳付きの和紙は表裏の判別が難しいため、パッケージから取り出した後は間違えないようにしましょう。和紙は表面が柔らかくとてもデリケートなので、用紙によっては給紙ローラーで表面が擦れてしまうことがあります。そのため上トレイからの自動給紙はできるだけ避け、手差しでの給紙がおすすめです。また、紙粉を取り除くなど給紙前に用紙のコンディションを整える必要がありますが、その際に使用するブラシはできるだけ毛の柔らかいものを選びたいです。給紙については初級編のLesson 6「給紙と排紙」 を参考にしてください。
カテゴリー的にはマット系のファインアート紙なのですが、和紙のほうがより個性的な製品が多く、洋紙とは違ったプリントの面白さや奥深さがあるようです。和紙の特性に合わせて調子を整えるなど画像編集を行う必要があればICCプロファイルを使用するのが効果的で、RAW現像ソフトやフォトレタッチソフトのソフトプルーフ機能で仕上がりを確認しながら微調整もできます。ソフトプルーフ機能については実践編のLesson 24「プリントのための画像編集」 で解説しています。
アワガミファクトリーの「阿波紙 三椏 白 二層紙」と「阿波紙 楮 二層紙」はどちらも二層に仕上げた和紙で、裏面には木材パルプが用いられています。プリント後に裏紙を剥がすことができ、約3分の1の厚さになります。「阿波紙 いんべ(厚口)白」は薄らと入った簀の目が特徴で、光を透かした見せ方ができます。薄口と厚口が選べ、後者は両面印刷が可能です。
「阿波紙 楮(厚口)白」は抜けが良くコントラストのある仕上がりです。「阿波紙 楮(厚口)生成」はかなり黄みがかっていて、中間調からハイライトにかけてその影響が感じられます。温かみがあるだけでなく、シャドウに深みが出て、黒がより豊かで印象的です。どちらもわずかにテクスチャーのある面質で、美しく手触りも良いです。粗めの面質のわりに輪郭など細い線はシャープに再現されます。グラデーションも美しく再現され、見る角度によってハイライトが不思議な感じに浮かび上がり、写真の質感も深みが増します。それぞれ薄口もありますが、初めて使うなら取り扱いやすい厚口、カラー写真なら白がおすすめです。生成は階調が優しく滑らかに再現され、黒もとても上品な感じなので、モノクロ写真で使ってみると面白いでしょう。
「阿波紙 竹和紙」は110g/㎡、 170g/㎡、250g/㎡の3種類がラインアップされています。170g/㎡と250g/㎡は両面印刷にも対応しています。竹が原料の和紙で、絹のような手触りと、コットン紙よりも柔らかな風合いが特徴です。白色度も高く、色や階調の再現性にも優れています。「阿波紙 群雲こうぞ 晒」と「阿波紙 群雲こうぞ 未晒」は楮の繊維を生かした風合いが特徴で、後者の紙色は黄みがかっています。どちらも非常に薄いため取り扱いに注意が必要です。
「プレミオ」は表面とは別の和紙を裏面に貼り合わせて厚みを持たせた製品です。薄さのわりに重量感と強度があり、透けや裏写りもありません。「阿波紙 プレミオ 楮 白」と「阿波紙 プレミオ 雲流」は「楮」「雲流」を表層にし、裏面に「新いんべ」を貼り合わせています。後者は楮の繊維を細長く筋状に漉き込んでいて、その入り方が1枚1枚異なるため表情が微妙に違います。彩度は控えめ、黒はやや浅めですが細部をしっかり再現し、シャドウの階調も豊かに感じられます。その特徴的な繊維は明るい部分で目立つため、空間が広めであるなどシンプルな絵柄の写真のほうがこの紙の個性を生かしやすいでしょう。余白も広めにするのがおすすめです。
「阿波紙 びざん 純白(中厚口)手漉き紙」と「阿波紙 びざん 生成(中厚口)手漉き紙」は四辺に耳がある、職人による手漉きの和紙です。手触りが良くコシもあり、しっとりと柔らかな和紙の表情が、見た目だけでなく指先からも伝わってくる感じです。風合いを生かしたプリント表現が可能で、1枚ずつ形状が異なるため、作品に対する思いも自然と強まるでしょう。どちらも厚口もラインアップされています。紙色が明るい「純白」は透明感を出したり、ハイライトを際立たせたい写真に最適です。光沢紙のような鮮烈な仕上がりではなく、控えめなコントラストで落ち着いた印象です。彩度も上がりすぎず、全体的に柔らかな雰囲気になります。階調は滑らかで、高濃度の部分がつぶれたり不自然に落ち込むことはないでしょう。
イルフォードの「和紙 鳥の子」は越前地方で古くから作られている和紙です。短網抄紙機で手漉きのような風合いを再現しています。面質はきめ細かくて味わいがあり、とても良い手触りです。発色性に優れ、階調も滑らかで、コントラストは控えめですがシャドウは深みがあります。個性が強すぎず、そのぶん写真を選ばない印象です。「手漉き和紙 柳瀬」は独特の風合いとしなやかな質感、明るい紙色が特徴です。独自コーティングによる高い発色性を実現し、コントラストもうまく出せるなどくっきり鮮やかな仕上がりが得られやすいです。耳付きも選べます。
「手漉き和紙 越前」は越前地方の手漉き和紙をベースに、独自のコーティングを行うことで優れた発色性を実現しています。繊維が何層も絡む手漉きならではの風合いで、紙の密度が高く立体的な仕上がりです。重厚な像を形成し味わい深さがあります。色や階調を忠実に再現する魅力も備え、画像編集でコントロールしやすくポテンシャルは高い印象です。スタンダード、ウォームトーン、スムース、ウォームトーンスムースが選べ、それぞれ薄手と厚手があります。高輝度パール剤を散りばめた「手漉き和紙 越前パール」もラインアップされていて、きらきらと光る個性的な仕上がりが楽しめます。どちらもA3ノビでは耳付きも選べます。また、真珠のような上品なきらめきがある「手漉き和紙 パールセント」という製品も新しく発売になっています。
大豐和紙工業の「伊勢和紙Photo」シリーズは原材料などの違いで7種類がラインアップされています。いずれも滑面と粗面のどちらの面にも印刷可能で、好みに応じて選べます。「伊勢和紙Photo 芭蕉」は未晒しの原料を使用したウォームトーンの和紙で、より精製を進めた原料で抄いたクールトーンの「伊勢和紙Photo 浄ら芭蕉」もラインアップされています。「伊勢和紙Photo 平織目」は簀目が出ないように工夫して抄いた和紙で、柔らかい風合いと深い発色が特徴です。粗面のほうが和紙らしさが強めに感じられ、複雑な絵柄の写真が合いそうです。滑面のほうがクリアな発色で、階調も美しく再現されます。「伊勢和紙Photo 白銀」は明るい紙色で透明感があり、色乗りが良く表情豊かに仕上がります。同シリーズにはこのほか「伊勢和紙Photo 雪色」「伊勢和紙Photo とりのこ色」「伊勢和紙Photo 優美」がラインアップされています。
「手漉き伊勢和紙」シリーズも9種類がラインアップされています。1辺のみ耳付きで、余白が偏るときは画像の配置を2~3mmくらいずらして印刷すると良いでしょう。「手すき伊勢和紙 純雁皮紙」は雁皮100%の最高級の手漉き和紙ということで手触りが良く、とても滑らかで上品な印象です。きめ細かくて美しく、そして光沢感もあります。滑面と粗面の面質の差はわずかで、色や階調の再現性の傾向もほとんど同じ。滑面のほうがわずかに光沢が強めで、光の反射でハイライトが浮かび上がります。粗面も無光沢ではなく、絵柄に応じて光沢の強弱を使い分けると良いでしょう。「手すき伊勢和紙 純三椏紙」は三椏100%で漉いた繊細で柔らかな表情、素直な描写が特徴の和紙です。「手すき伊勢和紙 晒し純楮紙」は天然の素材の色を残した楮紙です。ベージュ色で存在感がありますが、写真の白い部分はその色になるためハイライトが甘くなりがち。黒も十分に締まる感じではなく、全体的にコントラストは控えめの傾向です。粗面のほうがその傾向が強めの印象で、温かみのある柔らかい雰囲気になります。同シリーズにはこのほか「手すき伊勢和紙 長毛楮紙」「手すき伊勢和紙 板張り半草紙」「手すき伊勢和紙 大直紙」「手すき伊勢和紙 伊勢斐紙 風雅」「手すき伊勢和紙 伊勢斐紙 風祥」「手すき伊勢和紙 未晒し純楮紙」がラインアップされています。