使用プリンター:PRO-G2
公開日:2026年7月31日

マット系のファインアート紙は艶がない無光沢で、実践編のLesson 33で取り上げたスムース面質と、このレッスンのテクスチャー面質の大きく2タイプに分類されます。どちらも水彩画や版画などで使われる画材紙がベースになっていて、その上にインクジェットプリント用のコーティングが施されていますが、スムース面質は表面が滑らかですべすべした手触りであるのに対し、テクスチャー面質は凹凸のあるざらついた質感が特徴です。優しく落ち着いた印象のスムース面質に比べ、荒々しい雰囲気で動きが感じられるなど、より個性的なプリント表現が可能です。
一般的な用紙とはひと味違った仕上がりが楽しめるテクスチャー面質のマット系ファインアート紙ですが、絵柄の細かい部分が表面の凹凸に埋もれて見づらく感じられることがあります。とはいえA4では粗く感じても、A3ノビではあまり気にならないなど、プリントの大きさによってテクスチャーの印象は変わります。写真の絵柄だけでなくプリントサイズも考慮に入れて判断すると良いでしょう。
使用プリンター:PRO-G2
スムース面質のマット系ファインアート紙に少し質感がある「スムース」と、平滑性が高く滑らかな「ウルトラスムース」があるように、テクスチャー面質の用紙も凹凸が弱めのものと強めのものがあります。凹凸の大きさや均質さなど用紙によってさまざまで、どれも個性的。プリントでの写真の見せ方に変化を付けることができます。プリントサイズにもよりますが、表面の凹凸が絵柄の中に埋もれることもあれば、空など平坦な部分で目立つこともあります。
また、正面からの光や拡散光だとテクスチャーの様子は控えめに感じられ、凹凸が控えめな用紙はスムースな面質に近い平面的な見え方になります。これに対し、斜めからの光や直射光だとテクスチャーの凹凸が強調され、立体的な見え方になります。写真展などの展示では、照明のタイプやライティングのやり方でプリントの表情が変化します。光線状態によってはテクスチャーの影の影響で写真が暗めに感じられることもありますが、被写体の質感や風景の奥行きが強まって見えるほか、凹凸による陰影がハイライトの白飛びを補うような効果が期待できます。
カラー写真はICCプロファイルを適用したほうが色や階調の再現性が良く、プリンターと用紙の両方の性能をうまく引き出すことができます。また、顔料インクは速乾性がありますが、光沢紙よりマット紙のほうが色などの安定に時間がかかる傾向です。例えば印刷直後はシャドウがつぶれて見えても、時間の経過とともに少しずつディテールが出てくることがあります。
Professional Print & Layoutやプリンタードライバーの印刷設定の[用紙の種類]は、用紙によって推奨設定が異なります。用紙メーカーのウェブサイトなどで設定を確認しましょう。また、マット系のファインアート紙は厚手のものが多く、中には反っているものもあります。[用紙の種類]が正しく設定されていても、そのまま給紙すると表面が擦れたり、余白にインクが付着して汚れることがあるので、できるだけ反りを取り除いてから給紙しましょう。
お気に入りの他社製用紙は、「Media Configuration Tool」(メディア・コンフィグレーション・ツール)で既存の用紙情報をカスタマイズしてプリンターに追加すると便利です。ICCプロファイルと一緒にam1xファイルを配布している用紙もあり、これを利用すると効率良く追加できます。その方法については、中級編のLesson 15「Media Configuration Toolで用紙情報を管理」で紹介しています。
ファインアート紙は裁断時に出た紙の屑(紙粉)が表面に付着していることがあります。写真展の展示作品やフォトコンテストの応募作品などで白い斑点があるプリントをたまに目にしますが、印刷時に紙粉の上にインクが乗り、そのあと取れてしまったことが主な原因です。印刷前に目視でそれを確認するのは困難なので軽くブラシをかけ、ブロアーで吹き飛ばしてから給紙しましょう。このあたりについては初級編のLesson 6「給紙と排紙」で解説しています。
また、用紙自体に黒や茶の微細な屑が入っていることがごく稀にあります。これは取り除くことができないので、その部分に濃いインクを乗せて見えなくします。絵柄で隠れるような写真のプリントで使用したり、給紙の向きを工夫するなどして改善できます。
このレッスンで取り上げるバライタ紙
| メーカー | 製品名 | 面質 | ベース | 紙厚 | 坪量 | 白色度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
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キヤノン | 写真用紙・プレミアムファインアート・ラフ | テクスチャー | コットン | 0.540mm | 320g/㎡ | ー |
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イノーバ・アート | エッチングコットンラグ | ソフトグレイン | コットン | 0.460mm | 315g/㎡ | 86% |
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イノーバ・アート | ファブリアーノ プリントメイキングラグ | ソフトグレイン | コットン | 0.565mm | 310g/㎡ | 86% |
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イノーバ・アート | アルティスティコ ウォーターカラーラグ | モールドメイド・水彩画調 | コットン | 0.565mm | 310g/㎡ | 86% |
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イルフォード | テクスチャードコットンラグ | テクスチャー | コットン | 0.500mm | 310g/㎡ | 97% |
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イルフォード | コットンアーティストテクスチャード | テクスチャー | コットン | 0.595mm | 310g/㎡ | 97% |
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イルフォード | マットコットンメディナ | テクスチャー | コットン | 0.550mm | 320g/㎡ | 96% |
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イルフォード | テクスチャードコットンスプライト310 | テクスチャー | コットン | 0.460mm | 280g/㎡ | 96% |
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イルフォード | テクスチャードコットンパールセント | テクスチャー | コットン | 0.570mm | 310g/㎡ | 97% |
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イルフォード | ファインアート テクスチャードシルク | テクスチャー | コットン・アルファセルロース | 0.460mm | 270g/㎡ | 96% |
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キャンソン・インフィニティ | アルシュ・アクアレル・ラグ | テクスチャー | コットン | 0.530mm | 310g/㎡ | 96.76% |
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ハーネミューレ | アルブレヒト デューラー | テクスチャー | コットン・アルファセルロース | 0.350mm | 210g/㎡ | 88.50% |
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ハーネミューレ | トーション | テクスチャー | アルファセルロース | 0.500mm | 285g/㎡ | 96% |
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ハーネミューレ | ウイリアム ターナー | テクスチャー | コットン | 0.620mm | 310g/㎡ | 88.50% |
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ハーネミューレ | ジャーマン エッチング | テクスチャー | アルファセルロース | 0.500mm | 310g/㎡ | 91.50% |
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ハーネミューレ | ミュージアム エッチング | テクスチャー | コットン | 0.600mm | 350g/㎡ | 87% |
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ハーネミューレ | アガベ | テクスチャー | 龍舌蘭繊維・コットン | 0.500mm | 290g/㎡ | 89% |
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三菱王子紙販売 | ピクトリコプロ・ファインアートラフ | テクスチャー | 特殊紙 | 0.385mm | 250g/㎡ | 95% |
※白色度はメーカーにより測定条件や基準が異なります
使用プリンター:PRO-G2
インクジェット紙には得手不得手があり、合う写真と合わない写真がどうしても生じてしまいます。特にマット系のファインアート紙は、ほかのタイプの用紙よりその傾向が強いようです。寛容性が高い用紙もありますが、ある写真ではいまひとつで選ばなかったのに、ほかの写真では最適なケースもあります。その逆もあるため、以前に使ったときはこうだったという評価は、次の作品の用紙選びでは一度リセットしたほうが良いでしょう。もちろん1製品だけでは良し悪しの判断はできません。複数枚試し見比べることが大切で、そのときの基準としてお気に入りの用紙を候補に加えるのは良いと思います。比較する用紙を毎回変えながら少しずつ種類を増やしていくことで経験値を高められ、プリント表現の審美眼も養われます。用紙の使いこなしにも効果的に生かせるようになるでしょう。
キヤノンの「写真用紙・プレミアムファインアート・ラフ」は大きめの凹凸が特徴で、段差のある粗いテクスチャーによる個性的なプリント表現が楽しめます。キヤノン純正ということもあり、テクスチャー面質のマット系ファインアート紙はこれを基準にほかの候補と刷り比べながら、写真に合った用紙を選んでいくのも良いでしょう。
キャンソン・インフィニティの「アルシュ・アクアレル・ラグ」はテクスチャーがそれよりも細かい感じですが、ざらざらした手触りです。水彩画紙がベースで、美しく上質な感じです。自然な紙色で、色や階調の再現性はスムース面質の「アルシュ88」とよく似ていて、シャドウのディテールがしっかり感じられます。三菱王子紙販売の「ピクトリコプロ・ファインアートラフ」は手ごろな用紙ですが、スムース面質の「ピクトリコプロ・ファインアートスムーズ」とはスペックが若干異なります。テクスチャーの感じはアルシュ・アクアレル・ラグによく似ていて、水彩画のような上品な凹凸感が特徴です。手触りも良くコシもあります。
イノーバ・アートの「エッチングコットンラグ」と「ファブリアーノ プリントメイキングラグ」はソフトテクスチャーに分類され、スムース面質とテクスチャー面質の中間くらいの質感です。エッチングコットンラグは穏やかな凹凸、ファブリアーノ プリントメイキングラグは細かい模様が入ったような凹凸と、それぞれに個性があります。「アルティスティコ ウォーターカラーラグ」はそれらよりも粗めですが、アルシュ・アクアレル・ラグやピクトリコプロ・ファインアートスムーズよりテクスチャーはやや控えめです。イノーバ・アートの3製品はいずれも温かみのある紙色で、色や階調の再現性はいずれも良好です。モノクロ写真はシャープな印象で、奥行きが感じられる安定感のある仕上がりです。
イルフォードの「テクスチャードコットンラグ」はきめの細かいテクスチャーで凹凸は控えめで、個性が強過ぎず幅広い絵柄の写真で使える印象です。スムース面質とテクスチャー面質のどちらにするか迷ったときは、この用紙と「スムースコットンラグ」を比較するのも良いでしょう。「コットンアーティストテクスチャード」は水彩画紙の風合いを持つ凹凸が強めの用紙で、空など絵柄の平坦な部分で粗さが目立ちます。そのぶん写真を選ぶ傾向がありますが、立体感のある見せ方が可能です。「マットコットンメディナ」は凹凸が控えめですが大きめのテクスチャーで、平坦な部分ではより粗さが目立ちます。紙色は自然な白さで、色や階調の再現性は良好ですが、コントラストや彩度が控えめの写真のほうが合いそうです。
「テクスチャードコットンスプライト」と「テクスチャードコットンパールセント」はそれぞれスムース面質の用紙もラインアップされているので、それらと比較してみるのも良いでしょう。テクスチャードコットンスプライトはテクスチャードコットンラグより粗い面質ですが、凹凸が強すぎない柔らかな印象です。テクスチャードコットンパールセントは真珠のような上質なきらめきが美しく、写真の絵柄によっては凹凸があるぶん、スムースコットンパールセントよりキラキラが強めに感じられるかもしれません。「ファインアート テクスチャードシルク」はイルフォードのラインアップの中では手ごろなテクスチャー面質の用紙で、表面の凹凸は強くないためソフトテクスチャーと言えます。厚みがあってコシもあり、風合いのある上品な仕上がりです。紙色はやや黄みがかっていて温かみがあり、色や階調の再現性も良好です。
ハーネミューレの「アルブレヒト デューラー」は水彩画紙の風合いを持つ用紙で、テクスチャーは少し強めですが凹凸は浅めです。紙色は黄みがかっていて温かみがあり、色や階調の再現性は良好です。色がつぶれたり、階調が飛んだりしないよう、画像編集は控えめにしたいです。「トーション」はポコポコした感じの個性的な面質が特徴です。自然な明るさの紙色で透明感があります。色乗りが良く階調の再現性も優秀ですが、コントラストや彩度の上げ過ぎに注意しましょう。「ウイリアム ターナー」は凹凸は控えめに見えますが、表面はざらついた感じがするなど独特の手触りです。190g/m2の薄手タイプもラインアップされています。色乗りが良く、階調も滑らかに再現されています。
「ジャーマン エッチング」は柔らかく滑らかな風合いでテクスチャーは控えめです。繊細かつ雰囲気のある面質で、写真がシャープに見える印象です。やや黄みがかった紙色で、色乗りが良く階調再現も優秀です。「ミュージアム エッチング」もテクスチャーは控えめで、柔らかい手触りが印象的。コシもあり上品な感じです。自然な明るさの紙色で、色や階調の再現性にも優れ、画像編集でもコントロールしやすいでしょう。「アガベ」はほかよりもさらに滑らかな面質で、ソフトテクスチャーと言った感じです。表面の手触りも滑らかです。紙色も自然な白さでハイライトが際立ちます。色再現性も良くコントラストもしっかり出せる印象です。スムース面質の「バンブー」や「ヘンプ」と使い比べるのも良さそうです。
PRO-G2やPRO-S1 Mark IIに対応する他社製用紙のICCプロファイルをキヤノンでも用意しています。中級編のLesson 14「プリント用紙の選び方」で紹介しているので参考にしてください。ただし全ての用紙ではなく、インクとのマッチングなどを考慮して選んだものだけになります。それ以外については各用紙のメーカーサイトで入手できます。海外の用紙メーカーの場合は本国のサイトにアクセスする必要がありますが、日本のサイトでICCプロファイルのダウンロードやインストールの方法などを解説しているので安心です。
また、用紙情報ファイルが用意されている製品もあります。ICCプロファイルと一緒にダウンロードし、Media Configuration Toolを使ってプリンターに登録すると印刷設定のときに便利です。登録方法など詳しくは、中級編のLesson 15「Media Configuration Toolで用紙情報を管理」を参照してください。