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10 渋谷敦志

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渋谷敦志(しぶや あつし) © Jun Shima

渋谷敦志 (しぶや あつし)

大学在学中に1年間、ブラジル・サンパウロの法律事務所で働きながら本格的に写真を撮りはじめる。国境なき医師団日本主催1999年MSFフォトジャーナリスト賞を受賞した後、世界各地の取材活動をはじめる。著書に『僕らが学校に行く理由』(ポプラ社)、『今日という日を摘み取れ』(サウダージ・ブックス)、『まなざしが出会う場所へ ― 越境する写真家として生きる』(新泉社)、『回帰するブラジル』(瀬戸内人)、『みんなたいせつ ― 世界人権宣言の絵本』(岩崎書店)などがある。2021年、笹本恒子写真賞を受賞。
こちらから本写真集に関する
インタビュー動画をご覧いただけます
『LIVING』は、報道写真家として活動してきた
二十数年間で撮影した中から、
選りすぐりの写真をまとめた一冊です。
今回、その写真のセレクトには、
私が最も尊敬するフォトジャーナリストである
千葉康由氏に入っていただきました。

写真を選ぶ中で彼に言われた言葉。
「これらの写真は渋谷敦志の人生みたいだ」

この一言で私はこの写真集のタイトルを『LIVING』とし、
写真に写る1人1人が生き続けると同時に、
自分自身も生き続けてきたという思いを込めました。
そしてこのタイトルのように、
私はこれからもカメラとともに旅をし、
生き続けたいと思っています。
  • 凛として/ナイジェリア 2019 ナイジェリア北東部で大規模な人道危機が続き、
    少なくとも2万人以上が殺害され、
    数百万もの民間人が
    家を追われて
    避難生活を強いられていた。
    その時訪れたボルノ州の州都マイドゥグリにある
    小さな避難所。
    非公式の避難所ゆえに、
    食料や飲料水の確保すらままならない
    厳しい生活環境だったが、
    住民たちは写真を撮るだけで
    何も与えない訪問者の私を歓迎してくれた。
    そのときに出会ったひとりの少女。
    ファインダー越しに見た、鋭く美しい眼光と、
    凛とした佇まいは今も目に焼きついている。
  • 煮えたぎる砂の世界/エチオピア 2013 エチオピア北東部に広がるダナキル砂漠。
    太古から続く地殻変動でできた巨大な大地の裂け目、
    「グレート・リフト・ヴァレー(大地溝帯)」の底に、それはある。
    世界で最も暑い場所として知られ、
    海面より低い砂漠を進むと突如、塩の大地が出現する。
    かつてあった海水から水分が蒸発し、
    厚い塩の層が残っているのだ。
    その塩を切り出し、
    ラクダに積んで町まで運ぶ、“塩のキャラバン”。
    何百年も変わらないこの営みは、
    アスファルトの道が開通した今も続いている。
  • 今を生きる/タイ・ミャンマー国境 2008 ミャンマーとの国境にほど近い山岳地帯にある
    「ウンピアム難民キャンプ」。
    国境を超えて逃れた多くのカレン族が身を寄せていた。
    8月、カレン族の伝統的な祭事「ラクキチュ」
    (カレン語で「腕にひもを結ぶ」の意味)で、
    たまたま私の腕に糸を結んでくれた少女がルルだった。
    当時10歳。その時に撮った一枚がきっかけとなり、
    その後10年以上撮影を続けている。
    「たとえ幸せじゃなくても
    幸せの方に心を向けることはできます」
    20歳を超えたときの彼女の言葉だ。
    キャンプの外に出たが、生活は依然苦しい。
    それでも、彼女なりの歩みで、
    寄って立つ根っこを求め、今を生きる。
  • ああ、サウダージ/ブラジル 2006 20歳の時にもしブラジルに出会っていなければ、
    今こんな生き方をしていなかっただろう。
    憧れにも似た未知の世界へのまなざしを羅針盤にして、
    未来とも希望ともいえる光の差す場所を探し求める生き方。
    それが私の写真であり、人生である。
    世界各地を旅していると、ときおり猛烈に
    「ブラジル不足」の症状に襲われることがある。
    「ここはブラジルじゃないんだ」と空を見上げては、
    遥か遠くのブラジルに想いを馳せる。
    そんな感情を表す、とっておきの言葉がある。
    「ああ、サウダージ」。
  • 平和のために/東ティモール 2006 1976年代以降のインドネシアによる
    併合支配を脱して、2002年に独立、
    「21世紀で一番新しい国」となった東ティモール。
    だが、船出からわずか4年後、
    ティモール島の出身地の違いに起因する
    火種が燃え広がり、多数の犠牲者や難民を出す
    騒乱状態になっていた。
    そんな最中、NGO「国境なき子どもたち」から
    ボランティア活動に誘われ、子どもの教育を通して、
    分断した地域の絆を取り戻す仕事に関わった。
    現地で生活したことで素朴に思ったのは、
    「平和は難しい」ということだった。
    分断がますます深まるこの世界で、
    異なる価値や立場に思いを巡らせ、対話し、
    人間同士の結びつきをどのように再生していくのか。
    むろん平和のために。
  • ボーダーランド/ザンビア・コンゴ国境 2013 写真を撮り続ける中で、いつしか私は
    「ボーダー」という言葉をテーマにするようになった。
    それは国境とは限らない。人の心にある想像上のものも含め、
    この世界にはありとあらゆるボーダーが張り巡らされている。
    そんなボーダーを、人と人を隔てるラインではなく、
    人と人が交わり、つながる可能性を秘めたランドとして
    捉え直せないだろうか。
    「ボーダーランド」を求める旅から多くの写真が生まれた。
    わかり合えたわけではないが、つながっている。
    そんなニュアンスが写り込んだ写真を介すことで、
    ボーダーを乗り越え、世界の見方が変わっていく。
    そうした力も、私が写真を撮り続ける理由の一つだ。

information

500部限定販売

タイトル
LIVING
発行年
2023年
仕様
240mm×240mm ラスター(ハードカバー)
80ページ64点収録 豪華化粧箱付
サイン入りオリジナルプリント付
(240mm×240mm)
印刷
DreamLabo 5000
価格
29,150円(税込・送料込)
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