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しばしとてこそ 立ちどまりつれ

04 石橋睦美

しばしとてこそ 立ちどまりつれ

しばしとてこそ 立ちどまりつれ
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about

石橋睦美(いしばし むつみ)

石橋睦美 (いしばし むつみ)

1947年、千葉県生まれ。1975年ごろから東北の素朴な自然風景を撮り始め、1989年ごろから、山岳景観、ブナ林の撮影に取り組む。その後、森林を背景に成り立った日本文化の原点を探ることに興味を持ち、日本各地の森林を訪ねる。現在はテーマを「日本の原風景」と定め、撮影を行っている。主な写真集に『日本の森』『神々の杜』ほか多数。
こちらから本写真集に関する
インタビュー動画をご覧いただけます
この作品集は
平安後期から鎌倉初期の歌人、西行が歌枕に訪れ、
伝説として語り継がれてきた土地を訪ね
撮影した写真で構成している。
私が西行の足跡を辿ろうと思ったのは、
10年以上前になる。
それから今日まで、西行の足跡を自分なりに解釈して
日本の原風景として見つめてきた。
旅の途上で西行がどのように風景に親しみ、
歌を詠んだのか。
西行の思いに想像をめぐらせながら私は風景を見つめた。
この作品集に掲載された写真はすべて
私の想像に起因している、と言って良い。
だがテーマに沿って撮影した作品だから物語が描かれる。
ともすれば見過ごしてしまいがちな
風景であっても私の心に響き、
立ち止まらせた風景であったから、
それを素直に受け止め映像として成り立たせた。
西行の足跡を辿る旅は、この作品集でひとまず終わる。
次なる撮影テーマは千国街道塩の道である。
  • つい数分前まで天空にあった上弦の月が、
    見る見る高度を下げ多宝塔に落ちてきた。
    夜の壇上伽藍を見ようと宿を出たのだが、
    目にしたのは真言密教の
    聖地を象徴するかのような光景だった。
    高野山に隠棲した西行は、月を眺め、
    なにを思っただろう。
  • 厳寒、熊野灘の潮流洗う海岸に海霧が発生する。
    東の空が曙に染まりだすと、
    しばらくして水平線から太陽が昇る。
    と、その時を待っていたかのように、
    無音の海面から霧が湧き立つ。
    同時に叢雲が深紅を濃くする。
    まさに隱国を映す色彩だ。
  • 日本最古の道、山辺の道を歩き、
    石上神宮へ入る手前で心を揺るがす光景を目にした。
    朝日が差し込み、漆喰塀に樹影が映えていたのだ。
    それは1600年もの
    歳月を重ねてきたからこそ現れる美である。
    旅をして、思いがけず出会えた風景は
    いつまでも忘れない。
  • 達谷窟毘沙門堂の岩壁に磨崖仏が刻まれている。
    長い歳月、風雪に晒されたせいで剥離が目立つ。
    坂上田村麻呂によって建てられたという毘沙門堂だから、
    磨崖仏も千年を超えているのかもしれない。
    その仏に添える枝垂れ桜が、究極の和風美を描き出す。
  • 突然風雪が強まり、
    白濁した空気に呑み込まれてしまった。
    そう長い時間ではなかったが、
    純白の空間に小さな鳥居と祠だけが浮かんでいた。
    あまりにも幻想的で、
    現実なのかと見紛うほどであった。
    長旅をしていて、
    不思議な風景が心に届いた時の喜びは大きい。
  • 月と桜をこよなく愛した西行は、
    吹く風や樹草の息吹を肌で受け止め歌を詠んだ。
    そんな西行の思いを想像してみると、
    月と桜を基軸にした独自の映像世界が浮かんでくる。
    暮れなずむ時刻、枝垂れ桜にかかる満月を待つ時間が
    いつもより長く流れる。

information

500部限定販売

タイトル
しばしとてこそ 立ちどまりつれ
発行年
2022年
仕様
240㎜×240㎜ ラスター(ハードカバー)
80ページ 62点収録 豪華化粧箱付
サイン入りオリジナルプリント付
(240mm×240mm)
印刷
DreamLabo 5000
価格
29,150円(税込・送料込)
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