DEMIURGOS
DEMIURGOS

- 「DEMIURGOS」
- 古代ギリシャ語で職人や技術者を意味する言葉
夢中でシャッターを切る。
いったい誰が、どうやって、
こんなものを作ったのかと思わざるを得ないが、
実際に設備を作った人に話を聞くと、
いたって普通の人たちだということに気がつく。
ただ、彼らの目的は明確だ。
ひたすら目的を達成するための努力をした結果、
それが想像を超えた機能美や迫力といった形で
私たちに迫ってくるのだ。
私の撮影は、彼らとは違う視点で現場の魅力を発見し、
彼らの努力を伝えるお手伝いをしているに過ぎない。
この写真集は、私の写真集であると同時に、
技術者や現場で働いている人たちの作品集なのだ。
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工業製品であるにも関わらず、
有機的な曲線を描く部品たちに目を奪われた。
その美しさを伝えるために私が行ったのは、
画面の中の余分な要素を排除すること。
あとは、そっとシャッターを切るだけだった。 -
初めて訪れた現場は、濃い霧に包まれ、
被写体がどこにあるのかさえわからなかった。
一度は撮影を諦めかけたが、
現場の人に話を聞いているうちに、
霧が少しずつ晴れ、
見たことのない造形がゆっくりと現れた。 -
飛躍的に増えた写真の情報量を生かし、
複雑かつ巨大な装置を質感豊かに記録したいと考えるのなら、こんな曇りの日はうってつけだ。
うまく撮れれば、
写真を見ながら何度でもこの場所を探検できる。 -
私の撮影は、取材先による許可が必要なため、
限られた時間での撮影となる。
目の前の作業は、この後、
撮影に値するものになってゆくのか?
待っている間に他の物を撮るべきではないのか?
常に判断を迫られる。 -
カメラを持って現場を歩いている時、
まるで引き寄せられるように、
被写体に導かれてゆくことがある。
そんな時は、構図を考える必要もない。
この時も、
構図はファインダーをのぞく前から決まっていた。 -
身の回りにある人工物は全て、
人々の視線を意識した上でデザインされている。
しかし、その視線を意識することなく
機能だけを追求した形は、
人の想像を超えたものとなり、
私の好奇心を捉えて離さない。