人物部門 第57回キヤノンフォトコンテスト

人物部門

ゴールド賞

スマートフォンを見ながら座っている町娘の仮装をした男性 — 『休憩』西原博子（愛知県）

受賞者の声

このたびは、光栄なる賞をいただき、うれしさとともに身の引き締まる思いです。この写真は豊川市国府の夏祭りでの一枚です。歌舞伎行列で有名なこの祭りは、花魁・町娘・五右衛門など大半が男性で、衣装としぐさがかみ合わず面白味を感じる場面が多々見られます。行列途中の休憩でくつろいでスマホを見る少年、上半身はかわいい町娘、しかしはだけた裾からは少年の足が……。ギャップが面白かったです。今後もこの賞に恥じぬよう、一層の努力を重ねていきたいと思います。

講評：誰もが笑ってしまう人物部門ゴールド賞作品

広川

人物部門のゴールド賞は「休憩」という作品ですが、とても面白い作品です。今どき珍しいくらいのストレートな写真で、顔は美しいのにむき出しになった足はすね毛がもじゃもじゃという対比がとにかくユニークです。足を広げてスマホをいじっている姿はまさに「休憩」という感じで、誰が見ても笑ってしまう一枚ですね。
渋谷

確かに面白くていい写真だと思いますが、あまり見たくないものを見せられたという感じがして、忘れられない一枚になってしまいました（笑）。でも、インパクトはすごいですね。
鍵井

僕もインパクトのすごさにやられました（笑）。美しい顔とすね毛というギャップがよくて、見方によっては、このすね毛に色気を感じる人もいるのかもしれませんね。人によって色気の感じ方に違いがある。そんなことも表現している作品だと思います。
澤田

この作品の面白いところは、すべてがちぐはぐなことだと思うんです。着物姿で昔の感じなのにスマホを持っていたり、女の人かと思いきや男性の女形だったり、そうした違和感が作品を面白くしています。
水谷

これは祭りなどで行われている田舎芝居だと思うのですが、そこでは男性が女形をするんですよね。それを真正面から撮って力強いし、すね毛が見えて面白い。それだけで十分魅力的な作品になっていると思います。それにしても顔がきれいで、不思議と色気が感じられるのがまた面白いですね。
大和田

僕はこの作品を見て、マーティン・パーを思い出したんですよ。彼もストレートに撮って、妙な世界というか、少し皮肉っぽいとらえ方をしている。それに通じるものがあると感じたんですね。皆さんがおっしゃった違和感とかアンバランスさみたいなものが独特の世界を生み出していますね。
澤田

被写体がまったくカメラを意識していないのもいいですよね。
広川

休憩中だから何も気にせず無防備な姿を見せているでしょう。そんなところを狙うのも写真の面白さの一つだと思います。