極限の形象
極限の形象

about

水谷章人 (みずたに あきと)
1940年、長野県生まれ。1965年、東京綜合写真専門学校卒業後、フリーランスの写真家として活動。山岳写真を経てスキーの分野に移行し、ワールドカップを撮影、やがてスポーツ全般の撮影を手掛ける。世界大会や各スポーツの世界選手権の取材多数。また、若い写真家育成のため、スポーツ写真プロ育成≪水谷塾≫の塾長を務めている。多くの写真集、写真展で作品を発表。主な受賞歴に、第12回講談社出版文化賞、第3回飯田市藤本四八写真文化賞、日本写真協会賞作家賞、ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞功労賞。
60年かけて拾い集めてきた「記憶に残る瞬間」が、
この写真集に詰まっている。
しかし、ただ単に過去を振り返るものではなく、
未来も感じさせる仕上がりになったと感じている。
今までの水谷章人の世界とは少し違う、
新たな世界を感じ取ってもらえたら幸いだ。
スポーツが好きで、カメラが好きで、
今も自宅のテレビでスポーツ観戦をしていると
撮影に行きたくてウズウズする。
その気持ちがある限り、
私はこれからもどこかの競技場に足を運ぶのだろう。
多くの人に感謝しながら、
そして、まだ見ぬ『極限の形象』を追い求めて。
この写真集に詰まっている。
しかし、ただ単に過去を振り返るものではなく、
未来も感じさせる仕上がりになったと感じている。
今までの水谷章人の世界とは少し違う、
新たな世界を感じ取ってもらえたら幸いだ。
スポーツが好きで、カメラが好きで、
今も自宅のテレビでスポーツ観戦をしていると
撮影に行きたくてウズウズする。
その気持ちがある限り、
私はこれからもどこかの競技場に足を運ぶのだろう。
多くの人に感謝しながら、
そして、まだ見ぬ『極限の形象』を追い求めて。
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時速120kmで滑降し、
1000分の1秒を競い合うスキー競技。
稜線のどこから飛び出して来るかわからない
スキーヤーを待ちながら、
わずかに頭が見えた瞬間にフレーミングを決め、
シャッターを切った。
オートフォーカスも連写もない時代、
たった一瞬にすべてを賭けなければいけない。
失敗が許されない緊張感と撮れたときの安堵。
それもスポーツ写真の醍醐味である。 -
世界選手権の男子100m予選。
記録を目的とした写真なら、
アスリートの顔が見える位置から狙うのが普通だが、
このときは予選ということもあり、
観客と同じ目線の高い位置から狙った。
有力選手を中心に据えながら、
絵的に美しいフレーミングを決め、
スタートしてから数歩、
選手が最も力を入れる瞬間を切り取った。 -
手前に映る影を生かしながら、
テニスのサーブを造形的に切り取った。
シルエットとわずかな光で伝わる選手の肉体美。
そして、躍動感。
撮影した有明コロシアムでコートにこの光が差し込むのは、
1日のうちでわずか20分程度。
それを見越して頭の中でイメージを固め、
その瞬間が訪れるのをずっと待ち構えていた。 -
走り高跳びの選手がバーを越えた瞬間をとらえた、
若かりし頃の代表的な一枚。
バーの少し手前にピントを合わせておき、
選手の表情を狙う。
広告などの看板を外し、
背景が観客だけになるように
アングルにもこだわった。
スポーツ写真といえども、
やはり、画面は美しい方がいい。
撮影場所の指定がより厳しくなった今では、
選手の顔が見えるこの位置からの撮影はできない。 -
アイススケートのショートトラック競技。
選手たちがトラックを何周も滑る中、
スローシャッターでその足元を写した。
一瞬の動きを写し止めるのが
スポーツ写真の醍醐味ではあるけれど、
スローシャッターで流し、
幻想的な世界を作るのもまた楽しみの一つ。
撮ってみなければどう写るかわからない、
いわば偶然の産物だけど、時折、
自分の想像を超えた新しいイメージと出会わせてくれる。 -
スポーツ全般を撮り始めた初期の頃、
ひたすらクローズアップばかりを狙っていた。
アスリートに肉薄し、競技の魅力だけでなく、
その心までも写したい。
ボクシングのパンチを受け、顔を歪める瞬間。
モノクロフィルムを増感して粒子を荒くした“汚い写真”。
でも、この汚さが、ボクシングの迫力と、
勝負に賭けるボクサーの闘争心を伝えてくれる。