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Lights of 5 竹沢 うるま Vol.3 ベナン共和国

LIGHTS OF 5 Vol.3 ベナン共和国 Inner Light 光のある方へ Photographer URUMA TAKEZAWA

Inner Light 光のある方へ

Vol.3 ベナン共和国

国、人種、宗教、組織や個人。
旅を続けるなかで、これまで多くの境界を目にしてきた。

しかし、それは人間の視点から
世界を見たときに存在するものであり、
大地や自然といったより大きな規模や時間軸から
世界を捉えたとき、
大半の境界は霧消する。

大地の視点から見ると、人間も自然の一部でしかない。
人間が生み出す境界の大半は刹那的であり、
俯瞰的にはあまり意味をなさない。
それでも、我々は日々、さまざまな境界によって
隔てられながら生きている。

今回、ベナンを旅した。
ここで私が見てみたかったのは、
精霊と人間の境界が曖昧になる様である。

人が精霊と一体化するとき、
どのような世界がそこに広がるのだろうか。
境界なき世界を探して、旅をした。

ベナン共和国

西アフリカ、ギニア湾に面した小国ベナン。
この国を、ブードゥー教の儀式を探して旅した。

ブードゥー教は、西アフリカの土着信仰である。
万物にVodun(神、もしくは精霊)が宿り、それを崇める。

ハルマタン(風に乗って砂漠からやってくる砂埃)の季節、
ベナンでは国を上げてVodunを祝う催しを行う。

夜の守護神を意味するザンベトや、
死者の霊を意味するエグングンが街に現れ、
人々の前で精霊が舞う。

強烈なエネルギーを込めて叩かれる太鼓のリズム。
体の芯から発せられ、あたりの空気を激しく震わす歌声。
人間は精霊を迎えるために、全身全霊で歌い、踊る。

人が持つエネルギーと、精霊たちの聖性。
それらが最高潮に達すると、
人と精霊を分かつ境界が曖昧になる。
同時に、私自身もその渦に飲み込まれ、
自我が溶け出し、一体化していく。
一連の写真群は、そんな状況下で撮ったものである。

境界なき世界で歌い踊るものたちは、美しかった。

竹沢うるま写真家

1977年生まれ。
世界各地を旅しながら写真を撮る。これまで訪れた国と地域は140を超す。2010年~2012年にかけて、1021日103カ国を巡る旅を敢行し、写真集「Walkabout」と対になる旅行記「The Songlines」を発表。2014年には第3回日経ナショナル ジオグラフィック写真賞グランプリ受賞。2015年に開催されたニューヨークでの個展は多くのメディアに取り上げられ現地で評価されるなど、国内外で写真集や写真展を通じて作品発表をしている。

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Lights of 5|竹沢 うるま Vol.3 ベナン共和国
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2025-02-21