アンダー30部門 第51回キヤノンフォトコンテスト
アンダー30部門
ゴールド賞
受賞者の声
長年の理容業を退いた祖母の気持ちを写真にするこの度は、立派な賞をいただき誠にありがとうございます。祖母は60年以上理容業を営み、その功績が称えられ市からも表彰されたことがあります。祖母が半世紀以上も費やした理容業ですが、病気のため、最後は少しさっぱりとそしてあっけなく、その生涯に幕を下ろしました。あのとき、祖母はどのような気持ちだったのだろうか。それは祖母自身にしか分かりませんが、僕が写真を通して少しでもその気持ちを伝えようとした作品が「現役回想」です。
講評:作者の思いが写し込められたアンダー30部門ゴールド賞
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竹沢アンダー30部門は、完成度というより、作者がどのような思いで作品を撮っているのか、それが伝わるかどうかを重視して選考させていただきました。その中でゴールド賞の「現役回想」は、最も作者の存在が感じられた作品です。一枚一枚が分かりやすいのですが、感情的な部分もあり、左の2枚には時間軸を感じさせる写真を置いています。
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前川作者の思い入れが感じられますよね。うまく撮ろうとかではなく、このおばあさんに対する思い入れのようなものが写真から滲み出ています。
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横木組み方はこれでよかったのかな。右3枚と左2枚の明るさが違うので、もっとバラバラにシャッフルしてもよかったんじゃないでしょうか。
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竹沢確かに不完全なのですが、実は見る側に委ねられているような気がするんです。5枚の中にいろいろな要素があって、実際はどのようなストーリーか分かりませんが、5枚から僕の中でいくつもストーリーが浮かんできたんです。それも組写真の面白さですよね。
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立木組写真って、その中の1枚とか2枚に惹きつけられて、その世界の中に入り込める場合がありますよね。そのとき、ストーリーを想像させやすい並び方にして作者の思いを伝える方法もあるし、並びとか関係なく、その数枚から感じる雰囲気をなんとなく味わうものもある。
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前川そうですね。このおばあさんは家族なのか、近所の人なのか分かりませんが、このおばあさんに対する思いが5枚すべてに写っていると思います。
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立木最近は、こういう作品が増えているのかな。理系と文系で言ったら、文系の写真というか。理詰めでなく、自分の感情を写真にして、それが伝わるときもあれば、伝わらないときもある。
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竹沢今回、アンダー30部門の応募作品を見て考えたことは、これから写真を撮り続けたいと思っている人たちの気持ちを応援したいということなんです。やっぱり、ほかの部門に比べたら完成度が低いものもありますが、今はそこまで完成度を求めず、撮りたいものを自由に撮ってほしいんですよね。でも、僕よりも若い人たちがいっぱい写真を撮っていて、それがこんなにたくさんいるなんて、うれしくなりました。だから、とても楽しく審査することができました。