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グランプリ 第51回キヤノンフォトコンテスト

グランプリ

『砂の造形』佐々木弘紀(佐賀県)

受賞者の声

同じ姿を二度と現さない砂模様に魅せられて
グランプリの通知をいただき夢のようでびっくりしております。この作品は大分県の波当津海岸で撮影したもので、干潮時に多様な砂模様が現れ二度と同じ模様が出ないことに魅せられ、13年前から通い続けています。ただ、近年、自然破壊が進む中、この砂浜もいつまで模様が見られるのか心配です。将来いつまでも変わらないことを願ってやみません。今後も楽しく撮影を続けていきたいです。審査していただいた先生方に厚く御礼申し上げます。

講評:自然が作る造形を独自の視点で切り撮ったグランプリ作品

  • 石橋
    今年のグランプリに輝いた「砂の造形」は、タイトルにある通り、その造形が面白く感じました。しかも、モチーフに合わせたプリントも実に巧みで、モノトーンでまとめながら、非常にメリハリの効いた構成になっています。
  • 水谷
    確かに砂がつくる造形が目を引きますね。それをシンプルにまとめたため、芸術性の高さも感じられます。
  • ルーク
    着眼点が面白いですね。それを1枚で勝負するのではなく、5枚でまとめたところも成功していますね。
  • 水谷
    水がつくり出した模様ですが、海岸を歩いて、よく目を止めました。
  • 前川
    モチーフとしては珍しいものではないと思うんです。けれど、独自の視点で追求した部分が感じられ、そこが見る人の心を打つ作品につながったのではないでしょうか。
  • 横木
    そうですね。作者ならではの視点が感じられます。中でも、上中と下左の茶色がかった色合いが特にいいと感じました。
  • 石橋
    その2枚だけ少し色が違うんですよね。あえてそうしているのかな。
  • 横木
    違うときに撮った写真か、プリントで色を変えたのかもしれません。
  • ルーク
    実際はもっとたくさんの写真があったのでしょう。その中から、この5枚を選んでいると思います。
  • 横木
    そうですね。造形が魅力の作品 ……とは言っても自然がつくり出した造形なのですが、それだけでなく海藻を入れたところに、フォルムの美しさだけに頼らない作者のセンスを感じました。
  • 竹沢
    僕はこの作品を見たとき、もっと大きく引き伸ばしたいと思ったんですよ。情報量が少なく、ある意味抽象性が高いので、2年、3年、5年と長く見続けられる作品だと感じました。
  • 立木
    日本的な印象も受けますよね。この作品もそうですが、風景写真って横位置の写真が多いじゃないですか。でも、日本人のDNAには、もともと床の間の掛け軸のように縦位置の感性が入っているから、この中に1~2枚縦位置を入れても面白いと思いました。ただ、非常に小さな世界の、街など人工的なところにはないものが写っているのが面白いし、そこに海藻を入れたところがまたいい。
  • 石橋
    海藻の存在が大きいですね。
  • 竹沢
    そうですね。人工的ではない、自然がつくり出したテクスチャだから、僕は大きくしたいと思ったし、目に馴染むので長く見られると感じたんです。
  • 立木
    写真って、もっと広いところを撮りたいと思いつつ、興味の抱いたものに寄っていく性格がありますよね。そういった意味で、この作品は、自然がつくった造形に目を止めた作者の興味が如実に表れていると思います。
  • 前川
    そうですね。作者の自然をくまなく見つめる探究心が、この5枚の組写真をつくり上げていると感じました。