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私の愛すべきもの  #04 空気 写真・榎並 悦子

私の愛すべきもの #04 空気 写真・榎並 悦子

忙しさに追われ、
気づけば呼吸も浅くなっていた。
吸い込む空気が少ないと、
心の空気も滞る。
そんなときは、
新鮮な空気をたっぷり取り入れて
淀んでいた空気を循環させてみる。
新鮮な心に
着替えられそうな気がするから。
私は、私が立て直す。

1 素敵な大人でいるために。

ありのままでいられる
場所は意外と少ない。

最近は、社会人として
仕事の責任も大きくなってきた。
後輩の前で弱音も簡単には吐きたくない。
空気を読んで、自分のなかに
留める言葉も多くなる。
悩みや心配は尽きないし、
未だに失敗もするけれど、
引きずっている暇はない。

落ち込むことで、
得られるものは何もない。

イヤなことは
さらりと忘れて
笑っているほうが
ずっと素敵だ。

空気はいつから
読むものになっていたんだろう。

2 心の空気を入れ換える。

本来の自分を
取り戻す感覚。

人生を泳ぎ続けるためには、
たくさんの酸素が必要だ。
心の空気が足りなくなったら、
新鮮な空気を取り込みに行く。

心が素直に
ひらいていく。

空気を取り込むなら
自然が豊かな
場所がいい。

日常から解放されて
呼吸が深くなるから。

予定や時間を決めず
心のおもむくまま
過ごしたい。

自分を縛っているのは
自分だったりするから。

自分をリセットできる
お気に入りの場所を
持っておきたい。

太陽と海と風と私。

心の拠り所があると
人は強くなれるから。

3 思い出す、よろこび。

時とともに
記憶は色褪せていく。

今感じている空気は、
この瞬間、この場所にしかない。
時間が経っても忘れたくないから
私は、フルサイズを手にする。

フルサイズが
教えてくれたのは、

目には見えない音や香り、
空気感まで被写体になる。

思い出すことの
面白さとよろこび。

日常に戻った私に
写真は心地よかった空気を
蘇らせてくれる。

新しい空気を胸に、
私はまた前を向く。

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榎並 悦子Etsuko Enami
京都市生まれ。学生の頃より写真家・岩宮武二、高田誠三両氏に師事。大学卒業後、岩宮武二写真事務所を経てフリーに。「一期一会」の出会いを大切に、人物や自然、風習、高齢化問題など幅広いフィールドをしなやかな視線でとらえ続けている。写真集にパリの街角をモノクロでとらえた『パリの宝石箱 Bijoux de Paris』、『園長先生は108歳!』ほか。写真集『Little People』で第37回講談社出版文化賞写真賞受賞。
  • #01 時間 写真・鶴巻 育子
  • #02 暮らし 写真・鈴木 さや香
  • #03 今 写真・小澤太一
  • #05 ファンタジー 写真・鵜川 真由子
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#04 空気 写真・榎並 悦子
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2020-07-09