審査員が語る入賞へのアドバイス 第50回キヤノンフォトコンテスト
自由部門
審査員:公文 健太郎
1981年、兵庫県生まれ。1999年からネパールを舞台にドキュメンタリー写真を撮り始めた。雑誌、書籍、広告で活動しながら、国内外で人の生活をテーマに作品づくりを続けている。著書、写真集は『大地の花』『BANEPA』『ゴマの洋品店』 など多数。
明確な狙いがない写真は多くの作品に埋もれてしまう
写真コンテストの審査では、一度にたくさんの写真を見ます。特に自由部門は種類や作品の狙いもさまざまなので、その中でどうアピールできるかが重要です。写真が歌ったり、踊ったりしてアピールしてくれるわけではありませんから、作品そのものが主張し、語らなければいけません。 そこで大切なのは、「何を見せたいのか」をはっきりとさせること。何に感動したのか、どこを面白いと思ったのかを意識して作品を仕上げましょう。狙いが中途半端で散漫な印象になっているものや、狙いから外れた表現では、たくさんの写真に埋もれてしまいます。ここでは、私が作品を撮るときに意識している3つのポイントを紹介します。
Point1 ストーリーを感じさせる
写真は一瞬を切り撮る表現と言われています。これは瞬間をカメラに収めるという意味であると同時に、その一瞬にたくさんの時間を凝縮するということでもあります。一枚の写真で前後のストーリーを想像させる写真は優れた作品です。 ポイントは、ストーリーの最高潮を狙わないこと。盛り上がりの決定的な瞬間を撮らないことで、見る人の想像力をかき立てるのです。例えば、祭り写真では、準備風景や終わった後の痕跡を撮るのも、こうした表現の一つです。
南仏の家庭のダイニングテーブルです。これから家族や友人が集まって温かい会話が弾むのでしょう。そんな瞬間を見る人に想像してもらえればと思い、あえて人がいない光景を撮りました。
ワイナリーでボトルにラベルを貼る男たち。ワイン造りというと、ブドウの収穫風景や樽が並ぶワイナリーを撮ることが多いですが、ほかの人がカメラを向けない瞬間も物語になります。
Point2 関係・会話のある写真
カメラを持って旅に出ると、少し勇気が湧いてきます。カメラがなければ会釈だけで通り過ぎる人との出会いに、会話が生まれるのです。それを素直に写しましょう。言葉のやり取りは写りませんが、被写体の人となりに加え、撮影者がどんな人なのかも写り込みます。こういう場合はテクニックに頼らず、素直な表現を心がけましょう。ライブビューを利用して、ファインダーから目を離して相手の目を見て話すと良好な関係づくりにつながります。
漁港で出会った男性。魚のことをたくさん教えてもらいました。海の男らしい渋い声が印象的でした。ちょっと強面で、こちらも少し緊張しているのが伝わるでしょうか。
柿農家のおばあちゃんに出会いました。たわわに実った柿を見せるため、周囲を入れて撮影。おばあちゃんのうれしそうな表情を引き出すことで、実りの喜びを表現しました。
Point3 環境の面白さを見せる
写真は「切り撮る表現」です。限られた画角の中に目の前の光景を写し込むとき、一つずつ無駄を排除していくことで主人公を引き立てるのです。ただし、全く逆に考えることもあります。主人公の周りに広がる情報をたくさん入れることで、その場の環境や時代性、匂い、音などを写し込むことができるからです。被写体と向き合うときはよく周りを観察し、必要に応じて1歩2歩下がってみましょう。
ブラジルの土産物屋で出会った女性です。店の裏でひと休み。トイレの入り口に腰かけて、おいしそうに昼食を頬張ります。便器と女性の組み合せの面白さを狙ってみました。
横位置で撮った写真も面白くはありましたが、少し引いて周りを入れることにより、座っている場所の狭さ、古びた扉の風合い、昼下がりの光が表現できました。
生きもの部門
審査員:福田 幸広
1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒。タンチョウに憧れて動物写真家になり、野生動物、水中、風景をテーマに作品を発表している。写真集、著書は『動物たちのしあわせの瞬間』『うさぎ島』『おしりポケット―ウォンバットのあかちゃん』など多数。
生きものとそれを育む環境を愛情を持ってとらえてほしい
コンテストには、生きものへの愛情に溢れた作品を応募してほしいと思っています。入選のために撮影したものではなく、生きものが好きという思いで撮影した作品を見たいです。 私の選考基準は、生きものとそれを育む環境が一体となった作品かどうかです。生きものは単なる被写体ではなく、それぞれが日々、一生懸命に暮らしています。紳士的に彼らと向き合い、「生きた証」が作品に写し出されているかどうか、十分に検討してください。 一生懸命に撮影した作品に上手下手はないと思っていますが、作者の思いは作品に現れます。特殊なレタッチなどせず、ありのままの作品を送ってください。ただし、ピントや露出が合っていることは最低限のルールです。思いの伝わる作品をお待ちしています。
Point1 ピント位置を意識する
ピントの位置やピントの合う範囲をコントロールするのは、写真の面白さの一つです。しかし、特別な意図がない限り、生きものの撮影ではピントは目に合わせるのが基本です。写真を見たとき、人は自然と被写体の目を見るので、そこにピントが合っていないと違和感を覚えてしまうからです。複数の生きものを撮る場合は、メインとなる被写体の目に合わせましょう。このチェック項目は重要です。
ウォンバットの親子を撮ったものですが、主題は手前のウォンバットです。主題の両目が見えている場合は、手前の目に合わせるのが基本です。
木を下りてきたニホンリスを慌てて撮影したため、わずかにピントが目から鼻の位置にずれています。応募作品をセレクトするときには十分な注意が必要です。
Point2 動きを加える
作品の選定基準に、「生きものの動きが感じられるか」を加味してください。大きなアクションの必要はなく、生きものの特徴をとらえた動きであればいいと思います。「静」がテーマでも、わずかに手が動き出した瞬間などをとらえれば、見る人には大きな違いとして伝わります。コンテストでは、画質優先でISO感度を低くしたため、被写体ブレを起こしている作品をよく見ますが、動きとブレは違います。
背景が単調で、普通に撮影するだけではつまらないシーンだったので、スローシャッターを使いました。意図的にぶらしの効果を狙って撮った一枚です。
ヘビウが巣材を運んでいました。普通は首をまっすぐに伸ばして飛翔しますが、巣材が重過ぎたようです。滑稽なシーンを狙いました。
Point3 周辺を入れて季節感を出す
日本には美しい四季があり、それぞれに特徴的な色があります。季節感を出すためには、表現したい色が再現されているかどうかがセレクトのポイントです。生きものの特徴をとらえたアップの作品もいいものですが、生きものと四季の風景とのコラボレーションは見る人を魅了します。撮影地の特徴的な色や背景を折り込んだ作品を選びましょう。もちろん、海外で撮ったものでもかまいません。その国の季節や気候が感じられる作品を選んでください。
アナグマが日向ぼっこのために穴から出てきました。わずかな芽吹きを画面に入れて、春の雰囲気を演出しています。
若いニホンザルが激しい遊びをしている最中です。草が大きく伸びて、サルの頭が毛変わりをしている様子で季節を表しています。
奈良公園の秋は赤や黄色が鮮やかで、シカの暮らしと一緒に撮影できます。赤の印象をより強く演出するため、朝日の当たる時間に撮影しました。
雪は寒い冬を演出するのに最適なものですが、撮影に適した大粒の雪が降っている時間は意外と短いものです。雪の撮影では背景選びが重要になります。
Point4 縦位置・横位置の決め方
私は横位置で撮影を開始することを基本としています。生きものの撮影では、出合いの瞬間からいかに早くシャッターを切れるかが成否を分けるため、通常は撮影体勢の取りやすい横位置で撮影を開始することになるからです。その後、余裕があれば縦位置で撮影することもあります。縦と横のどちらが正解かという答えは非常に難しいものですが、伸びやかに見える構図をチョイスすればよいと思います。
木陰に身を隠してクルミを食べるニホンリスを見つけました。横位置で撮影を開始。引き気味の構図で森の広がりを演出しました。
クルミを食べるているときはゆっくりと撮影ができます。縦位置では木の高さが演出できるといいと思います。この場合は縦横どちらも正解と言っていいでしょう。
スポーツ部門
審査員:高須 力
1978年、東京都生まれ。2002年に独学で写真をはじめる。JCII主催「水谷塾」3期生。サッカーを中心にさまざまな種目を撮影している。ライフワークとしてセパタクロー日本代表を追いかけている。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。
撮影前にじっくり観察して動きをイメージしておく
スポーツ写真の醍醐味は、プロ・アマ問わず選手が繰り出すダイナミックな動きにあります。撮影前に動きをイメージしておくことが大切です。まずは選手をじっくり観察しましょう。選手の感情の発露にも注目してほしいと思います。また、背景や、屋外なら光線状態も確認したいところです。 撮影時のコツとして、ズームレンズを使う場合は望遠端か広角端を使うことをおすすめします。こうすることでズーミングに気をとられることがなくなり、シャッターチャンスに集中できます。被写体が大きくなり過ぎることもあると思いますが、常に全身が写っていなければいけない理由はありません。思い切ったフレーミングが作品に力を与えてくれるはずです。
Point1 瞬間を狙うコツ
被写体の動きが速いスポーツでは連写が有効だと思われていますが、この写真のようにミートの瞬間を狙う場合は、選手の癖やレリーズタイムラグを考慮した上で、一枚撮りを心掛けてください。走っている被写体を追いかける場合は、フォームに合わせてリズムよくシャッターを切ることがコツとなります。
セパタクローという競技のサーブ。つま先がボールに当たる瞬間を狙いました。サーブは試合中に何度も見られるので、一枚撮りで感覚を調整しながら繰り返し挑戦します。
Point2 背景処理の工夫
撮影ポジションを決めるときは、背景を意識してください。よい瞬間が撮れても背景がゴチャゴチャしていては台なしです。高い位置の客席から撮るのも一つの手です。また、低い位置に座って撮ると、屋内であれば暗く落ちる客席を、屋外であれば空を背景に利用することができます。
狭い体育館は背景処理が難しいロケーションです。客席から床をバックにするか、フロアに降りられる場合は座って、なるべく低い位置からローアングルで撮ると、暗く落ちる背景を利用できます。カメラ位置の高さにメリハリをつけることで、写真のバリエーションが増やせます。
Point3 選手の気持ちに注目する
選手の気持ちの動きにも注目してほしいと思います。喜んでいるときもあれば、悲しんだり、集中力を高めていたり、スポーツの現場にはありとあらゆる感情が溢れています。一人の選手を追いかけてじっくり観察し、その選手になりきったつもりで撮ってみるのも面白いかもしれません。
選手の表情や感情の動きもシャッターチャンスです。表情を狙う場合は、どのタイミングで変化するか予測がつかないので、連写が有効です。
風景部門
審査員:福田 健太郎
1973年、埼玉県生まれ。幼少期から自然に魅かれ、18歳で写真家を志す。竹内敏信氏のアシスタントを経て、1994年フリーランスの写真家に。自然を通していのちの輝きを見つめ続けている。写真集『泉の森』『春恋し-桜巡る旅-』など。写真展多数開催。
作者の想いが感じられる作品を期待
フォトコンテストの審査をするときは、作品に写し出された風景の魅力を見るだけでなく、作者の想いを感じ取ろうと常に意識しています。作者の想いが強く、それが高らかに聞こえてくるような作品はもちろん、ささやくように繊細に表現された作品でも、そこに込められた想いを敏感にキャッチしたいと思っているのです。 そもそも、目の前の風景を切り撮ってシャッターを切るのは、何か心惹かれるものがあったからでしょう。その心の震えを写真で伝えるために必要なポイントは、「光を読むこと」「一瞬の輝きを逃さないこと」「シンプルなフレーミングを心掛けること」です。さらに、作品の最終形であるプリントの完成度も重要です。丁寧に仕上げられた作品をお待ちしています。
Point1 よい光を意識する
太陽が光源となる自然風景では、天候や時間帯によって光の方向や質、色が変わります。例えば、朝夕の斜光線は風景に陰影を生み、ドラマチックな写真が撮れます。また、曇天の均一で柔らかい光は、落ち着いた雰囲気を出したいときに向いています。思い通りの天候にならなくても、光を選べば印象的な風景を写し撮ることはできるはず。イメージに合ったよい光を意識することが大切です。
冬の重たい雲が通り過ぎると、夕方の光が砂丘を照らし出しました。低い斜光線が幸いして風紋がくっきりと浮かび上がり、印象的な風景が撮れました。
雲間の光が紅葉の山腹を照らし始めた瞬間を写したものです。画面内に暗い部分を取り入れることで、太陽の光に輝く紅葉をいっそう鮮やかにしています。
Point2 一瞬の輝きをとらえる
風景は動かないため、ゆっくり落ち着いて撮るものと思われがちですが、決してそうではありません。分かりやすいのは日の出、日の入りのシーンでしょう。太陽の動きは思いのほか速く、風景を染め上げる光の色も刻々と変わっていきます。雨上がりに出現しやすい虹も、水面の揺らめきも、同じように見えて実はどんどん変化していきます。ベストなタイミングを見極め、一瞬の輝きを逃さないことが、風景撮影の醍醐味といってよいでしょう。
稜線に隠れようとしている夕日と山岳風景です。湧き上がる雲が勢いよく流れるなか、雲がベールとなって太陽の輪郭を際立たせ、遠くの山が見えた一瞬をとらえました。
雨がやんだ直後、太陽とは反対方向に虹が出てくれました。いつ消えるか分からない虹ですから、桜と組み合せて撮れるポジションを素早く探してシャッターを切りました。
Point3 シンプルなフレーム
目の前の風景を漠然と写しただけでは、残念ながら何に心惹かれて撮ったのかが伝わってきません。それを見る側に伝える手段の一つは、画面を整理することです。主役と脇役を決め、その配置と空間の配分を考えて、シンプルなフレーミングで撮るのです。見る人のイメージを膨らませるような撮り方も面白いとは思いますが、まずはシンプルに整理され、自分自身が心地よいと感じるフレーミングで撮影することを第一に考えましょう。
みずみずしい自然の姿が、この作品のテーマです。白濁した流れと鮮やかな緑のバランスを考えて構成しました。
対岸の紅葉はあえてカットしました。水面に映り込む彩りで季節感は伝わり、周囲に広がる紅葉風景を想像する余地が生まれます。
冬の静寂感を描写したかったので、ポツンと佇む一本の木を画面右上にさりげなく配置しました。空間を大切にしてフレーミングした一枚です。
乗り物部門
審査員:櫻井 寛
1954年、長野県生まれ。高校時代に鉄道写真に魅せられ、日本大学芸術学部写真学科へ。1990年よりフリーランスの写真家となり、90カ国以上で鉄道を撮影している。1994年に『鉄道世界夢紀行』で第19回交通図書賞受賞。写真集、著書多数。
乗り物は趣味性が高い一方身近な被写体でもある
鉄道、飛行機、船、車などの乗り物は、非常に趣味性の高い被写体といえます。私は鉄道写真が本業ですが、実はあらゆる乗り物が大好きです。超音速旅客機コンコルドのラストフライトに乗り、女王陛下の豪華客船クイーン・エリザベス2で大西洋を横断し、モータースポーツの頂点F1の撮影も経験しました。カメラもキング・オブ・ホビーの一つですが、その被写体が乗り物の場合はキング・オブ・ホビーの二乗といってよいでしょう。 一方、あらゆる乗り物は身近な被写体でもあります。鉄道写真なら、わざわざ特別運行のスペシャルトレインを狙わなくても、周囲にいくらでも走っているはず。身近なところで撮影できるのも、乗り物写真の魅力です。
Piont1 カッコよく撮る
大好きな乗り物は、何よりカッコよく撮ってほしいと思います。乗り物だからといって、特殊な撮影分野ではありません。例えば、女性のポートレートのように、一番素敵に見える角度から、最高の表情をしている瞬間にシャッターを切ることが大切です。モデル撮影なら、ファインダーをのぞいている間は、ずっと女性の表情を狙い続けますよね。乗り物写真もそれと同じこと。どの場所から、どのように撮れば一番カッコよいかを素早く見極めるのが、コツといえるでしょう。
日豊本線、杵築の橋梁上を疾駆する白い「ソニック」です。広角レンズで、列車が大空に飛翔するようなイメージで撮影しました。純白の車体が青空によく映えます。
停車中の「ななつ星」。漆黒の空がコバルトブルーに変わる時間帯を狙って撮影しました。
Point2 愛のある情景
列車の走行シーンばかりが鉄道写真ではないはずです。駅やプラットホームでは、まるで映画のワンシーンのような愛のある情景を見かけることも少なくありません。鉄道写真に限らず、あらゆる撮影で一番大切なことは愛情だと私は思っています。カメラにも、被写体にも、あらゆるものに愛を注ぎましょう。ただし、駅構内はスタジオではありません。撮影マナーも、もちろん大切です。
パリのリヨン駅で見かけたほほ笑ましいシーン。スナップは瞬間的に撮らなければなりません。人物の位置や列車がカッコよく見えるアングルなどにも目配りを。
夜明けのホームで汚れた窓を拭く乗務員。列車への愛情が伝わってくるシーンです。撮影場所は左の写真と同じ駅。同じ場所でもまるで違う作品になりました。
審査員:チャーリィ古庄
1972年、東京都生まれ。旅客機専門の航空写真家。国内外の航空会社、空港などの広報宣伝写真、航空雑誌の取材などを行っている。写真集『WORLD JET TOUR』など著書多数。最も多くの航空会社に搭乗したギネス世界記録を持つ。EOS学園東京校講師。
入選するコツの一つは審査員を驚かせること
航空関係のフォトコンテストでは、残念ながら一目見ただけで半数以上の写真が選外となってしまいます。その理由は、ピントが甘い、ブレている、ただ撮っただけで何も伝わらないなど。入選するコツの一つは、「審査員を驚かせること」だと思います。日頃から多くの飛行機写真を見ている審査員に、「どうやって撮ったの?」「どこで撮ったの?」「ナイスアイデア!」「よくこんなチャンスがあったな」などといわせる写真が入選するのです。 もちろん、色がきれいだとか、最高の条件で撮った一枚なども入選の確率は高くなります。また「元データはよいだろうに、プリントが残念……」という作品も見かけるので、プリントまで気を抜かずに仕上げてください。
Point1 晴天順光のひとひねり
晴天順光で撮るきれいな写真というのは意外と難しく、フォトコンテストでも応募はそれほど多くありません。つまり、晴天順光のきれいな作品は入選確率が高いといえます。もちろん、それに加えて最高の条件やひとひねりがないと審査員の目には留まりにくいでしょう。撮影場所や季節選び、天気と風向き、空の色、アイデアと粘りが大切で、それには何度も通うことが必要です。条件がそろったきれいな写真というだけでなく、ワンポイントのエッセンスで素敵な作品をモノにしてください。
5月では貴重な北風、雨上がりの青空、鯉のぼりと斜面に陽が差す短い順光の時間。こんな条件で適度な風が吹き、鯉のぼりがなびいたときに、大きい機体がよい位置で上がりました。
個性を出そうと広角レンズを使用。菜の花をメインに桜も入れ、あえて日の丸構図で機体を中央に置きました。
Point2 夕景・夜景のひとひねり
フォトコンテストにおいて、航空写真は、晴天時に撮られた作品の応募が少ない一方で、夕景や夜景はわりと簡単にフォトジェニックな写真が撮れるため、多数の応募があります。ということは、人とは違う作品や、何かひとひねりのアイデアがないと入選は難しいということ。オリジナリティが感じられる場所やシチュエーション、定番ポイントなら千載一遇のチャンスを狙った方がよいでしょう。そうしたチャンスを狙うことも飛行機写真の楽しみですので、その中で撮られた作品をぜひ応募していただきたいと思います。
ヘルシンキ空港で撮影。滑走路を奥まで見渡せる大空港はあまりないので、新鮮な画作りができました。
きれいな夕焼け空に、成田空港B滑走路では貴重なジャンボ機が進入。シルエットで形を表現しながら、進入灯の橋桁を入れて遠近感を出しました。
ポートレート部門
審査員:古賀 絵里子
福岡県生まれ。上智大学を卒業後、フリーランスの写真家となる。2016年に「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭」にて新作『Tryadhvan』を発表。国内外で個展、写真展を多数開催。フランス国立図書館、清里フォトアートミュージアムなどに作品が収蔵されている。
生き様や存在感が伝わってくるような写真
私がポートレート撮影で大切にしているのは、相手に対してまっさらな気持ちで向き合うことです。そして、相手の何に感動し、どうしたらその感動や抱いた印象を写真にできるかを考えます。モノクロかカラーか、どんなカメラやレンズを選び、シャッター速度や絞りをどうするか。自分の伝えたいイメージが明確であれば、それらは自ずと決まってきます。 自分の気持ちを押し付けるのではなく、相手の本質を引き出せるよう、じっくりと被写体に向き合い、撮影してみてください。写真は自分を映し出す鏡です。表面的なものを超えたところにある、その人の生き様や存在感が写し撮られた写真が見てみたいです。撮影者の心の震えが伝わってくるような作品を期待しています!
Point1 何気ない日常を撮る
カメラを持って出かけることだけが作品づくりではありません。ふだんの何気ない光景にも目を向けてみましょう。自分自身や家族、近所の人たちなど、撮影対象は見方や考え方次第で広がります。また、他者の日常を撮るにしても、大切なのは撮影対象を通じて自分が何を伝えたいかを明確にすることです。
早朝のカンボジア郊外の村。おつかいに行くのか、お金を握りしめて家から出かける場面。子どもの目線で撮影しました。
貧しくはあるけれど、大好きな家族や動物たちとの暮らしは幸せそのもの。食事中にやって来た鶏の赤ちゃんをひょいと肩に乗せた仕草が愛らしい。
Point2 新しい機能に挑戦する
まだ試したことのない撮り方にも挑戦してみましょう。Wi-Fi機能のリモート撮影、三脚を用いたスローシャッター撮影、多彩なフィルターを使ったり、ブレやボケを狙ったり。新たな世界が広がって撮影の楽しさも増すと思います。表現の面白さだけでなく、撮影者の想いが伝わる強さを持った作品を選びましょう。
リモート撮影で、妊娠で変化していく自分の身体を撮影。あえてスローシャッターにすることで、時間と動きの偶然性を生かした写真になりました。
生後間もない娘と夫の腕を入れ、俯瞰でセルフポートレート。Wi-Fi機能を使ったリモート撮影なら、ライブビュー画面を確認しながら自分でシャッターが押せます。