このページの本文へ

動体部門 第59回キヤノンフォトコンテスト

動体部門

ゴールド賞

『Nemuru本線』星野 友宏(神奈川県)

受賞者の声

2024年、根室本線の富良野ー新得間は廃線となりました。多くの人が集まった場所も今は昔。雪に埋もれた線路は「眠るNemuru」ようにひっそりとしています。鉄道を撮り始めて十数年経ちますが、同じ景色に出合うことはありません。鉄道を撮ることは見えない記憶を呼び覚ますことであり、一つの記憶は新たな記憶と連鎖します。
このたびは名誉ある賞をありがとうございます。EOS学園の山﨑友也先生、GOTO AKI先生をはじめとする諸先生方、そして写友の皆様と家族に感謝いたします。

講評:過去と現在が入り混じる

  • 櫻井
    動体部門ゴールド賞「Nemuru本線」のテーマである根室本線は、函館本線と並ぶ北海道で最長の路線だったのですが、一部が廃線になってしまったんですよね。最初、一番右の写真は単なる雪原かと思ったのですが、実は廃線後のレールが埋まっているらしく、つまり、鉄道が生きていた時代と廃線になってしまった時代を組み合わせて一つの作品にしているんです。その発想が素晴らしく、今のローカル線事情を伝えるドキュメンタリー作品になっています。
  • 小澤
    撮影している時期が違うということですか?
  • 櫻井
    おそらく違うと思います。左から2枚目は現役のときの姿ですから。
  • 伊奈
    組写真にすることで現在と過去を複合的に見せているのが心憎いですね。ノスタルジックな雰囲気がありますが、それだけではないということが伝わり、櫻井さんの説明を聞いてすごく納得しました。こうした構成を思いついたところが作者の強みですね。
  • 小澤
    過去の動いているときの写真を組み合わせているのが本当に秀逸ですね。あと、動体部門にこれだけ動いていない写真を組み合わせて応募した心意気も高く評価したいです。ただ、静かだからこそ、動いていた時代に思いを馳せることがよりできますね。
  • 構成がすごく上手ですよね。列車が走っていた時代の写真を入れながら、最後はレールが雪に埋もれている情景で締める。しかも、いつ撮影したものか分かりませんが、待合室の写真を入れることで現役時代の活気を想像することもできます。4枚に寂しさと活気をうまく織り交ぜ、一つの物語を紡いでいることが素晴らしいと感じました。
  • 長島
    皆さんのお話を伺って分かることが多くて、正直、私にはどの写真が古く、どれが今のものなのか分からなかったのですが、一枚一枚のクオリティーが高く、さらに4枚が合わさることによって物語を感じる構成になっていて、とても魅力的に感じました。
  • 在本
    作品全体に強いストーリー性が感じられますね。寄り引きのバランスもよく、私も構成が上手だと感じました。私も道東にはよく撮影に行っていたのですが、この作品で根室本線という素敵な路線があったことを知りました。
  • 櫻井
    ちなみに、左から2枚目の写真が現役時代のものですが、この一枚だけでも十分に目を引く作品になっています。ツートンカラーの車両をあえてぶらし、非常に芸術性の高い一枚になっています。

シルバー賞

『光郭』中嶌 秀仁(神奈川県)
『リフレクション 』赤井 恒雄(愛知県)

ブロンズ賞

『またきてね!』谷川 るい(大阪府)
『窓いっぱいの初夏』石合 純夫(北海道)
『急降下』中西 克仁(和歌山県)

佳作

『奇景』 山田 全孝(岐阜県)
『アルプスの曲芸師たち』MATTWO(大阪府)
『白い壁』佐藤 茉利生(愛知県)
『ホームイン!!』とも(愛媛県)
『浮かぶ存在感』塚原 徹(東京都)