人物部門 第58回キヤノンフォトコンテスト
人物部門
ゴールド賞
受賞者の声
6月の終わりのある日。帰郷したその足のまま、姉の運転で祖母が入院する病院へ。父、母、弟が迎えてくれた。ベッドに横になる祖母の顔は小さくなっていた。体調を崩し、別の病院に入院中の父も駆けつけてくれていた。ゆっくりと時間が流れる。父に尋ねた。写真を撮ってもよいかと。この翌日、祖母は息を引き取った。享年102歳。「ほなな、気いつけて」台所に立つ祖母が優しくほほ笑んでいるようだった。
講評:人の人生を写し出した人物部門ゴールド賞
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望月人物部門ゴールド賞の「共時性-synchronicity」は、シリアスな状態なのかもしれませんが、私は、男性が少しニコッとしている表情が、この作品のキーになっていると感じました。だから、実際はシリアスな場面かもしれないけれど、私にはそう見えず。見る人にいろいろなことを想像させる作品だと思います。
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野村私も同じで男性の表情に惹かれましたね。その優しい眼差しをとらえながら、撮っている人が全体を包み込んでいるような印象も受けます。男性の気持ち、そして、作者の想いがまっすぐに伝わってくる作品です。
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ハービー人生の深さとか、人の運命というものを強く感じさせてくれる作品ですね。どんな人にも青春時代があり、ハンサムな人もキレイな人もみんなおじいさんおばあさんになっていく。そうして生きものの運命を感じつつ、そのときに、自分も周りの人も「いい人生だった」思えるような最期が迎えられるのが理想だとか、いろいろなことを感じさせる一枚です。
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岡本私も皆さんと同じ感想で、これまで何十年と共に過ごしてきた時間が、男性の表情やシャツのシワなどから滲み出て、さまざまな物語が想像できます。グッとくるものがあり、改めて「写真っていいな」と思いました。
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津留崎やっぱり私も皆さんがおっしゃったようなことを感じたのですが、男性の表情から、お母さんと一緒に過ごした時間を思い出しているような印象を抱きました。もう少し男性の表情が見たいという気持ちにもなりましたが、それ以上に写真全体から伝わってくるものが多く、非常に重たいけど、さまざまな考えを巡らせることができる作品になっていると思います。
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藤代私も見た瞬間にいい写真だなと思いましたね。そして、見ているうちに、だんだんと自分が男性の表情に同調していくというか、自分も慈悲深い感じになっていくような感覚がありました。この一枚があることで、写真を見た人が同じような気持ちになり、自分も親を看取るときには男性と同じような心でありたいといったことを感じさせる写真だと思いました。写真って残酷な部分や、見ていて痛々しく感じることもあるのですが、やっぱりこの作品のように、慈悲深い愛も伝えられるものだと改めて思いました。