自由部門 第58回キヤノンフォトコンテスト
自由部門
ゴールド賞
受賞者の声
驚きと感激でいっぱいのゴールド賞の受賞です。続けていて、よかったと心底思いました。このところ、諸般の事情で写真を辞めようかと思っていたとき「時間は自分で作れる」と写友に励まされ、初めてのカメラに夢中で我が家の犬を撮っていた頃を思い出しました。そこで、自宅近辺の清澄庭園に通い始めたところ、思いがけず都会の中にあって、時として夢かうつつか分からないさまざまな瞬間に出会いました。「不意に見え始めたなにかを発見する」そんな瞬間を再び求めて楽しみたいと思います。
講評:日常の中にある宇宙をとらえた自由部門ゴールド賞
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ハービー自由部門ゴールド賞の「そこにある宇宙」は公園で撮られた作品とのことですが、このようなドラマを発見する感性が素晴らしいです。左の写真は本当に夜空のようで、真ん中の写真も、鯉に焦点を当てるのではなく、脇役にして池の縁の造形を撮っている。さりげない日常の中から、これほどのビジュアルを探し出したところに、卓越したセンスを感じました。
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野村私はドラマチックに見えるまで少し時間がかかったというか、見たときに目に留まり、「何だろう」と考える時間があったんですね。だから、長く見ることができる作品といえますし、そうした魅力もあると思いました。
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望月何かを説明する具体的な描写を減らしているのが面白いですね。ただ、完全に抽象にしているわけではなく、鯉を入れるなど、ギリギリの抽象性を保っているのが素晴らしい。それぞれモチーフが変わっても世界観が統一されている点もよかったですね。
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岡本私はEOS学園の講師をしているのですが、よく公園などで撮影をするんですね。そうすると、同じ場所でも人によって写真が違いますし、同じ人でも日が違えば写真が変わる。きっと、作者も別の日に公園に行けば、また一味違う世界を見せてくれると思うんです。そうした写真の面白さを教えてくれる作品だと感じました。
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津留崎公園でこのような写真が撮れるというのが、本当にすごいですね。私だったら、どこか秘境に行って、こうした情景を探しだすのだと思いますが、作者にはあらかじめ頭の中に具体的なイメージがあったのでしょう。だから、公園でもこのような情景を探し出し、自らのテクニックで作品へと昇華させています。それぞれ共通した世界観が素晴らしく、3枚を通して偉大な地球の存在感が伝わってきました。
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藤代皆さんもそうだと思いますが、やっぱり宇宙というキーワードが思い浮かんできますよね。公園に宇宙があるはずないけれど、カメラには「どこでもドア」になれる力があり、作者は公園の中に「どこでもドア」を置くことによって、宇宙に行きたかったのだと感じました。同じ景色を見ていても、それをどのように感じるか。この作品では、作者の心の中にある宇宙を感じると同時に、目の前の景色の一部を切り撮るなど、いろいろ工夫することで遠いところに繋げてくれるドアとしての写真の力を改めて感じました。