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グランプリ 第58回キヤノンフォトコンテスト

グランプリ

『ひみつ』ホシダシホ(神奈川県)

受賞者の声

なんてことない娘の一瞬にお目を止めいただいて、大変光栄です。ありがとうございます。片付け忘れたチーズをつまみ食いする姿。よくある光景ですが、その「日常」がとても美しかったことは生涯忘れません。親になってからというもの悩んだり不安になったりする毎日ですが、それ以上に日々を美しいと感じるようになりました。「君がいたから私の見る景色は美しかった」そんな遺言めいた親心がこの一枚から伝わればうれしいです。

講評:美しい光をとらえたグランプリ作品

  • 藤代
    グランプリの「ひみつ」は、日常の中でお母さんが娘さんを撮った作品ですが光がきれいですよね。おそらく、この光に反応してカメラを構えたのだと思いますが、そこに気づけたことが、作品の最大のよさだと思います。
  • 津留崎
    私も強い光の美しさが魅力だと感じました。それが少女の顔を直接照らしているわけではなく、回り込んだ光でアンダー寄りに顔が写っていることで、少女の気持ちが想像でき、さらに、暗闇の中にうっすらと浮かび上がる台所の様子が、この作品の雰囲気を盛り立てているように思いました。
  • 岡本
    パッと見たとき、母親の愛情とだけでなく、力強さのようなものも感じたんですよ。この美しい状況も素晴らしいですが、それをしっかりと写し止める作者の技量も高いですね。ぶれないように感度やシャッター速度をきちんと設定して、髪などのディテールを映し出しているし、周りの質感などもちゃんと写し込めています。
  • ハービー
    ママという立場で育児に専念しながら、美しい光に包まれた娘の姿が神々しいと感じられる写真家の眼を捨てていないのがいいですね。そうした感性を持ち続けているから、この光景を目にしたとき、瞬時に反応できたのでしょう。ほかの誰よりも自然体の姿が撮れるため、「子どもにとって、ママが一番の名カメラマン」という言葉もありますが、これからも写真家の眼を持ち続け、お子さんの成長を撮り続けてください。
  • 野村
    私も皆さんと同じで、やっぱり光が圧倒的にきれいだと感じました。ただ、私は母親の愛情というより、もう少しクールにこの瞬間を見つめているような印象を抱いたんです。自分の子どもを撮るというより、何かお芝居の場面のような、美しいシーンを切り撮り、さらに、子どもの方も、母親のカメラに応えようとするのではなく、別の世界を持っている。そうした関係がとても魅力的に思えました。
  • 望月
    露出を抑えて情報量を減らしながら、光を生かしてポイントとなる部分を見せるといった狙いが素晴らしく、それが自分の子どもに対してもできているので、かなり技術力が高いと感じました。アングルを下げているのもよかったですね。子どもと同じまで目線を下げたことで、子どもの表情から伝わってくるものがあります。