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グランプリ選考会レポート 2023年 第1回GRAPHGATE

Grand Prix Report

グランプリ選考会レポート

新しい可能性を秘めた写真・映像作家と出会うべく生まれた「GRAPHGATE」。
その初代グランプリを決める公開選考会が
11月25日(土)に行われました。
応募総数1,258名の中から一次選考、
二次選考を経て選出された
稲垣翔太氏、オカダキサラ氏、
奥田侑史氏、逸見祥希氏、宮田裕介氏の5名は、
この日、それぞれの想いを掛け、グランプリ選考会に挑みました。
会場には選考委員のほかに多くの観客も集まり、
その前で5名はプレゼンテーションを実施。
自身の作品に込めた想いや作家活動を始めたきっかけ、
どのように写真表現や映像表現と向き合っているのか、
そして、今後の目標などを語っていました。

「GRAPHGATE」初代グランプリに
逸見祥希氏が選出

作品の美しさや表現技法だけでなく、作家の想いを届けるコミュニケーション力といった“伝える力”を重視する「GRAPHGATE」では、選考方法にプレゼンテーションを行うオーディション形式を採用。9月に行われた二次選考会では20名がグランプリ選考会に向けて、プレゼンテーションを行いました。それからおよそ2ヶ月後、グランプリ選考会という舞台で多くの観客の前に立った5名は、「今後の作家活動と1年後のキヤノンギャラリー Sでの展覧会構想について」というテーマのもと、プレゼンテーションを行い、多くの人に自身の思いを届けていました。さらに、質疑応答の際も選考委員の問いかけにしっかりと応え、そのやりとりを通し、選考委員からこの2ヶ月間の成長を感じるといった言葉も出ていました。

5名のプレゼンテーションが終わり、別室に移って行われたグランプリを決める審議では、選考委員の誰もが一人を選出するのが難しく、「全員にグランプリをあげたい」という声も。それでも議論を重ね、そこでは作品やプレゼンテーションの内容だけでなく、写真・映像文化の未来を考えたときに、どのような表現が今後必要になってくるか、などといった観点も含めて協議が行われ、その結果、グランプリに逸見祥希氏が選出されました。

「エネルギー問題と変わりゆく日本の風景について
考えるきっかけになってほしい」

逸見氏の作品『(Un) acceptable Landscapes』は、山梨県北杜市の太陽光発電設備を撮り溜めた作品。市内に2,000基以上ある発電設備を巡り、ドローンによる俯瞰写真とともに夕陽や朝日などの光を受けて太陽光パネルが美しく輝く情景を切り撮りました。環境を守りながら人が生きていくために欠かせない再生可能エネルギーとしての太陽光発電。しかし、一方で、発電設備を設置するために失われていく土地。逸見氏はこの作品を通し、エネルギー問題と変わりゆく日本の風景について考えるきっかけになってほしいと語ります。選考では、これからの写真のあり方や未来を考えていく上で、逸見氏のこうしたアプローチや伝える力が高く評価され、グランプリに選出されました。グランプリが発表された直後、会場は大きな拍手に包まれ、その中で逸見氏は喜びを噛み締めていました。

グランプリを受賞した逸見氏には、賞金100万円が贈られるほか、3年間の機材サポートやテクニカルサポートを実施。さらに、2024年にキヤノンギャラリー Sでの個展が開催される予定です。また、優秀賞となった稲垣翔太氏、オカダキサラ氏、奥田侑史氏、宮田裕介氏の4名はキヤノンギャラリー銀座、大阪での巡回展を開催予定。個展開催の折は、ぜひ皆様も足をお運びください。

+++ グランプリ受賞 +++

逸見 祥希ヘンミ ヨシキ

グランプリをいただき、ありがとうございました。今までやってきたことを振り返り、長い道のりではありましたが、一つの形としてこのような結果を残すことができ感無量です。この作品は自分の思いだけではなく、今まで話を伺ってきた住民一人一人のための作品でもあると感じています。そして、それを発信する責任が私にあると思っています。今回、「GRAPHGATE」で評価していただいたことを糧に、もっと広い世界に発信し続けられる写真家を目指したいと思います。

選考員のコメント

  • 梶川 由紀氏

    グランプリを1人に決めるのは非常に難しく、できることなら5人全員にグランプリを与えたいという思いでの選考でした。二次選考のプレゼンテーションからグランプリ選考会まで、皆さんが本気で準備に向き合われたことが伝わってきました。その成長ぶりに驚くとともに、“伝える力”を重視する「GRAPHGATE」のグランプリ選考会にふさわしい最終プレゼンテーションだったと思います。けれど、ここがゴールではなく、「GRAPHGATE」の名の通り、今ゲートが開いたところです。この扉から飛び出し、それぞれの目標に向かって表現し続けてほしいと願っています。

  • 品川 一治氏

    5人とも本当に素晴らしく、難しい審議となりました。その中で逸見さんがグランプリに輝いた理由には、現在、写真表現を仕事にすることが難しくなりつつある世の中にあって、逸見さんのようにクリエイティブで社会課題を解決するというアプローチが、今後向かうべき一つの方向であると感じたからです。そして、そのような作家を応援することが、新しい可能性を見出す「GRAPHGATE」として、とても意義のあることだと思っています。また、優秀賞となった皆さんの作品も私は大好きですので、すぐにでも仕事を一緒にしたいという思いです。ぜひ、これからも表現を続けてください。

  • 千原 徹也氏

    一次選考から始め、長い長い選考でしたが、今は終わってしまうのが寂しい気持ちです。悩んだ末にグランプリは逸見さんに決まりましたが、優秀賞の皆さんともぜひ仕事がしたいと思っています。現在、社会が抱えている課題は多く、日々、課題解決を探しながら、その解決策によって新たな環境悪化が起こるといった矛盾も生じています。その状況に対し、声を大にする方法もありますが、その中で、逸見さんの写真を通して問題を解決したいという姿勢に感動しました。そして、その作品からは、美しさとともに寂しさを感じ、環境によいとされていることが環境を害してもいると状況を、見事に写真表現として昇華させています。今後、逸見さんがどのような世界を見せてくれるのか、期待しています。

  • 長野 智子氏

    今回、グランプリは逸見さんになりましたが、作品自体は、皆さんトップクラスの実力であり、その点において明確な差はありませんでした。その中でグランプリを決定づけたのは、芸術性を持つ写真によって社会課題の解決を試みるという逸見さんのアプローチと実践が、今後の写真界に大きな可能性を提示したと感じたからです。誰もが美しい写真を撮ることができ、生成AIで写真を創ることもできる時代にあって、作家はどのように表現を続けていけばよいか。おそらく、若い作家の中には逸見さんのようなアプローチを選ぶ人が増えていくと感じ、逸見さんの作品がその新しい扉を開くという意味で「GRAPHGATE」のグランプリにふさわしいと思っています。来年開かれる逸見さんの個展、そして優秀賞の皆さんの個展が素晴らしいものになることをお祈りしています。

  • 藤森 三奈氏

    グランプリとなった逸見さんのプレゼンテーションを聞いたとき、クリーンエネルギーと環境悪化と相反する状況に対し、迷いながら撮影に取り組み、それでも根本には撮影が好きという気持ちがあるという言葉が印象的でした。そうした気持ちがあるからこそ、このような作品が生まれたのだと思いますし、今後も撮影を続け、私たちにいろいろな想いを届けてほしいと願っています。数年後に今年の夏を思い出すとき、きっと、膨大な量の作品を見た今回の審査を思い出すような気がしています。大変でしたが、今思えば、とても楽しい時間でした。グランプリの逸見さん、優秀賞、佳作の皆さんと出会えたことがうれしく、これからもお付き合いが続くことを願いながら、皆さんの活躍する姿が多く見られることを期待しています。

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