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PRO-G2を選ぶ理由(後編)

公開日:2025年10月31日

imagePROGRAF PRO-G2は、プロやハイアマチュアのフォトグラファーに向けた、PRO LINEシリーズのA3ノビ対応インクジェットプリンターです。前編に続き、後編では、ファインアート紙でのプリント表現を中心に導入によるメリットなど、その実力に迫ります。

ファインアート紙による多彩なプリント表現

バライタ紙、画材紙、和紙といったファインアート紙による多彩なプリント表現を楽しみたいならば、顔料プリンターのPRO-G2が有利と言えるでしょう。他社製の用紙もラインアップが豊富です。キヤノン純正紙にはない個性的な用紙も多く、PRO-G2での高画質プリントをさらに満喫できます。それらに最適なプリントモードがPRO-G2のプリンタードライバーに用意されていて、印刷設定の[用紙の種類]で選ぶだけで、用紙の特性を生かしたプリントを手軽に仕上げられます。他社製の用紙については、「あなたの写真が変わるプリント講座」の中級編のLesson 14「プリント用紙の選び方」でも紹介しています。

また、お気に入りの他社製用紙は、「Media Configuration Tool」(メディア・コンフィグレーション・ツール)で既存の用紙情報をカスタマイズしてプリンターに追加すると便利です。その方法については、中級編のLesson 15Media Configuration Toolで用紙情報を管理」を参考にしてください。

用紙の特性に合わせたプリントモード

PRO-S1PRO-S1 Mark IIには印刷設定の[用紙の種類]に[バライタ紙]のプリントモードがありません。[フォト用紙(厚口)]を選ぶなど、他社製用紙のパッケージや用紙メーカーのウェブサイトでどの設定が最適なのかを確認する必要があります。ICCプロファイルと一緒に用紙情報ファイル(Media Information File.am1xファイル)が配布されている場合は、前述のMedia Configuration Toolでプリンターに追加すると良いでしょう。

 バライタ紙

バライタ紙

ハーネミューレ ファインアート バライタ

色や階調の再現性など、バライタ紙のプリント品質は染料プリンターより顔料プリンターのほうが優れている傾向です。その多くは半光沢なので、PRO-G1やPRO-G2ではクロマオプティマイザーが使われます。バライタ紙の中でも平滑性が高いものは、前編で解説した光沢感の低下やブロンズ現象などが生じやすくなりますが、クロマオプティマイザーが効果的に働き目立ちにくくなっています。
ハーネミューレの「ファインアート バライタ」は艶やかな光沢とテクスチャーのある面質が特徴のバライタ紙で、紙色が明るめなのでハイライトが際立ちます。砂浜や波打ち際などは、PRO-S1 Mark IIは明るめで抜けが良くなっていますが、シャドウは暗く落ち気味です。そのためコントラストが高めの仕上がりです。PRO-G1やPRO-G2のほうが元画像に近い印象で、コントラストや彩度など全体的なバランスも良好です。PRO-G1は海の青や草の緑の発色がやや冴えない感じですが、PRO-G2は色が濁ることなく自然に再現しています。

バライタ紙

バライタ紙

キャンソン・インフィニティ プラチナ・ファイバー・ラグ

キャンソン・インフィニティの「プラチナ・ファイバー・ラグ」は滑らかな面質のバライタ紙で、紙色は自然な明るさです。PRO-S1 Mark IIはこの用紙の光沢感がそのまま生かされていますが、シャドウがつぶれ気味であるなどややコントラストがつき過ぎています。PRO-G1はわずかに硬い調子で、中間調が平面的に再現されるなど、空や水の表情が大人しい感じに見えます。PRO-G2はこの光景の奥行きや立体感をうまく再現し、柔らかく優しい階調豊かなプリントに仕上がっています。

画材紙

画材紙

キャンソン・インフィニティ ラグ・フォトグラフィック

画材紙(洋紙)はマット系のファインアート紙です。光沢系とマット系のどちらのタイプの用紙も、PRO-S1 Mark II1つしか搭載されていないブラックインク(BK)で印刷します。これに対し、PRO-G1PRO-G2は光沢系がフォトブラックインク(PBK)、マット系はマットブラックインク(MBK)と、2つのインクを使い分けます。それぞれ専用のノズルを装備し、使用する用紙に応じて自動でノズルを選択。これによりインクの切り替え時間と消費を抑制でき、プリント作業を効率良く行えます。

キャンソン・インフィニティの「ラグ・フォトグラフィック」は、ウルトラスムース面質の柔らかく滑らかな手触りの用紙です。紙色は自然な白さですが、PRO-S1 Mark IIは全体的にやや沈んだ感じの色調です。PRO-G1は深みのある緑が印象的ですが、わずかに明るめのPRO-G2のほうが元画像に近い鮮やかさや透明感があり、右上の遠景と同化せず奥行きも感じられる仕上がりです。

画材紙

画材紙

三菱王子紙販売 ピクトリコプロ・ファインアートラフ

三菱王子紙販売の「ピクトリコプロ・ファインアートラフ」はテクスチャー面質の用紙です。「ラグ・フォトグラフィック」で使用した写真だと、絵柄と用紙の凹凸が混ざり合ってうるさく感じられたり、ディテールに目を向けづらくなるでしょう。でもこのような写真ではそれほど気にならず、テクスチャーにより立体的な見え方になります。紙色が明るいこともあり、いずれも透明感のある仕上がりです。PRO-S1 Mark IIはインクが染み込むため、濃度の高い部分はつぶれやすく少し重い感じになる傾向。ハイキーに仕上げたいときなど、そのあたりを計算に入れて調子を整えると良いでしょう。PRO-G1はやや濃度が高めで、色転びも見られるため微調整が必要でしょう。PRO-G2は明るく爽やかな雰囲気で、元画像に近い仕上がりです。

画材紙

画材紙

キヤノン プレミアムファインアート・ラフ

キヤノンの「プレミアムファインアート・ラフ」もテクスチャー面質の用紙で、「ピクトリコプロ・ファインアートラフ」より凹凸が強めです。この写真ではほんのわずかですがPRO-S1 Mark IIはグリーン、PRO-G1はマゼンタに色転びしていて補正が必要です。PRO-S1 Mark IIはブラックとグレーに加えてライトグレーのインクも搭載しているので、全体的に階調豊かな感じ。シャドウが暗めに再現されてつぶれ気味なので、少し明るめに調整すると良さそうです。ややあっさりした調子のPRO-G1に対し、PRO-G2は黒が引き締まっているなど重厚感があり、イメージ通りの仕上がりです。

和紙

和紙

アワガミファクトリー 竹和紙

画材紙(洋紙)と同じく和紙もマット系のファインアート紙です。アワガミファクトリーの「竹和紙」は、その名の通り竹が原料です。絹のような手触りで、柔らかな風合いを生かしたプリント表現が楽しめます。紙色は自然な明るさで、やや温かみが感じられます。PRO-S1 Mark IIはコントラストが控えめであっさりした発色。像もやや不鮮明です。PRO-G1は十分にシャープな印象ですが、やや浅めの仕上がりです。PRO-G2はインクがしっかり乗っていてプリントも鮮明です。色や階調の再現性も元画像に近い印象です。

和紙

和紙

アワガミファクトリー 楮(厚口)白

アワガミファクトリーの「楮(厚口)白」は、楮の繊維の荒々しさと美しさを併せ持つ和紙です。いずれも元画像よりプリントの濃度は少しあっさりした傾向です。PRO-S1 Mark IIはやや暗めでコントラストも控えめ。全体的に眠い調子です。PRO-G1はわずかに明るめで、コントラストはあるのですが、発色などは少し浅めです。PRO-G2のほうがコントラストが出ていて像も鮮明です。色乗りも良く、ほかのプリンターより見栄えのする仕上がりです。

和紙

和紙

アワガミファクトリー 楮(厚口)生成

アワガミファクトリーの「楮(厚口)」は、漂白される前の繊維の色が生かされている和紙です。自然な白さの「楮(厚口)白」に対し、かなり黄みがかった紙色になっています。中間調からハイライトにかけてその影響が出やすく、モノクロプリントでウォームトーン(温黒調)に仕上げたいときなどに効果的です。PRO-S1 Mark IIはこの写真ではわずかに色転びが見られるので補正が必要です。黒の締まりはいまひとつで、ぼんやりした眠い調子です。PRO-G1は黒が締まっていますが、コントラストはやや控えめの傾向です。PRO-G2は元画像に近い仕上がりで黒が引き締まり、コントラストもしっかり出ています。それによりこの和紙の「生成」(きなり)がうまく生かされています。

ファインアート紙で印刷するときは、基本的に手差しトレイからの給紙になります。「あなたの写真が変わるプリント講座」の初級編の初級編のLesson 6「給紙と排紙」で詳しく解説していますが、PRO-G1と同じくPRO-G2の手差しトレイも上トレイの後ろ側(本体の背面)にあります。給紙は1枚ずつになりますが、写真用紙など上トレイのときと同じ方法で、ファインアート紙など厚手の用紙も簡単にセットできます。面倒な操作は不要で、給紙の失敗を防ぐ機構も搭載されているのでストレスなくスムーズに印刷でき、ファインアート紙でのプリント表現も積極的に楽しめます。

プリントの堅牢性向上で長期の展示や保存も安心

展示や販売のための作品において、プリントの保存性はとても重要です。「あなたの写真が変わるプリント講座」の上級編のLesson 20「プリントの保存」でも解説していますが、プリントの劣化の要因はインクと用紙の両方にあります。プリントは紫外線や酸化性ガス(オゾン)などによって退色します。保存性は顔料インクのほうが優れていて、キヤノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]との組み合わせでは、耐光性はPRO-G1で約60年、PRO-S1Mark II)は約50年、耐ガス性はPRO-G1で約60年、PRO-S1Mark II)は約10年です。PRO-G2に採用されている「LUCIA PRO II」は光に分解されにくい顔料を採用し、耐光性については約200年まで大幅に向上。より長期間の保存が可能になっています。

光沢紙の印刷面の耐擦過性が向上

PRO-G1

PRO-G2

また「LUCIA PRO II」はインクにワックスを添加し、印刷面を滑りやすくして耐擦過性を高めています。効果が得られるのは光沢系の写真用紙のみとなりますが、カッティングや額装など印刷後の加工のほか、梱包や持ち運びの際にプリントの表面が擦れても傷が付きにくくなっています。傷が付いて印刷をやり直したり、そのままの状態で泣く泣く展示した経験がある人は少なくないと思いますが、プリントの堅牢性が向上したPRO-G2で印刷すればそのようなトラブルも減らせるでしょう。

作品作りのためのプリントを効率良く出力できるソフトウェア「Professional Print & Layout」に対応しているのもPRO-G2の魅力の1つです。ソフト単体で使えるほか、「Digital Photo Professional」「Adobe Photoshop」「Adobe Photoshop Lightroom Classic」などの画像編集ソフトからもプラグインとして起動できるので、PRO-G2での高画質プリントをよりスムーズかつ正確に得られやすくなります。その優れた機能性や操作性は、「あなたの写真が変わるプリント講座」の初級編のLesson 4Professional Print & Layoutの基本」Lesson 5Professional Print & Layoutの実践」でぜひ確かめてみてください。

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PRO-G2を選ぶ理由(後編)
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/review/prog2-review2
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/review/prog2-review2/image/pickup.jpg?sc_lang=ja-JP&hash=DBCD391A9A2FF06A4AC6D315020FF439
2025-10-31