PRO-G2を選ぶ理由(前編)
公開日:2025年10月31日

imagePROGRAF PRO-G2は、プロやハイアマチュアのフォトグラファーに向けた、PRO LINEシリーズのA3ノビ対応インクジェットプリンターです。豊かな発色や高い写像性など優れた写真画質を実現し、フォトコンテストへの応募作品から、ポートフォリオ、展示や販売のための作品まで幅広いプリントニーズに応えます。保存性を強化するなど作品作りをしっかりサポート。導入によるメリットなど、その実力に迫ります。
 
                                        PRO-G2への買い替えで得られるメリットは?
PRO LINEシリーズの顔料プリンターは2012年発売のPRO-10、2015年発売のPRO-10Sから、2020年にPRO-G1へと大きく進化しました。プリンター本体の小型化と軽量化が図られ、スペックから読み取れる数値以上にスリムに感じられるフォルムにデザインが一新されました。また、画像処理エンジン「L-COA PRO」が搭載され、インクとプリントヘッドを高精度に制御。PRO-10やPRO-10Sよりも高画質で、印刷速度も速くなり、それらはPRO-G2にも引き継がれています。
PRO-G1から搭載されたノイズリカバリーシステムは安心の機能で、インクの目詰まりによる失敗プリント、ヘッドクリーニングの頻度を減らせるためインクの無駄も抑えます。プリントの失敗を防ぐために紙送り精度を向上したほか、斜めに給紙された用紙を真っ直ぐに補正するなどの技術革新が行われ、それらもPRO-G2に搭載されていますが、プリンター本体の見た目がPRO-G1と変わらないため、あまり目立たない優位点と言えるでしょう。
 
                                        PRO-G1からPRO-G2への一番の変更点はインクシステムです。色や階調の再現性が高まるなど、プリントのクオリティーに大きく関係します。インク構成は9色+クロマオプティマイザーの合計10色である点はPRO-10やPRO-10Sから変わりませんが、PRO-G1は上位プリンターのPRO-1000と同じ「LUCIA PRO」で、しかもマットブラックインクだけは黒濃度を向上させた新インクが採用されました。PRO-G2のマットブラックインクもこれと同じものですが、ほかの9色のインクは新開発の「LUCIA PRO II」が採用されています(PRO-1100と同じ)。
新顔料インクによるカラープリントの違い
PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]
PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

キヤノン写真用紙・プレミアムマット
新しい顔料の「LUCIA PRO II」はマゼンタインクの色材変更で、マゼンタの色域が広がっています。濃いピンクや赤紫などをより鮮やかに再現できるようになっていますが、そのほかの色でもプラス効果が見られます。「あなたの写真が変わるプリント講座」の中級編のLesson 14「プリント用紙の選び方」でも登場するチューリップの写真ですが、その赤がPRO-G1よりPRO-G2のほうがしっかり再現され、より立体的で存在感が強まって見えます。そのほかの色もわずかに濃いめで、発色もより自然です。そのあたりの傾向は、光沢紙とマット紙では変わらない印象です。
PRO-G2のほうが色乗りは良く鮮明に感じられるのは、インク色材を用紙の上で高密度に配列していることが関係しています。単位面積あたりの色材が増え、表面の均一性が高まったことで、豊かな発色と優れた写像性を実現しています。チューリップの花びらの質感もより目に入りやすい印象です。そのあたりはルピナスの写真でもPRO-G1との違いがしっかり見て取れます。緑の発色もPRO-G2のほうが自然で深みがあり、シャドウもバランスよく引き締まるなど、被写体の立体感や風景の奥行きが強まって見えます。
新顔料インクによるモノクロプリントの違い
PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

キヤノン写真用紙・微粒面光沢 ラスター
PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

PRO-G1

PRO-G2

キヤノン写真用紙・プレミアムマット
モノクロプリントはPRO-G2のほうが黒が引き締まり、コントラストや明瞭度が高まって見えるなどより力強い印象です。壁面などのディテールがはっきりしているのは、インク色材の高密度配列も関係しているのでしょう。マットブラックインクのみ、PRO-G1と同じ「LUCIA PRO」が採用されていますが、それが使われるマット紙でも同じくPRO-G2のほうが黒が引き締まっています。コントラストがしっかり出ていて立体感もあり、PRO-G1より階調豊かに見えます。マット系のファインアート紙でのプリント表現にもしっかり対応でき、満足度の高い仕上がりが望めそうです。
染料インクと顔料インクはどちらが最適?
 
                                        顔料プリンターと同じタイミングで、PRO LINEシリーズの染料プリンターもPRO-100からPRO-100S、そしてPRO-S1へと進化しました。ところがPRO-G2と一緒に登場したのはPRO-S1 Mark II。Wi-Fiダイレクト接続時の5GHz対応など、主に通信機能の向上のためのアップデートで、インクの変更はないためプリントのクオリティーはPRO-S1と同じです。
顔料プリンターのPRO-G2と染料プリンターのPRO-S1 Mark IIのどちらが自分に合っているのか、そのような悩みを抱えているユーザーも少なくないでしょう。インクについては「あなたの写真が変わるプリント講座」の基礎知識編のLesson 1「染料インクと顔料インク」で解説しているので参考にしていただきたいのですが、両者は発色性、光沢感、用紙の対応性、保存性などで違いがあります。
そしてどの要素を重要視するかで選択が違ってきます。印刷速度はPRO-S1 Mark IIのほうが速いのですが、インクがしっかり乾燥し、プリントの色などが安定するまで時間がかかります。そのため印刷速度は劣りますが、印刷直後にプリントが安定するPRO-G2のほうが、RAW現像やフォトレタッチといった画像編集の効果をすぐに判断できるので有利と言えるでしょう。
光沢系写真用紙の発色性や光沢感の違い
PRO-S1 Mark II(染料インク)

PRO-G2(顔料インク)

PRO-S1 Mark II(染料インク)
 
                                            PRO-G2(顔料インク)
 
                                            PRO-S1 Mark II(染料インク)

PRO-G2(顔料インク)

PRO-S1 Mark II(染料インク)
 
                                        PRO-G2(顔料インク)
 
                                        キヤノン写真用紙・微粒面光沢 ラスター
発色性や光沢感については、「あなたの写真が変わるプリント講座」の実践編のLesson 28「高光沢プリントを楽しむ」、Lesson 30「半光沢で上品に見せる」でも染料インクと顔料インクの違いを解説しています。染料インクは紙の中に浸透するのに対し、顔料インクは紙の表面に定着し、光沢感など用紙の面質に影響します。インクの段差により平滑性が低下し、プリントを照らす光が乱反射して光沢感が弱まって見えやすいです。
これを改善するために、PRO-G2には「クロマオプティマイザー」と呼ばれる透明のインクが搭載されています。とはいえ表面をクリアコートするため、高光沢や超光沢の用紙本来のツヤを生かすには、インクが浸透する染料プリンターが最適です。彩度やコントラストが高めの写真との相性も良く、光沢系の写真用紙がメインのユーザーは、発色性や光沢感の両方で有利なPRO-S1 Mark IIがお勧めです。半光沢の写真用紙はというと、高光沢や超光沢ほどPRO-S1 Mark IIとPRO-G2の面質の違いは感じられません。
印刷品質のユーザー設定
 
                                         
                                        クロマオプティマイザーによるクリアコートはプリントからの反射光を抑え、作品本来の色を忠実に再現します。金赤色など本来とは違った色味が付いて見えるブロンズ現象の抑制にも効果があります。印刷品質は[標準]が[3]、[最高]が[2]に設定されていますが、PRO-G2では[ユーザー設定]に最も高品質の[1]が追加され、ブロンズ現象をより抑制できるようになりました。ギャラリーなど展示する場所によって照明が異なりますが、こだわって仕上げたプリントをしっかり見せることができます。鑑賞時の光源の影響を受けにくく、どのような条件でもプリントの色が安定して見える顔料インクのメリットをさらに活かせるわけです。
クロマオプティマイザーの効果
あり

なし

キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]
あり
 
                                        なし
 
                                        クロマオプティマイザーの設定
 
                                        全面
 
                                        画像のみ
 
                                        しない
 
                                        キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]
印刷の設定を効率良く行える便利なアプリケーションソフト「Professional Print & Layout」では、クロマオプティマイザーによるクリアコートをカスタマイズできるようになりました。PRO-G1では[自動]または[全面]しか選べませんが、PRO-G2では[画像のみ]を選択するとフチ(余白)はクリアコートされずに用紙の面質を残すことができます。ラミネート加工を行うなどクリアコートを必要としない場合には[しない]を選択できます。
 
                                        顔料インクの用紙表面での段差による平滑性の低下は、プリントを真正面から見ただけでは分かりません。フォトコンテストの審査ではプリントを手に取ったり、写真展ではいろいろな角度から鑑賞されるわけですが、そのようなときに光沢のムラが気になることがあります。どのような角度からでも、真正面のときと同じような見え方にするのが透明インクのクロマオプティマイザーです。特に平滑性の高い光沢紙では、それによるクリアコートが有効です。[全面][画像のみ][しない]の比較では、[しない]だけが黒の濃度が浅く見えます。クロマオプティマイザーは発色が豊かになるほか、シャドウが引き締まって見えるなどの効果もあります。無色透明であるとはいえ、PRO-G2のポテンシャルを引き出すために欠かせないインクなのです。
後編ではファインアート紙でのプリント表現について、その魅力や顔料プリンターのPRO-G2の優位性などについて掘り下げてみたいと思います。