「これひとつ。それでいい。」一台で完結する「PowerShot V1」の身軽さは、撮ることの本質と撮影の可能性をどこまでも広げてくれる。そして、洗練された性能とデザインは、クリエイターにどのような感性をもたらすのだろうか。
インディペンデントかつクリエイティブに生きていくために欠かせないスタイルを発信する『GRIND』。PowerShot V1で撮影を行ったタイアップ企画「Traces of Light」では、撮影現場で興味深い光景が目撃された。フォトグラファー・西川元基氏が静止画と動画をシームレスに行き来しながら撮影を進めていく姿は、まさに製品コンセプト「これひとつ。それでいい。」を体現するものだった。
ここでは、西川さんとGRIND編集長・川田周平さんに企画全体をふり返ってもらいながら、本誌では語り尽くせない撮影の裏側を深く掘り下げていく。
Rec Go! My story of "V1" feat. GRIND|西川 元基
公開日:2025年12月19日
GRIND掲載カット
PowerShot V1だから撮れる画を求めて、佐渡へ
-
35mm 1/160 F5.0 ISO200
コンパクトで高性能という、PowerShot V1の特性を活かす
川田:
PowerShot V1がリリースされたことを知り、「このカメラを使ったら、どんなことができそうですかね?」って、西川さんに相談したことから企画がスタートしましたね。
西川:
PowerShot V1は、レンズ一体型のコンパクトデジタルカメラでありながらも、EOSシリーズなどの上位機種で培われた本格的な撮影性能を上手く取り入れているカメラだなと思ったよね。
そこで、PowerShot V1の自由度を活かそうと考えた。
川田:
普段の雑誌用の撮影って、大型のカメラを使って大所帯になってしまう。だから撮影する場所もロケバスで日帰りできる範囲に止まってしまいがちですよね。
今回はPowerShot V1の機動力を活かして、少人数チームで普段は行くのが難しい場所でロケ撮影する。PowerShot V1で撮るなら、どんな人物像が良いか。そういったことを話し合いながら企画を考えていきました。
西川:
そこで思いついたのが、「カメラを片手に日本中を旅する青年」。
僕がPowerShot V1で撮るだけでなく、モデルの源大くんにもPowerShot V1を手にしてもらって、その土地の象徴的な場所から、そこに暮らす人たちの空気を感じるノスタルジックな風景まで、色々なシーンを撮ることにしようと決めたね。 -
40mm 1/8 F11 ISO400
世界に誇れる「日本の原風景」として、佐渡島を選んだ
川田:
西川さんとは海外にも撮影に行きますけど、以前から「日本でファッションフォトを撮る企画って、意外と少ない」という話をしていましたよね。
西川:
この間、パリのファッションウィークのながれで、オランダで撮影したときに地元のクリエイターから「どうして日本で撮らないの?」って言われたんだよ。
ファッションカルチャーって、西洋文明にルーツをもっているものが多いからつい海外で撮ろうと思いがちだけど日本の風景って、欧米の人たちには唯一無二のものなんだって改めて思った。
川田くんとも、「馴染みのある日本の景色をどうやってファッションのエディトリアルに落とし込むか」みたいなことをよく話していたから、今回は絶好のチャンスだった。 -
50mm 1/160 F4.5 ISO400
川田:
途中段階では北海道や沖縄も候補に挙がりましたけど、どちらも個性が強すぎましたよね。
最終的に「日本の原風景」というキーワードにハマったのが、佐渡島でした。
西川:
佐渡の「島」というロケーションには、陸続きじゃないからその土地特有の景観や文化があってすごく良かった。
撮影期間はロケハンに1日、本番に2日の計3日間だったけど、PowerShot V1を使ったことで自然から街並みまでユニークな画がたくさん撮れたかな。
川田:
そのおかげで当初は8ページ構成を予定していましたが、いつの間にか18ページに増えたんですよ(笑)
佐渡独特の文化と言えば、どの建物も窓のすりガラスのデザインが同じだったことが面白かったですよね。源大くんをすりガラスごしに撮ったスチールは、すごくユニークでした。
「これひとつ」の撮影スタイルが、ファッションフォトにドキュメンタリーの風合いをまとわせた
-
PowerShot V1で撮ったことで、ロケハンと本番がシームレスになった
川田:
PowerShot V1は、撮りたいと思ったらすぐ撮れるからだと思いますが、西川さんの撮るペースが普段よりも早かった気がします。
西川:
自然とそうなっていた気がする。ロケハンでも本番でもPowerShot V1をコートのポケットに入れて、撮りたいと思ったらすぐに撮っていた。
クルマで移動中に気になったものがあったら、止めてもらって思うがままに撮っていたよ。
普段はロケハンと本番でカメラを変えるけど、今回はどちらもPowerShot V1で撮っていたから、ランドスケープなんかはロケハンで撮ったものもけっこう使うことができたよね。 -
50mm 1/400 F4.5 ISO400
ドキュメントスタイルで撮った、ファッションフォト
川田:
PowerShot V1を使ったことで撮り方も変わりましたか?
西川:
カメラを片手に日本中を旅する青年というコンセプトに決めていたから、源大くんには「今回はドキュメンタリースタイルで撮るから、カメラを向けられているときもわりと自由に動いちゃって大丈夫」と伝えていた。
もちろんポーズを決めて撮ったものもあるけど、スチールもムービーも瞬間を捉えたものが増えたと思う。
源大くんが民家の前を歩いている姿をサイドから撮ったやつは、2日目の自由時間に撮ったものだね。どことなく佐渡の暮らしを感じる1枚になったんじゃないかな。 -
35mm 1/160 F5.0 ISO200
スチールとムービーを分け隔てなく撮ることができた
川田:
西川さんには、ムービーも作ってもらいましたけど、「あの場所で、スチールだけでなくいつの間にかムービーも撮っていたのか」と気づくことが多かったです。
西川:
たしかに後ろから見ていたらスチールとムービーのどっちを撮っているのかわからなかっただろうね(笑)
PowerShot V1は、モードダイヤルでスチールとムービーの撮影をすぐに切り替えられるから同じシチュエーションでどちらも撮ることができたんだよ。 -
川田:
ムービーで撮ろうって、どんなときに思っていたんですか?
西川:
歩きながら撮っているときが多かったかもしれない。源大くんだけでなく、僕自身もドキュメンタリーの感覚で撮っていたからね。
その意味でもPowerShot V1は、スチールもムービーも「撮りたい」と思ったときにすぐ撮れるのが良かった。 -
ひと工夫するだけで、花火も夏の夜空も美しく撮れた
川田:
PowerShot V1だけで撮るために、機材面で工夫とかしていましたか?
西川:
いや、特別なものは何も使わなかったよ。ロケーション的に意識していたのは、自然光で魅力的な画が撮れることぐらいかな。
佐渡島に行く前に事務所の近くでテスト撮影を行なったんだけど、そのときにPowerShot V1がコンパクトデジタルカメラと思えないくらい綺麗に撮れることを確認できていたからね。
一応、三脚と照明機材も一緒に持って行ったけどね。特別な撮り方をしたのは、花火の撮影にストロボを使ったぐらい。三脚も夏の夜空を撮ったときに使った程度だったはず。
プロユースにも応えるPowerShot V1の撮影性能
-
46mm 1/400 F4.5 ISO125
ファッション誌のクオリティを満たせる、1.4型センサー
川田:
先ほどお話しされたテスト撮影の際に、GRIND本誌のサイズでプリントアウトも試してもらっていましたよね。
西川:
画質的にはまったく問題なかったね。今回のようなドキュメントスタイルの企画ならファッション誌のクオリティも十分に満たせると思った。
PowerShot V1が1.4型センサーを搭載していることも大きい気がする。 -
川田:
僕はムービーも撮るけど、ベースにあるのはフォトグラファーとしての自分。だからムービーは基本的にグラフィックの見た目に近づけられれば良いなと思っている。
PowerShot V1は10bit対応のCanon Log 3で撮れるから、今回も編集作業時にカラーグレーディングすることでイメージに近づけることができた。 -
ムービーの撮影では、ズームレンズと優れたAFが活躍
川田:
PowerShot V1はレンズ一体型のズームレンズですけど、何ミリぐらいで撮っていたんですか?
西川:
スチールは、ワイド端の少し手前の21mm(35mm判換算時)ぐらいで撮ることが多かったかな。望遠では撮らなかった。
ムービーについては、ズームを利用することで源大くんの目元アップとか印象的なカットを撮ることができた。 -
西川:
あとはキヤノンのカメラは昔からAF性能が強い印象なんだけど、PowerShot V1もAFが優れていると思った。
特にムービー撮影中はAFと手ブレ補正(IS機能)がしっかりと効いている感じがしたかな。 -
キヤノンのカメラ特有の自然な色合いを、PowerShot V1にも感じた
川田:
西川さんは色々なカメラを使われていますけど、キヤノンのカメラの特徴ってどんなところですか? -
西川:
元々が写真機として開発されてきているから、フォトグラファー的にはすごく自然な感覚で撮れるのが良いなって思っている。
特に人の肌の色合いがめちゃくちゃ好きで、元データから自分のゾーンに持って行きやすいのが気に入っているよ。 -
50mm 1/320 F11 ISO400
川田:
そう言えば、スチール撮影でカラーとモノクロはどんな風に使い分けていたんですか?
西川:
撮っているときに決めるというよりは、どのカットを使うのかセレクトするときに決めることが多いかな。
このカットも屋根の上に置かれた岩の質感や光のコントラストがより強い印象になると思ったからモノクロに仕上げた。
あとはエディトリアルとしての構成も考えるよね。同じような色味や構図が続くと単調な印象になってしまうから、モノクロのカットをポイントポイントで入れていくようにしている。
川田くんは僕たちクリエイターを信頼して、わりと自由にやらせてくれるから今回も楽しかったよ。
PowerShot V1を使えば、新たな表現が生まれるかもしれない
-
45mm 1/500 F11 ISO400
カメラが変われば、撮り方も撮れる画も変わる
——今回の企画を通して感じた、PowerShot V1の印象を教えてください。
川田:
PowerShot V1はシックなデザインも良いですね。小道具としても魅力的だと思いました。
編集者的には、ファッションショーなどのイベント取材の場合は自分で撮ることもあるのでPowerShot V1を使えば確実にクオリティを上げられるはず。 -
西川:
PowerShot V1のメインターゲット層は、Vlogとかを気軽に撮りたい一般の人たちだと思うけど、フォトグラファー的にもこれ1台を持っておけばメインカメラに不具合があったときも大分助かると思う。
エディトリアル的にもサブ機としてPowerShot V1があれば、色々な目線で撮れるよね。
プライベートでも子どもや家族をよく撮っているんだけど、PowerShot V1はズームレンズ一体型だから単焦点のコンパクトカメラよりもたくさんのバリエーションで撮れると思う。
同じシチュエーションでもカメラが変わると撮り方が変わるし、撮れる画も変わるからPowerShot V1を持っておくと、新しい表現に出会えるかもしれない。