このページの本文へ

自然部門 第53回キヤノンフォトコンテスト

自然部門

ゴールド賞

『小宇宙』森 弘子(北海道)

受賞者の声

流木の上のきのこ氷を落下の危うさと輝きの美しさで表現 この度は、素晴らしい賞をいただき、誠にありがとうございます。奇跡が起きたと、いまだに信じられません。この作品は、地元の上士幌町にある、糠平湖で冬にだけ見られるきのこ氷という現象を写しました。毎年訪れますが、このようなものを見たのは初めてでした。どこまでも透き通った氷の中に、大小無数のアイスバブルが閉じ込められて、まさに星空のようです。湖上に偶然立った流木の上に、強風で今にも落ちそうな危うさと輝きの美しさを、超広角でイメージ通り写せた一枚です。

講評:見る人に問いかける面白さ 自然部門ゴールド賞

  • GOTO
    自然部門のゴールド賞は「小宇宙」という作品です。風景や自然をとらえた写真は、どこで撮ったとか、何を写しているのかがすぐに分かってしまうと、それで見る人の興味が削がれる場合があります。けれど、この作品は氷だと分かっても、どんな場所で、どういう状態のものを撮っているのか、まったく分かりません。見る人に問いかけるような、容易に言葉で表現できないような写真の面白さがあります。
  • 野口
    確かに「何だろう?」という面白さがありますよね。それがこの作品の強さだと思いますが、きっと作者も、変に狙って撮っているのではなく、純粋に「何だろう?」と感じて撮ったのではないでしょうか。そうした作者の気持ちもダイレクトに伝わってきます。
  • 大石
    富士山や有名な景勝地など、誰もが知っている場所の風景写真とは大きく異なる魅力がありますよね。
  • 米屋
    鉄道写真でも、撮影場所などがすぐに分かるものは、あまり目に止まらないんです。理解できないからよく見たくなるし、興味を抱く。さらにこの作品は、空抜けの下からのアングルもよかったと思います。下から見上げていることで造形的に面白くなり、より不思議な印象を抱かせます。
  • 中西
    自然部門のほかの作品を見たとき、意外と自然そのままのナチュラルな強さを感じる作品が少ないと思ったんです。後から彩度を上げたり、自然界にはない色だったり、そうした人工的な世界が多い中で、この作品は自然の強さをストレートに表現されていて、非常に目を引きました。
  • 大石
    自然が作り出した造形が魅力なんですよね。後から色を付けたり、加工したりするデジタル的な表現に頼らず、でも、デジタルカメラだから撮れたシャープさも感じられる。そうした面白さもあると感じました。
  • GOTO
    確かに、最近は自然写真なのに、まったく自然ではない作品が増えていると思います。その中で、この作品は色彩が本当にナチュラルでストレートに撮られています。目の前にあるものをそのまま撮っているのに不思議な光景になっている。そのシンプルな強さがあることで、見る人の目を引きつける、心に飛び込んでくる一枚になっているのだと思います。
  • 米屋
    でも、本当に何だろう(笑)
  • GOTO
    たぶん、作者の後ろに木などがあって、そこから氷が迫り出していると思うんですよね。
  • 米屋
    そうか、その氷の下に潜り込んで撮影しているんですね。
  • 野口
    あ、そうかもしれない。
  • GOTO
    きっと作者は静かに興奮していると思いますよ。

シルバー賞

『大木の下で』北村 健三(高知県)
『あの朝陽に跳べ』加藤 健(愛知県)

ブロンズ賞

『霧の夜明』田中 作夫(島根県)
『子守』原川 哲仁(東京都)
『根っ子の美』玉手 恒弘(北海道)

佳作

『押し寄せる、大波』浅野 健治(茨城県)
『凝』赤松 昌哉(兵庫県)
『袋小路』鈴木 泰孝(北海道)
『山の息吹』安田 豊治(岡山県)
『親仔』鈴木 直史(京都府)