亀田半島 馬編
公開日:2020年7月9日
長い年月にわたる人の営みが
日本の「地」をつくってきた。
その一方で、「地」が
日本人の暮らしに
与えてきた影響も大きい。
島国、日本。
複雑に曲折するその海岸線は、
半島同士のつながり
そのものだ。
「半島」を巡る旅を通し
日本を見つめ直す。
WEBコンテンツムービー写真家 公文健太郎「半島」~亀田半島 馬編~
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北海道の南西、渡島半島。
さらにその南東部を
亀田半島と呼ぶ。
根元で栄えるのは北海道と
本州をつなぐ玄関口、函館だ。
函館から東へおよそ四十キロ、
太平洋に面した先端に
恵山がそびえる。
亀田半島を初めて訪れた日、
冷たい雪が降り始めた。 -
定男さんは、函館と恵山の間で、
競走馬や観光用、食肉用など、
多様な馬を育て卸している。
古くから日本では、
馬は荷物を運ぶ動力であり、
生活に欠かせなかった。
車の普及により、
馬の役割も変わっていく。
定男さんのような生業は、
今ではもう数少ない。 -
「おめぇこのやろう」。
定男さんの口癖だ。
馬にも、人にも同じように言う。
迫力のある言葉だが、
けっして威嚇ではない。
この言葉のあとに、
「けぇけぇ(食え食え)」と続く。
家に入って飯食ってけ。
それは、親しみを込めた
枕詞のような口癖なのだ。
人間よりも巨大な馬を引き連れて、
雪の上を歩く。
日ごとに雪が深くなるため、
道中は命がけだ。
馬だけでなく、人間も足を滑らせ
命を落としかねない。
だからこそ、馬にも、仲間にも、
そして客人にも厳しい。
愛情の裏返しであることは、
定男さんのそばにいればわかる。