佐田岬半島 暮編
公開日:2020年7月9日
長い年月にわたる人の営みが
日本の「地」をつくってきた。
その一方で、「地」が
日本人の暮らしに
与えてきた影響も大きい。
島国、日本。
複雑に曲折するその海岸線は、
半島同士のつながり
そのものだ。
「半島」を巡る旅を通し
日本を見つめ直す。
WEBコンテンツムービー写真家 公文健太郎「半島」~佐田岬半島 暮編~
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四国の最西端。佐田岬半島は、
北から南まで約五十キロの長く細い半島だ。
海に挟まれた地形の真ん中を
国道197号線が動脈のように走る。
山間には家が点在し、人びとが暮らす。
そして文化と景色が作られてきたのだ。
これまで、さまざまな半島を巡り、
美しさや豊かさを見ることができた。
一方で半島に暮らすとは、
どういうことだろう。
長く伸びたこの半島で、
その意味に近づける気がした。 -
半島の先端、灯台がある岬につくと、
海は荒れていた。
漁に出る船はないだろう。
そう思っていたら一隻の船が戻って来た。
そこで出会ったのが宇藤さんだ。
この半島の先っぽに住む漁師の一人。
瀬戸内側と宇和海側、
いつも、どちらかが荒れているという。
だが「このくらいの波は
大したことない」と笑う。
変化に富んだ海は、
豊かな漁場ともいえる。
漁師たちが生きる場所だ。 -
この半島にはあまり平地がない。
山間の地形を生かした農業として
みかん作りが盛んだ。
空、海からの反射、地面からの反射、
その三つの〝太陽〟で育てる。
山の中は、人が一人通れる程度の
「うさぎ道」と呼ばれる細い道が続く。
人の気配のない中で出会った山下さんは、
ここで暮らし、みかんを育てていた。
一緒にみかん畑に行くと
たわわに実ったみかんが輝く。
山下さんの作業の丁寧さと、
向き合い方まで見えてくるようだった。
波の高い早朝、再び漁に同行した。
半島を外側から見ることは
もう一度、半島を感じ直す時間になった。
佐田岬半島は細長く、
陸地からまっすぐに伸びている。
でも海から見るその姿は〝島〟だった。
「半島は、おおよそ島である」。
そんな言葉を思い、撮りはじめて1年。
半島がつながっていくと、日本ができあがる。
つまり日本は島であるということを
海から見て改めて感じることができたのだ。
揺れる船上。
赤く染まっていく岬が美しかった。