藤幡 正樹「OFF - SENCE 離常識(オフセンス)な世界」
情報コミュニケーション社会をシニカルにモデル化した「OFF-SENCE 離常識(オフセンス)な世界」。
それは、藤橋正樹氏がつくった、複数のコンピューターのアバター(分身)がネットワークの仮想空間を自由に移動し、出会い、会話する世界。プロジェクターによって投影される、一般的な感覚から逸脱したコンピューター同士の会話が、実際の人間同士のコミュニケーションのリアリティーとは何かを問いかけてくる。
会期 |
会場 |
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2006年10月6日~2006年10月30日 | キヤノンギャラリー S |
作品・展示風景
作家メッセージ
人工的なキャラクターによる情報コミュニケーション社会をシニカルにモデル化した世界
「OFF-SENCE 離常識(オフセンス)な世界」
この作品の基盤となるアイデアは、「会話」である。人工知能研究の初期に「Eliza イライザ※」と呼ばれる会話ソフトウエアが話題となり、人間の会話をコンピューターによって模倣することが可能であるか否かが、大きな議論を呼んだ。このソフトウエアの基本となるアイデアは、質問と返答の間に、あるルールに従ったデータベースを作り上げることで、おおよそ人間の会話らしきものが実現できることにある。
作品のタイトル「OFF-SENCE 離常識(オフセンス)」は、常識的な感覚を否定する「Nonsense 無意味(ナンセンス)」の立場をとるのではなく、かといって「Senseless 無感覚(センスレス)」であるわけでもなく、一般的な感覚から離脱した位置に立った会話を、コンピューター相互に行わせることを試みたものである。
数十台のコンピューターが相互にネットワークされており、サイバースペース内に作り上げた空間が各々のコンピューターによって共有されており、各々のコンピューターがアバターとして空間に出現するように作られている。各々のアバターは、自動的に空間の中を動き回るように作られており、ひとたび他のアバター(他のコンピューター)と出会うと、各々のデータベースを元に「OFF-SENCE(オフセンス)」な会話をはじめるのである。
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イライザ(Eliza)は、1966年にMITのジョセフ・ワイゼンバウムによって開発された自然言語処理プログラム。
作家プロフィール
藤幡 正樹(ふじはた まさき)
1956年東京生まれ。1980年代初頭からCGやアニメーション作品を多数制作。その後、CGの三次元データを立体作品として取り出す試みを経て、1990年代はインターネットやGPSといった先端テクノロジーにも取り組む。1996年、ネットワークを介して複数のユーザーがひとつのヴァーチャル空間を共有する「Global Interior Project #2」でアルス・エレクトロニカ(リンツ、オーストリア)の最高賞、ゴールデン・ニカ受賞。インタラクティブな書物をテーマにした「Beyond Pages」(1995-97)は世界十数ヶ所を巡回し、1997年、ZKM(カールスルーエ、ドイツ)のパーマネント・コレクションとなる。1998年より約1年間、ZKM映像メディア研究所に客員アーティストとして滞在。4ヶ国をネットワークで結んだ「Nuzzle Afar」(1998)を発表。帰国後、「OFF-SENCE」(2002)「オーキソイド」 (銅金祐司との共作、2001-2004)「モレルのパノラマ」(2004)「ルスカの部屋」(2004)など。
1992年にスタートした「Field-Works」は、GPSとDV映像を用い、三次元のサイバースペースにノンリニアな記憶や痕跡を再構築するシリーズ作品。日本では、「妻有」「葉山」「宍道湖」(2000-2002)。海外では「Alsace」(フランス・アルザス地方、2002)「Mersea Circles」(イギリス・エセックス地方、2003)「Landing Home in Geneva」(ジュネーヴ、スイス、2005)「Talking Tree」(グラーツ、オーストリア、2005)のプロジェクトが実現されている。
「Beyond Pages」から最新作「Unformed Symbols」まで、約10年間の主要作品を展示した、個展『不完全さの克服』(CCGA、2006)は記憶に新しい。
著書に、『Geometric Love』(PARCO出版、1987)『禁断の果実』(リブロポート、1991)『巻き戻された未来』(ジャストシステム、1995)『カラー・アズ・ア・コンセプト』(美術出版社、1997)『コンピューター・グラフィックスの軌跡』(ジャストシステム、1998)『アートとコンピューター』(慶應義塾大学出版会、1999)『先端芸術宣言!』(共著、岩波書店、2003)など。CD-ROM作品に『Small Fish』(古川聖、Wolfgang Muenchと共作、ZKM/Cantz、2000)がある。現在、東京芸術大学大学院映像研究科科長。
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