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西野 壮平写真展「線をなぞる "tracing lines"」

本展は、写真家 西野壮平氏による写真展です。氏の作品は、都市や自然を撮影し、その写真の断片を記憶に基づいて画面上でつなぎ合わせる、写真コラージュで制作されています。その過程は、膨大な手作業の積み重ねによって成り立っています。
本展では、コロナ禍で新たに制作した作品「Mountain line “Mt Fuji”」をはじめ、「WAVES」や「Study of Anchorage」など5つのプロジェクト、約100点を展示します。
作品は、キヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」でプリントし展示します。

会期 会場
2022年1月20日(木)~2022年3月7日(月) キヤノンギャラリー S

作品・展示風景

紹介動画・対談動画

作家メッセージ

道を歩くと線が描かれ線の跡には詩が生まれる。

アルプスの山の頂から流れ出る一滴の水が、やがてアドリア海へ辿り着くまでの全長650キロの旅。
その道のりを、2018年始めにあるプロジェクトの為に旅をした。
この水を巡る旅は、当たり前のように我々の生活にある水というものに着目し、脈々と循環し変容し続ける水という物質の壮大さと命の営みに出会う旅でもあった。
その旅がきっかけとなり、後に日本の知床とその対岸に位置するロシアのマガダンとを繋ぐ流氷の移動についての関心へと繋がった。
日本に辿り着く流氷が一体どこからきてどこに向かうのか。
この一つの問いをきっかけに人間が作り出す国境(ボーダー)という存在についても考えさせられた。
また、2018年春にヒマラヤの山々を訪れ、エベレスト街道を歩いた。
この旅では、エベレストという神々しく存在する山を象徴的に捉えるのではなく、山へ向かう人がどのような道を通っているか、またその道中にどのような人が暮らし、どのような生活があるのかといった「山の道」に焦点を当てた。
それ以降、象徴的な山をどのように見るかということは現在も継続して取り組んでいるが、日本人にとって古来より信仰の対象であり、象徴でもある富士山といかに対峙するかといった試みもまた水というテーマに取り組んで以降に生まれた「移動」という概念から派生した作品と捉えている。

2020年、我々の日常を一変させたコロナ禍の生活は、移動を制限された自粛生活の中で移動するということの意味と、その理由を更に自分の中に芽生えさせた。
これまで年間の多くを旅の時間に使っていた生活とは異なる時間を過ごす中で、自分は一体何に向かうことができるかということをアトリエの近くにある海沿いの道を歩きながら考えた。
そして波の揺らぎや光の反射に自分の心境を投影し、海の向こう側を想像しながら手を動かすことを始めた。
その時間は作品WAVES、Study of Anchorageを生み出した。

これまで都市をフィールドに撮影を続けてきたが、「水」との出会いは移動するということの意味を教えてくれた。
水を見つめることで、都市と自然の関係、現代に生きる人類の暮らしを考えるきっかけになったと同時にそこに生命の一生を垣間みるような、
根源的な旅を水は教えてくれたような気がしている。

作家プロフィール

西野 壮平(にしの そうへい)

1982年、兵庫生まれ。歩くこと、旅を通して得た個人的体験をもとに作品を制作している。

2005年写真新世紀にて優秀賞(南條史生選)、2013年日本写真協会新人賞、Foam Talents Call 2013、2016年さがみはら写真新人奨励賞。2018年MAST Foundation Photography Grant受賞。主な展示にDAEGU PHOTO ビエンナーレ(2010年、大邱、韓国)、日本の新進作家展vol.10(2012年、東京都写真美術館)、フェスティバル Images Vevey(2012年・ヴェヴェイ、スイス)Of Walking グループ展(2013年、Museum of Contemporary Photography、シカゴ)「New Work: Sohei Nishino Exhibition」個展(2016年、サンフランシスコ近代美術館、アメリカ)等がある。

著作権について

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