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鈴木 理策「知覚の感光板」

本展は、写真家 鈴木 理策氏による写真展です。
芸術家のあるべき姿を「知覚の感光板」と表した画家セザンヌの言葉に感銘を受けた鈴木氏が、かつて画家達が見たフランスや、アメリカの風景を捉え表現した作品23点を展示します。
作品は、キヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」でプリントし、展示します。

会期 会場
2018年11月28日~2019年1月16日 キヤノンギャラリー S

作品・展示風景

作家メッセージ

「知覚の感光板」は画家セザンヌの言葉です。
芸術は自然に照応するひとつの調和であり、そこに芸術家個人の表現意図を持ち込むべきではない。自分の中にある先入観を忘れ、ただモチーフを見よ。そうすれば、知覚の感光板にすべての風景が刻印されるだろう、と語るセザンヌは、芸術家の身体を感覚の記録装置とみなし、受け取ったすべてを画布に定着させようと試みました。匂いや音など視覚以外の感覚も色彩によって表すことができると信じ、「目に見える自然」と「感じ取れる自然」が渾然一体となるように描いたセザンヌの絵画は、「何を描いたか」ではなく「モチーフから感じ取ったもの」そのものを私たちに見せてくれます。

写真の場合、カメラは表現意図を持たず、ただ純粋に対象を知覚します。カメラの機械的な視覚は、人間の見え方とは大きく異なります。私たちは行動に必要な情報だけを取捨選択してものを見ているからです。カメラの純粋知覚は私たちが見捨てた世界の細部をも写し出してしまう。その基本的な性質にあらがうように、多くの写真家は構図やフォーカシング、シャッタータイミングの選択を駆使して、画面の中に自らの刻印を残そうとしています。
今回、近代の画家たちがモチーフに選んだ土地を撮影しました。彼らが向き合った風景を訪れると、その創意を直に感じられるようでした。この旅の中で、レンズの純粋さを信頼し、写真の本性を手に入れられたらと、改めて強く感じました。

作家プロフィール

鈴木 理策(すずき りさく)

1963年和歌山県新宮市生まれ。1987年東京綜合写真専門学校研究科修了。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授。地理的移動と時間的推移の可視化を主題に、東京から新宮のお燈祭りに至る63枚の写真をシークエンスで構成した自身初の写真集「KUMANO」(光琳社出版)を1998年に発表。翌年、《Osorezan》と《Izanami》のふたつのシークエンスによる「PILES OF TIME」(同)を出版し、2000年に第25回木村伊兵衛写真賞を受賞。
生地・熊野の他、南仏のサント・ヴィクトワール山やセザンヌのアトリエ、桜、雪、花、ポートレート、水面といったさまざまな対象を撮影し続けているが、そこには写真のメディア性に対する関心と「見ること」への問題意識が貫かれている。
近年の写真集に「Water Mirror」(製作:一般社団法人日本芸術写真協会、発行:Case Publishing、2017年)、「Étude」(SUPER LABO、2017年)、「SAKURA」(edition nord、2017年)、「Atelier of Cézanne」(Nazraeli Press、2013年)などがある。
おもな個展に「意識の流れ」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2015年・東京オペラシティギャラリー、2015年・田辺市立美術館、2016年)、「水鏡」(熊野古道なかへち美術館、2016年)、「Mirror Portrait」(タカ・イシイギャラリー、2016年)、「熊野 雪 桜」(東京都写真美術館、2007年)がある。
作品は、サンフランシスコ現代美術館、ヒューストン美術館、東京国立近代美術館、東京都写真美術館、国際交流基金などに収蔵されている。

著作権について

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