柴田 敏雄「Bridge」
本展は、写真家柴田敏雄氏による写真展です。柴田氏が撮影した橋の写真約30点を展示します。これは、約3年前にベルギーの建築家で構造エンジニアのローラン・ネイ氏の依頼により、ネイ氏が設計した数々の「橋」を写し撮ったものです。タイトル「Bridge」のもと展示される写真群は、写真家柴田氏の眼を通じて再構成された作品で、それぞれの「橋」が持つ機能性に加え、ネイ氏独特の美学や感性が込められた構造物が放つ「美の本質」を捉えています。作品はキヤノンのデジタルカメラ「EOS 5Ds」「EOS 6D」で撮影され、キヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」でプリントします。
会期 | 会場 |
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2016年3月31日~2016年5月17日 | キヤノンギャラリー S |
作品・展示風景
作家メッセージ
約3年前、ベルギーの建築家ローラン・ネイ氏に、彼の設計した「橋」を私の写真で作品化できないかと依頼された。
私は、1970年代後半から4年ほどベルギーのゲントにいたことがある。
そんな縁もあり、その計画を尋ねてみると、彼の答えは「現時点では具体的には決まってはいないし、どうするのか特に目標はない」とのことだった。
特別に曖昧な言葉の響きに惹かれて、この不思議な申し出にますます興味を持ち、さらに深く話を聞いていく。すると彼のプロジェクトの進め方自体がとびきりオープンな感じで、場所、環境、コスト、また地域住民の意見などをもとに、ネイ氏独特の美学でデザインと設計を進めていくのだと言う。ことの成り行きに制作を委ねる感覚は、何となく私自身の「場を借りる」という考え方、状況を受容し変換させるパッシブな制作の方法論とも重なるところがある。
ネイ氏の仕事はベルギー、オランダそして自身の出身地であるルクセンブルク、いわゆるベネルクスを中心として世界中に広がり、時間とともに増え続けている。ベネルクスにあるいくつかの「橋」は、フランスとドイツの間に位置し、地政学的に歴史的な争いごととも深く関連するものも多い。
私は、季節や時間をかえて幾度も「橋」を往来しつつ、遠くからただ斬新なモニュメントとして俯瞰するだけでなく、機能面にも目を向け、使用する側から見えてくる「オブジェ」として追求した。
(追記)
ネイ氏が現在進めているプロジェクトの一つに、長崎の出島に架ける「出島表門橋」がある。また、この地と歴史上の関わりが深いシーボルトが住んでいたオランダのライデンにも、ネイ氏による「橋」の建設計画が進んでいる。
作家プロフィール
柴田 敏雄(しばた としお)
1949年東京生まれ。東京芸術大学大学院油画専攻修了後、ベルギーのゲント市王立アカデミー写真科に入り、写真を本格的に始める。日本各地のダムやコンクリート擁壁などの構造物のある風景を大型カメラで撮影、精緻なモノクロプリントで発表し、1992年、写真展「日本典型」で第17回木村伊兵衛賞受賞。同年、ニューヨーク近代美術館にて「New Photography 8」に選出され出品、1997年にシカゴ現代美術館で個展「Toshio Shibata」を開催するなど、アメリカをはじめ国際的に活躍。2000年代よりカラーの作品にも取り組み始め、その表現の領域を広げる。2008年に東京都写真美術館で「ランドスケープ−柴田敏雄」展を開催し、翌2009年に日本写真協会作家賞、第25回東川賞国内作家賞を受賞。近年の主な展覧会に「与えられた形象−辰野登恵子・柴田敏雄」(2012年・国立新美術館)、「Toshio Shibata: Constructed Landscape」(2013年・ピーボディ・エセックス美術館、アメリカ)などがある。国立東京近代美術館、国立国際美術館、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ポンピドゥー美術館など国内外多数の美術館に作品が収蔵されている。
今回はローラン・ネイ氏のプロジェクトのために、デジタルカメラで撮影。デジタルカメラで撮影した作品を発表する初めての大規模な展覧会となる。
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