このページの本文へ

宮本 隆司「“九龍城砦” Kowloon Walled City」

香港の象徴であった高層スラムであり、異形の街でもある九龍城砦を1987年から93年にかけて記録した宮本隆司氏による写真展です。
かつて香港の九龍地区にあった高層スラム、九龍城砦。もともと砦である故、外敵から身を守るように積層された建物は、その容姿から“魔窟”と避けられていましたが、建物の中には当時の香港政府から特別の自治を認められていた4万人の人々の生活がありました。
九龍城砦の外観、九龍城砦が存在する地域の空撮、さらに建物の奥深くまで入って撮影した写真は、建物自体、建物の存在の変遷、建物に介在した人々の生活の貴重な記録であり、厳選した約55点のフィルム作品を最新のデジタル技術でデータ化し、キヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」でプリントし展示します。

会期 会場
2016年5月20日~2016年7月4日 キヤノンギャラリー S

作品・展示風景

作家メッセージ

九龍城砦が消滅してから20年が過ぎた。
香港に鎮座していたアジアン・ゴシックと称される高層スラム、九龍城砦が今でも話題になることがある。
あの巨大コンクリートスラムの建造物が意味するところは一体、何だったのだろう。
2.5ヘクタールの土地に4万人もの人々が暮らしていた巨大高層コンクリートスラムは、悪の巣窟、魔の具現体としてさまざまな表現媒体で繰り返し象徴的に描かれ語られてきた。

現代の魔窟、アジアン・カオス、無法地帯と恐れられながら悪と魔性の象徴として映画、劇画、SF、ゲームの世界でしぶとく生き続けてきた。
数々の謎と伝説をまとった九龍城砦は、困難な歴史を背負った無数の人々がたどり着いた極限の住居集合体であった。
東アジアの香港に出現した、中国人の集合的無意識の結晶体であった。
人々が生活し、まだ生きていた九龍城砦を改めて見つめ、その存在を問い直してみたい。

作家プロフィール

宮本 隆司(みやもと りゅうじ)

1947年、東京生まれ。1973年、多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。
建築雑誌「住宅建築」編集部員を経て独立。解体中や放置された建築を撮影して発表、廃墟の写真家として知られる。1989年「建築の黙示録」「九龍城砦」展覧会、写真集により第14回木村伊兵衛写真賞受賞。1996年「KOBE 1995 After the Earthquake」展示により第6回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展金獅子賞受賞。2005年、世田谷美術館個展「ピンホールの家」展示により第55回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2012年、紫綬褒章受章。2014年、徳之島アートプロジェクト実行委員会代表として活動の範囲を広げつつある。

著作権について

当写真展関連ページに掲載されている写真の著作権は作者に帰属します。
これらのコンテンツについて、権利者の許可なく複製、転用などする事は法律で禁止されています。

写真展の情報・作家メッセージなどは、開催当時の内容を記載しております。予めご了承ください。