POINT
- イベントチラシやスクール資料は、伝わりやすさまで考えてすべて自作。
- 店内掲示とメール・SNSを組み合わせ、情報が自然と目に留まる工夫。
- 印刷物をきっかけに会話が生まれ、お客様とのコミュニケーションが深まる。
お客様が心からリラックスできて、自然と笑顔になれる場所をつくること。それが、SUPとピラティスのインストラクター・篠塚由紀子さんが何よりも大切にしていることです。より多くの人に身体を動かす楽しさを体験してもらうために。そして、人と人がつながる居心地の良い時間を育むために。篠塚さんは、日々の仕事の中でその想いをどのように実践しているのでしょうか。
海と人のご縁に導かれて、大好きな街・逗子へ
ーーお仕事内容について教えていただけますか。
ウインドサーフィンとSUPのスクールを運営する「フェザーファクトリー」でSUPのインストラクターをしています。スクールのメンバーの皆さんと海に出てSUPの乗り方をお伝えしながら、一人ひとりが安心して海を楽しめるようにサポートしています。フェザーファクトリーの建物内にピラティススタジオ「Cofe Studio」も併設していまして、そちらでもインストラクターを務めています。あとは、接客や販売などの店舗業務全般を行なっています。
ーーどんな経緯で今のお仕事に?
以前は建築関係のデザイン職だったのですが、海が大好きでフェザーファクトリーでウインドサーフィンを習い始めたんです。平日は働いて週末は当時住んでいた埼玉から逗子へ。そんな日々を過ごすうちに、この街がすっかり好きになってしまいました。さらに「自然のなかで身体を動かす楽しさ」にも魅せられて、身体そのものへの興味が高まりピラティスを始めるようになって。そうしたら歩くのも、座るのも、物を運ぶのも、日常のあらゆる動作がめちゃくちゃ楽になっていったんです。そんなピラティスの魅力をもっと広げたいと思い、資格を取ってインストラクターに転身し、住まいも逗子に移しました。
ーーSUPとの出会いは逗子に引っ越した後ですか?
フェザーファクトリーで仲良くなった人たちと、よく海で遊んでいたんです。お店から借りたパドルを手に、ウインドサーフィンのボードに立って漕ぐ遊びをしていました。今から十数年前のことでSUPの日本での認知度はほぼゼロの頃。そんなある日、私たちの様子を見ていた方から「SUPというスポーツがあるよ」と声をかけてもらったんです。その方はハワイでSUPを楽しまれていて、「今度一緒に海へ出よう」と誘ってくださって。実際に始めてみたら、とっても面白かったんです。遊んでいるうちに技術も上達していって、それを見たフェザーファクトリーの社長から「SUPのスクールを始めるからインストラクターをしてほしい」と声がかかったんです。人とのご縁に恵まれて、気づけば大好きな逗子でSUPとピラティスのインストラクターになっていました。
お客様にいただく時間を、それ以上にして返せるように
ーーお店やスタジオで心がけていることはありますか?
「貴重な時間を使って、お客様はここに来てくださっている」ということは、いつも心にあります。楽しくて健康にも良いとわかっていても、運動はつい後回しになってしまうもの。でも、うちに来てくださる方は、例えば休日にわざわざ逗子にまで足をのばしてくださっていて。だからこそ、「楽しかった!」と心からの笑顔で帰ってもらいたいんです。レッスンだけじゃなく、お店にいる時間も、人と会話する時も。どうしたらもっと居心地よく過ごしていただけるかなって、いつも考えています。「疲れたからフェザーファクトリーに行こう」とか「今日来てよかったな」と思える場所でありたいなって。
ーー居心地の良さに正解はないだけに、作るのは大変そうです。
以前「自分が居心地いい場所にすればいいんだよ」と助言をもらって、なるほどと膝を打ちました。自分はどんな場所なら寛げるんだろう? どうしたら話しやすくなるんだろう? そう考えたらアイデアが浮かびやすくて、2階に休憩室を作ろう、外にはテラス席や休憩スペース、お店の中にはソファを置こう、接客ではさりげなく人と人をつないで……と、やるべきことが見えてきます。おかげさまで、レッスン後ものんびり過ごしていかれる方が多いですね。現在メンバーは200名ほどで、小さなコミュニティがたくさんあり、新しく入って来られてもすぐになじめるような雰囲気があります。昔からのメンバーさんが、新しく来られた方に自然と声をかけてくださるんですよね。本当に良い方ばかりで、その空気感がうちの一番の自慢ですね。実は、メンバーさん同士でお付き合いしたり、結婚された方もいるんですよ。
紙が、人との距離を少し近づけてくれる
ーーレッスンのスケジュールや沖縄・与論島へのSUP合宿のお知らせなど、壁には色々な掲示をされていますね。
はい、他にもお客様にお渡しするイベントのチラシやスクールの説明資料など、プリントできるものはほとんど自分たちで作っています。申込書を100枚くらい印刷することもありますね。
印刷物ごとに「どうしたら伝わるか」はすごく考えます。言葉や写真の選び方はもちろん、強調したいところを大きくしたりしながら、見やすく、目を引くように工夫しています。「目に入る場所に貼る」「手に取りやすい場所に置く」ことも大切。休憩室がある2階へ上がる階段の壁って、意外と皆さん見てくださるんですよね。
ーーデジタルでの発信もされているんですか?
もちろんメールやWEB、SNSなどでもお知らせはしています。でも、同じ内容でも紙の方がお客様の目に留まりやすいみたいなんです。事前にメールでお送りしているのに、「え、こんな情報来てた?」なんて(笑)。
ーー実際にお店に来ると、その場の雰囲気もあって自然と興味が湧くのかもしれませんね。
SUPの遠征合宿なんかはWEBサイトに申し込みフォームもあるんですが、実際は店頭でのお申し込みが大半ですね。どんなメンバーが申し込みしているのか?
など、やっぱりいろいろ確認してから決断したいみたいで。
印刷されたチラシやパンフレットがあると、不思議とお話もしやすくなりますよね。チラシをじっくり見ている姿から、「興味を持ってくださっているんだな」ってわかりますから。さりげなくお声がけもできますし、紙の物が間にあるとお互いが一歩近づきやすくなるというのかな。印刷物が、会話の良いきっかけになってくれているんですよね。
一人ひとりに、心地よい風が吹く場所に
ーーお仕事のやりがいってどんな時に感じますか?
いくつもあって難しいですが、共通するのは、お客様の世界が少しずつ広がっていく姿を見ることですね。一人で参加して不安そうだった方が、知り合いが増えて笑顔が増えていくとか、ピラティスで身体の動きがよくなって「いつもより一駅分長く歩けた」と教えてくださるとか。「SUPして気持ち良かった!」「いつも頑張っているから海に行こう!」と思ってもらえたらいい。「今日も楽しかった!」と帰っていただけることが、一番うれしいですね。
ーーこれから挑戦したいことや新しい計画はありますか?
今、お店のスタッフたちと一緒に「ウイングフォイル(手に持ったウイング[翼]で風を受けて、水中翼[フォイル]を取り付けたボードで海面を滑走するマリンスポーツ)」にチャレンジ中です。いずれはウインドサーフィン、SUPのようにフェザーファクトリーのサービスに加えるのが目標です。その日の気分や天候に合わせて、一番楽しい時間を過ごしていただける選択肢をもっと増やしたいと思っています。今日は風が穏やかだからSUPをしようとか、今日はピラティスの気分とか。選択肢が増えるほど、お客様はリフレッシュできる可能性が広がりますし、生活がもっと豊かになりますからね。フェザーファクトリーもピラティススタジオも、生活に絶対必要な場所ではありません。でも、だからこそ人生を少しでも豊かにできる場所でありたいと思っています。「また来たい」と思っていただけるような、そんな場所であり続けたいですね。