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ラテアートが導いた、東京原宿のカフェオーナーの道。 誰かを喜ばせたい気持ちを一杯に込めて。

公開日:2021年10月25日

最終更新日:2022年4月28日

Photo :Joji

「ラテアートは飲み物であってこそ」と繰り返し語るのは、東京原宿にあるラテアートカフェ『Reissue (リシュー)』のオーナー・じょーじさん。見た目のかわいさや「映え」だけではなく、美味しく飲んでもらうためにできることを一心に考え続ける彼。一方で、3Dラテアート職人として、日本国内だけでなく香港やスウェーデン、マカオなどで実演講習をする実力者でもあります。その半生は、面白いほどラテアートによって導かれ、動かされてきました。彼だからこそ語りうるラテアートの魅力、アイデア、こだわりをお伺いしました。

PROFILE

じょーじ

3Dラテアート産みの親、原宿のラテアートカフェ『Reissue (リシュー)』のオーナー。月に数百ものラテアートを生み出し、ラテアートを通じたカフェでのひとときを提案し続ける。

ラテアートが引き寄せた、人生のご縁

ラテアートとの出会いは、20歳の頃務めていたフレンチレストランで。そこで初めて「うさぎ」の作り方を教えてもらいました。

うさぎは、フォームを注ぎ込むだけでできるフリーコアの基本的な技術を組み合わせたもの。作り方は簡単。まずはハートを描き、ミルクを注ぎ終えたところで手を止めてミルクを溜め、まるく円を作ってから、そこに目と鼻をピンで描くだけです。

それが「面白いな」と。僕はそれまでハートしか作ってこなかったんですけれども、ラテアートの世界はもっと広いんだなと気付かされて。そこから少しずつ、雪だるまやネコ、クマなどいろんな動物の絵柄を練習していきました。

いくつも描けるようになると、図案を組み合わせるパターンの引き出しがどんどん自分の中に溜まっていくんです。丸と三角を組み合わせれば〇〇ができるし、それをちょっとだけ応用して耳を長くすれば△△になる……というように。続けるうちに、大好きな漫画のキャラクターも描けるんじゃないかと挑戦し、SNSで発表したら思っている以上の反響がありました。

中でも爆発的な反響を呼んだのが、僕がフォロワーのみなさまのリクエストをラテアートに描いたタイミング。1日に3杯ずつ、1ヶ月描き続けて合計100杯のラテアートを完成させたもので、多くの方々が僕の作ったラテアートをSNSのアイコンにしてくださいました。

そうこうしているうちに僕は今までのラテアートから引退したくなったんです。もしかしたらやり切った気がしたのかもしれません。だけど、僕からラテアートをとったら何もないな、と思って。

そんなことを考えたその一年は、立体映像つまり3Dがいろいろと注目された年でもありました。世界初の3D映画が上映され、エンタメ業界でも3Dのハードゲーム機が発売されるなど……。そこから一念発起して思いついたのが、ラテアートを立体にすることでした。

技術的な手がかりとなったのは、ホットチョコレートを作るときに泡立てるフォームミルク。牛乳を泡立てすぎると、上の部分が硬くなってごわごわとした泡ができる。それをうまいこと活用したら、ホイップクリームのようになにかできるかなと。そうして生まれたのが、3Dラテアートです。

ありがたいことに、これも大きな反響がありまして。知らない間に拡散が拡散を呼び、日本だけでなく多くの海外の方にも届いたようです。「日本人がまた変なことをしてる」という感じで(笑)。それを受けて海外のジャパンフェスタで3Dラテアートを紹介したり、カフェの講師をしたりと様々な方とご縁がつながりました。

そんな風にしてご縁がご縁を呼び、いまのカフェ「リシュー」で働くことになるのです。

ラテアート職人でありカフェスタッフでもある

小さい頃からアイデアを形にするのが好きな子供でした。今でも美大出身の絵の上手い人が描くラテアートには叶わないと思いますが、アイデアを凝らして、お客さんを予想外のサプライズなラテアートで喜ばせることにかけては負けません。

それからラテアートは細かく難しい絵を描けばいいと言うものでもありません。アートの部分にこだわるならばいくらでも時間を使えますけれども、まずはドリンクであり、ラテであり、カプチーノなんです。そこが大前提なので、美味しくなくちゃいけませんし、なるべく熱いうちに飲んでもらえるよう早く提供しなきゃいけません。

さらに言えば、泡立てたミルクフォームがコーヒーと分離してしまうので、綺麗なラテアートを見てもらうのも一刻を争います。

感動してもらうラテアートを徹底的につくるというのもひとつですが、最終的にお客さんあってのラテアート。それを忘れてしまうとラテアートとして成立しないと思うんです。

僕自身、お客さんがラテアートを見て喜んでくれることが一番。ですからラテアーティストである以前に、サービスマンであり、カフェスタッフであり、料理人なんです。

喜んでもらうとしても、想定内じゃちょっと物足りない。なるべく想定外のラテアートをお出しできるように、お客さんの人柄や嗜好を探ったり、服装を見たり、お話をする中でその人のことを一生懸命考えて、思いついたアイデアを日々全力投球でぶつけています。

思い出深いのは、入籍した足でカフェに立ち寄ってくださった新婚のご夫婦にお出しした2杯。入籍記念といえば、おふたりの似顔絵を描くとか、結婚おめとうございますといったメッセージあたりが王道だと思うんですが、僕としてはそういうところに落ち着きたくなかった。

それで描いたのが、味噌汁とダイヤモンドのリング。男性の方にはラテアートに豆腐を描き、コーヒー部分を味噌汁に見立て、仕上げには箸を添えて。女性には、カップの取手をリングに、ダイヤモンドを描いたんです。それぞれが、お互いに贈り合うものです、と言って。

そうやって、ラテアートを通じて誰かが喜んでくれることがとにかく嬉しいんです。ラテアートは、気持ちを込めれば込めるほどなにかが伝わるもの。僕にとってそれは誰かと向き合うための、想いを届ける「言葉のようなもの」なんです。

日常の中にあるラテを写しとる

ラテアートの撮影となると、真上から俯瞰写真を撮られることが多いように思います。それは描かれた絵を主体にしているからで、それはそれできれいに写真映えするのですが、僕からは「みなさんが過ごされるカフェタイムの一コマ」をイメージした画角をご提案いたします。

それは、手で持ちやすい位置に取手がきていたり、カフェの空間の中にドリンクとしてのラテアートがあったりというもの。ラテアートはメインになりうるものなんですが、やっぱりそれ自体だけが主役なのではなく、癒しの時間を過ごすためのお供的なポジションというか。そんな風な見え方も、写真のおさまりが良いように思うんです。

ラテアートは、飲むごとにどんどん形が歪んでいきます。描いて、写真を撮って、ラテアートを崩したくないけど飲みたいみたいな。ちょっともったいないけど少し飲んで、ちょっといびつになったのもまた醍醐味。

何を描いてもらおうか考えるところから、飲み終わるまでがずっと楽しいのがラテアート。写真はあくまでもその一コマでしかありませんが、楽しい記憶はずっと残るはずです。

そうして皆さんに楽しんでもらえるラテアートは僕にとって武器というか、これ以外にないというほど僕の「人生」そのものですね。

好きをかたちにするヒント

素敵なラテアートを空間ごと楽しもう

好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。

あたたかな雰囲気を残す

ラテアートを撮影するときに、あたたかな雰囲気ごと伝えるには、光の向きと色温度が大切です。

おしゃれカフェの雰囲気を写す

カフェでの撮影は「何を一番見せたいのか」を意識して撮影するように心がけましょう。お店によっては撮影NGのところもあるので、撮影をしてもよいかの確認をしておくと安心です。

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ラテアートが導いた、東京原宿のカフェオーナーの道。誰かを喜ばせたい気持ちを一杯に込めて。
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2021-10-25