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市原 基「ヒマラヤ水系」

アジア・モンスーン地域の水をテーマに精力的に撮影を続ける市原基氏。
本展は、約4000万年前に始まった造山活動により形成されたヒマラヤ山脈と、その豊かな自然環境に育まれ、生き生きと暮らす人々や動植物の姿を写した作品約70点を展示。神々の座と呼ばれるヒマラヤ山脈とその地域の氷河や大河、そして、その水を中心とした人々の営みとそこに生きる動植物たち。これらすべてをとらえることで、氏の考える「ヒマラヤ水系」が見えてくる。

会期 会場
2009年2月19日~2009年3月30日 キヤノンギャラリー S

作品・展示風景

作家メッセージ

アジアの背骨のように大地に広がる巨大な山脈、ヒマラヤ。南半球にあったゴンドワナ大陸から分かれて北上したインド大陸がユーラシア大陸に衝突し、そのプレートの下へ潜り込んだことで造山活動は始まった。

約4000万年前に始まった活動は約1100万年前には落ち着き、7000~8000メートル級の山々が連なる現在の形に近いヒマラヤ山脈が形成された。

ヒマラヤ山脈の誕生とともに始まった大きな気象現象にモンスーンがある。一年を雨期と乾期に二分し、相反する方向から吹く季節風を「モンスーン」と呼んでいる。モンスーンのメカニズムには、この巨大なヒマラヤ山脈が大きくかかわっている。ヒマラヤの北にあるチベット高原では夏に太陽熱によって上昇気流が発生し、インド洋上で誕生した雨雲をチベット高原に引き寄せて夏の南西モンスーンを発生させる。この雨雲がヒマラヤ山脈にあたって山脈の南側に雨をもたらし、雨期が始まる。

冬の北東モンスーンは、シベリアで発生した大陸性寒気団が南下し、ヒマラヤ山脈にぶつかって山脈の北側に雪を降らせて水分をもたらす。水分が抜けて乾燥した風は、ヒマラヤの南側に吹き下ろして乾期をつくりだすのである。

こうしてヒマラヤ山脈とモンスーンがアジアにもたらす水は、この地域のあらゆる生命と文化を育んできた。数々の霊峰が連なるヒマラヤに端を発した聖なる川は、ガンジス、プラマプトラ、カリガンダキ、ヤルツァンポ、メコン、長江、イラワジなど多くを数え、それぞれに生態系や人々の生活、宗教などと密接な関係を築いてきた。

神々の座と呼ばれる美しいヒマラヤ山脈とその地域の氷河や大河、水を中心とした人々の営み、動物や植物の素顔を通してみずみずしいヒマラヤの表情を描き、平野を流れ大海に至る水を追うことで「ヒマラヤ水系」の表出を試みる企画です。

水は人々の永遠のテーマであり、環境を映す鏡。環境保護が叫ばれる今こそ水と人と地球の関係を見つめなおす意義があると思うのです。

作家プロフィール

市原 基(いちはら もとい)

1948年
徳島県生まれ
1971年
日本大学芸術学部映画学科卒業後、同写真学科に学士入学。
1974年
日本大学芸術学部写真学科卒業後、写真家活動をはじめる。
以降 北極、南極の"氷"、アジア・モンスーン地域の"水"、アフリカの"火とエネルギー"をテーマに氷・水・火の三部作をライフワークとして制作中。
アメリカの「ナショナルジオグラフィック」誌やボーイング社の全世界向け企業広告なども手がける。

所属

社団法人日本写真家協会会員
日本旅行作家協会

著作権について

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