高野 潤 「天空のインカ」
空中都市マチュピチュに代表される、高度な文明を築いたインカ帝国の歴史的建造物。
古くから連綿と受け継がれてきた伝統的な祭りなどの現代社会の様子。1973年から南米大陸のペルー、ボリビアなどアンデス側諸国で取材を続ける高野潤氏は、その二つを軸に写真を通じてインカ帝国を俯瞰的にとらえた。かつて栄華を誇った大帝国の遺跡と、今なお生き続ける壮大な自然や人々の暮らし。本展では、それらをダイナミックに表現した作品を展示。
会期 |
会場 |
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2006年5月18日~2006年6月20日 | キヤノンギャラリー S |
作品・展示風景
作家メッセージ
インカ帝國は12世紀ごろからスペイン人に征服される16世紀初盤まで、現クスコ市を都として北は現コロンビア、南はチリ、アルゼンチン方面まで領土を支配していた大文明であった。 だが、その中心部として主要な遺跡が集まっているのは、マチュピチュをはじめとして雲霧林の峡谷地帯である。インカは精巧の石積みだけではなく、霧や風、空気や水などを含んだ自然環境の選択や応用にも優れていた。
同時に太陽を主神としつつ、山岳や大地、湖にも自然の神々が宿るとして崇めて続けてきた。その信仰は現代の村人の生活や祭りの中にも受け継がれている。
インカが征圧征服した地方文明の中でも、より強大な敵であったと思われるのが、北ペルーのチャチャポヤス王族の文明である。この文明は雲霧林帯に築かれたグラン・パハテンをはじめとした大規模な都市や要塞、そして墳墓の遺跡を残している。
征服した部族の多さや、その領土の広大さを知るほどインカの偉大さが蘇ってくる思いがする。
マチュピチュをはじめとする比類なき石造建築、それらを包みながら天空の時間で呼吸する神々の峰や高原と湖。そこで生きる人々や彼らの祭り。それらを通して、失われた大帝國インカの世界を構成してみた。
作家プロフィール
高野 潤(たかの じゅん)
1947年、新潟県生まれ。
1972年、写真学校卒業。
1973年からペルー、ボリビアをはじめとしたアンデス側南米諸国に通い、インカの遺跡や大自然、人々の生活を撮り続ける。
主な作品集や著書として、『大いなる山脈アンデスの貌(Newton books)』(教育社)、『アンデス大地』(山と渓谷社)、『どこまでも広く ~カリブの海から風のパタゴニア~』(情報センター出版局)、『雨の日 ~梓川源流・上高地の水~』(小学館)、『山の雨 ~上高地・幽玄森閑~』(岩波書店)、『アンデス家族(理論社ライブラリー 異文化に出会う本)』(理論社)、『アンデス ~風と霧の聖跡~』(集英社)、『アンデス食の旅 ~高度差5000mの恵みを味わう~』(平凡社新書)、『インカを歩く』(岩波新書 新赤版)、『アマゾン源流生活』(平凡社)など多数。
著作権について
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