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立木 義浩「桂林 - 悠久の日々」

キヤノンギャラリー Sの幕開けを飾った本展。水墨画でおなじみの仙境の地、桂林を訪れた立木義浩氏は、桂林の美しい景色はもとより、そこで生活する人々の日常や、たくましく生きる人々の表情を余すところなくとらえた。
約90kmにも及ぶ奇岩、奇峰が立ち並ぶ中をゆるやかに流れゆく漓江。その河の恵みを享受しながら生きる人々の姿やその暮らしぶりから、立木氏がこの地で出合った自然の素晴らしさが伝わってくる。

会期

会場

2003年5月8日~2003年6月27日 キヤノンギャラリー S

作品・展示風景

作家メッセージ

水墨画でおなじみの仙境の地、桂林。そこを流れる漓江の川下りを楽しむ幸運に恵まれる。90キロに及ぶ奇岩・奇峰が林立する中をゆるやかに時間をかけて眺めつつ、一献かたむける筈であった。テレビ生中継のため時間との勝負とあいなり、とても銀塩での撮影では無理との御達しである。さらばと初めてデジタル・カメラ小脇に抱えて、あとは猪突猛進あるのみ。目の前の絶景、空前絶後の桃源郷をあます所なくカメラに収めようとする事自体が愚かしいと気付くまで結構な時間が過ぎる。
山は自然のすべての風景の始めであり終わりであって、自然を翻訳するとみんな人間に化けてしまって、崇高、偉大、雄壮など人格上の言葉になって仕舞うから面白い。つまり大自然の懐の中で、この河によって生かされている人々の表情なくして奇峰も立ち上がって来ないのだと思い至る。
が、この悠久の自然を前にして文人墨客逍遥するに良しという風には余裕がなくて、とてもじゃないが旨くいく筈がない。

逢うは別れの始まりなのは写真も同じだが漢詩や唐詩にも別離を詠ずる作が多く、友情を主題とするものが少なくない。一期一会の気持ちで丁寧に撮影するのが一番だとある詩を思い出す。

君にすす勧む 金屈巵(きんくっし) コノサカズキヲ受ケテクレ
満酌(まんしゃく) 辞(じ)するを須(もち)いず   ドウゾナミナミツガシテオクレ
花(はな)発(ひら)いて風雨(ふうう)多(おお)く   ハナニアラシノタトエモアルゾ
人生(じんせい) 別離(べつり)足(た)る   「サヨナラ」ダケガ人生ダ

井伏鱒二 訳

作家プロフィール

立木 義浩(たつき よしひろ)

1937年 徳島県・徳島市の写真館に生まれる。
1958年 東京写真短期大学(現・東京工芸大学)卒業。
卒業後、広告制作会社アドセンターを経て独立、
以降フリーとして現在に至る。

個展・作品集

1970年
「GIRL」「イブたち」
1973年
「花咲くMs. たち」
1979年
「人間・柴田錬三郎」「フランス一人旅」
1980年
「MY AMERICA」
1983年
「細雪の女たち」
1988年
「未来架橋」
1989年
「写心気30」
1990年
「家族の肖像」
1993年
「大病人の大現場」
1996年
「親と子の情景」
1999年
「東寺」
2001年
「KOBE・ひと」
2002年
「およう」
2003年
「after the working・8X10」
-他多数-

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