海外で暮らしてわかった日本の自然の魅力
2021年にファームフレッシュを設立しました。当初は、日本に住んでいる外国人向けに生産者さんから仕入れた野菜と果物をお届けしていました。今では自分でも畑作業をするようになり、自身の畑で採れた野菜やコーヒー豆などの加工品もお届けしています。プライベートでは、高崎映画祭事務局のお手伝いや、地域の神社のイベント、こども食堂のお手伝いもしています。
タンザニアで外国人として3年間を過ごした経験が、今の事業を始めるきっかけでした。外国人という立場では、行く場所や食べるものを選ぶ場所が限られており、積極的に地元のマーケットに行っていたものの、なかなかその土地のもの、季節のものが手に入りづらいと感じていました。
日本に帰ってきた後は、日本の四季の美しさを伝えられるような仕事がしたいと思っていました。そんな矢先、映画の撮影現場でのアテンドと通訳を依頼され、初めて高崎に来ることになり、その際にアテンドした方と、高崎のレストランはもちろん、畑や和菓子屋さんなど、さまざまな「食」の現場をご一緒し、その現場で生産者さんからお話をお聞きするなかで、「こんな素敵な想いを持っている生産者さんの商品を、もっと広めたい」と思うようになりました。また、生産者さんからとても親切にしていただいたので、その恩返しもしたいという気持ちも生まれて、そうして高崎への移住を決めました。
海外で外国人として生活していると、美味しいものがあっても自分ではたどり着けなかったという私自身の経験から、日本で生活をしている海外の方には、日本の四季折々の美味しい食を楽しんでもらいたいと思ったのです。日本には当時、外国語対応している野菜の通信販売サービスがなかったので、まずは外国の方を切り口にビジネスをスタートしました。当時はコロナ渦で、あらゆることがストップし、食の大切さを実感したタイミングでもありました。
生産者さんの想いを手紙に込めて
ファームフレッシュでは、減農薬、無農薬にこだわった美味しい野菜を過剰梱包せず、畑から採れたそのままの形で箱に詰めてお送りしています。その野菜や果物は、色味や姿形が良いわけではありません。でも、そうしたナチュラルな姿をお客様にお届けすることが信頼につながり、畑をもっと身近に感じてもらえるのかなと思っています。
ECサイトのみの通信販売なので、箱には野菜リストと一緒にお手紙を添えて送るようにしています。こだわりを持った生産者さんの商品を取り扱うので、お手紙にはその生産者さんのこだわっているポイントや、美味しくいただくコツを記載しています。
オーダーが入ると、まずは野菜の在庫を確認し、リストを作成します。同時に、お手紙も作って、送付状も準備しておきます。発送する当日は収穫や集荷に行き、その場で箱に詰め、出力したお手紙を添えて、送付状を貼って送ります。新鮮なうちに召し上がっていただくためにもスピード感を持って対応するようにしています。
プリンターから社名とメッセージの入った印刷物が出てくると、「このお客様に送るんだ」ということを改めて実感し、責任も感じます。
紙だから伝わる想いと体温
手紙を添えるのは、一つひとつ丁寧に育てられた野菜だからこそ美味しく食べていただきたいし、魅力を伝えたいという想いからです。手紙は、野菜の特徴や魅力、生産者さんの伝えたい想いを文章にしてデザインし、印刷します。そして、プリンターで印刷した手紙には必ず一言、手書きのメッセージを添えています。
伝えたい想いや温度感は、直に触れて初めて伝わってくるものだと思いますし、箱を開けた時に手紙が入っていると嬉しいものです。そうした、ちょっとしたワクワク感もお客さまに感じてほしいなって思います。
私にとって手紙とは、お客さまとの大切なコミュニケーションの場所です。ECサイト経由なので、お客様とコミュニケーションをとる場所は限られていますが、「魅力が伝わったから、より美味しく食べることができた」、「手紙で説明をしてくれたから、食べ方が分かった」などのお声をいただくと、続けていてよかったと感じます。
偶然の出会いを生む、手作りのチラシ
最近はECでの通信販売だけではなく、イベントに出店する機会も増えました。出店の際は店のしつらえやPOPやラベルにもこだわって、オリジナルでデザインをして出力します。POPは「この野菜はこういう風に食べたら美味しい」とか、一言添えるだけでお客さまとの会話が広がったりするので大変重要です。
販売イベントや高崎映画祭などのイベントの告知は、SNSなどのオンラインがメインですが、チラシを手配りすることによって偶然通りかかって手にとってくれた人が来てくれることも多くあります。チラシは、そのイベントを開催する場所の近くで配ることが多いので集客に効果的なのです。
また、手渡しで直接チラシを受け取ると主催側の想いが伝わると思っています。実際、「あの時、チラシを貰ったから来たよ」と声をかけられたことが何度もありました。偶然チラシを手にとった人が来てくれて、そこで一期一会の出会いが生まれる。それはすごく美しいことだと思うので、デジタルを活用しながら手渡しのチラシも活用して、もっと集客を広げていけたらいいなと思います。
生産者さんとお客様の懸け橋に
自分の子どもが生まれてから、子どもたちを大切に思う気持ちが強くなったのもあり、子ども食堂のお手伝いもしています。子どもたちが大きくなるには何より食が大切です。だからこそ、なるべく農薬を使ってないものや、安心できる安全なものを食べてほしいという想いから野菜を提供しています。
仕事や活動の原動力は、これまで家族同然に良くしてくださった生産者さんに恩返しをしたいという想いです。また、自分が生産者さんに良くしていただいたように、お客様や子どもたちにも何かしたいという想いもあります。
これからも生産者さんにもお客様にも、そして子どもたちにも喜んでもらえるよう、心を込めて仕事を続けていけたらと思っています。
POINT
- デジタルと手紙を組み合わせると、お客様とのコミュニケーションの接点が増える。
- 手紙や手作りのPOPは、ECサイトでは伝わりにくい商品の裏側にある
想いやこだわりなどが届けられる。 - SNSだけでなく、チラシを手渡しすることで、お客様との偶然の出会いも生まれる。