このページの本文へ

TranCis

22 古見きゅう

TranCis

鉄道写真
SCROLL

about

広田尚敬

古見きゅう (ふるみ きゅう)

1978年生まれ。東京都出身。本州最南端の和歌山県串本町にて、ダイビングガイドとして活動したのち写真家として独立。独特な視点から海の美しい風景だけでなく、海の生き物たちの暮らしや繋がり、海の環境問題など、水中のありのままのドキュメントを作品とし、ナショナルジオグラフィック誌からビッグコミック誌まで、幅広いジャンルの媒体で水中写真をコラムや記事で発表する。近著に『海の聲をきく』(小学館)、『世界でいちばん素敵な魚の教室』(三才ブックス)を発行し、写真展も多数。2016年には水中撮影プロダクション「And Nine株式会社」を設立。近年は、8K高解像度の水中映像作品制作も精力的に行い、企画、撮影、編集まで一括して担う。大手企業のPVや大型商業施設、テレビ番組などへの映像提供も数多い。NHK『ダーウィンが来た!』、MBS『情熱大陸』など、人気番組への出演および撮影も行う。
幼い頃から、たびたび体感してきた“ある感覚”があった。
「世界のあっち側とこっち側」のような、
自分の存在が分からなくなるような感覚。

「自分は何のために生きるのか?」
「なんでここにいるのか?」
「自分の存在って本当に在るものなのか?」
「いま目に飛び込んでいる世界自体、
全部嘘か夢なんじゃないのか?」

人と魚。つまりは僕たちと自然との関係とは、
一体何なのだろう。

向こうから見た景色と、こちらから見えた景色の違い。
陸上の世界と、水中の世界の区別。
生きることと、死んでいくという表裏の連続性。
ずっと一緒にいたいけれど、いられないという寂しさ、
そして矛盾。

時々海の中から見上げると、雲が綺麗に見える時がある。
この隔たりがあるからこそ、
ここにいる魚たちをこんなにも愛しく思えるのかもしれない。

水面という境界を潜り抜け、
行き来を繰り返しながら、
魚たちの世界に、彼らに見えている景色に少しでも近づき、
彼らの存在を少しでも理解したいと願っている。
  • まだ陽の低い、熱帯の島の朝が好きだ。
    特別に何かを狙って撮るというよりも、
    カメラを持って眠気覚ましに歩いている時間が心地よい。
    漂う緑の空気は深く濃い。
    遠くで響く鳥たちの囀りに耳を傾け、
    このねっとりとした湿度を感じながら、
    反射的に能動的にシャッターを切る。
  • いつも通り撮影に集中していたら、
    みるみるうちに太陽が雲にのまれ、
    海中は漆黒の世界に染まっていった。
    どうやらスコールが
    僕らの頭上を通過したようだ。
    雨が叩く水面の裏側には、
    無数の波紋が
    小さく浮かび上がっては消える。
    音の少ない海の中で聴く雨音も、
    悪いもんじゃない。
  • ウミトサカという柔らかいサンゴの仲間は、
    ポリプと呼ばれる触手部分が非常に色鮮やかなものが多く、
    非常に好みの被写体だ。これまでは鮮やかな、
    そのポリプの色だけに意識を持っていかれていたが、
    ある時、幹部を透過する光に気がつき、
    その透明感に感動させられた。
  • 狭い水中の洞窟の中に
    差し込む陽の光が美しい。
    雲の動きの加減で
    光の筋の強弱も変わっていく様は、
    生き物の表情を眺めているよう。
    じっくりと時間をかけながら
    光芒を捉えていると、
    己の美しいヒレを誇示するように、
    ハナミノカサゴが
    フレームに入り込んできた。
  • なるべく自分の目で見える景色を、
    そのまま写真に写し込みたいと思う。
    水が青く透き通っていても、
    緑に濁っていてもかまわない。
    目の前にある景色をあるがままに写し、
    生き物たちがのびのびと生きる様を
    表すことができたら嬉しい。
  • ひと夏の間、ずっと潜りに潜って少し疲れた午後のこと。
    早めに潜水を切り上げひとり水面に浮上し、
    ぷかぷかと浮かびながら、泳ぎもせず凪の海を漂っていた。
    コバルトブルーの海は美しく、
    ダイバーたちは嬉々として
    海中を楽しんでいたが、
    同時に、一輪の泡に夏の終わりを感じた。

information

500部限定販売

タイトル
TranCis
発行年
2026年
仕様
240mm×240mm ラスター(ハードカバー)
80ページ 68点収録 豪華化粧箱付
サイン入りオリジナルプリント付
(240mm×240mm)
印刷
DreamLabo 5000
価格
29,150円(税込・送料込)
PHOTOGRAPHERS’ ETERNAL COLLECTION Vol.22 古見きゅうのご購入はこちら