鈴木 サトル 写真展「フクザツ ～Something just like this～」

私は普段から街に出かけスナップを撮り続けているが、そこで常に追い求めているのは「ドラマ」である。しかし実際に街中でドラマティックなことが頻繁に起きるわけではないのは周知の事実であり、私もそれは承知の上である。ではどうするか…？答えは見る側が感性を豊かにさせ、そこにドラマを見出すことである。写真の表現として、撮り方見せ方で、何でもない一瞬をドラマ化できる。それが私のスナップ写真のテーマであり、常に目は光らせている。

今回は東京、渋谷・原宿をメインに、コロナ禍も収束に向かおうとする2023年を中心に街や人々の様子を収めている。もう世の中も大丈夫と思う人もいれば、まだまだ警戒色の強い人もいる。また世の中になんとなく流れる不安定な空気感が言葉にならない言葉を発しているようにも感じて、何ともフクザツなものばかりを好んで撮ってしまったが、それこそがその時代のリアルでありドラマであり私自身だったのだと気づいた。

フクザツ…人の感情は色々あり喜怒哀楽はわかりやすいが、いずれかが交じり合う、あるいはそれ未満というあいまいな領域。しかしそれは正直なものだ。
Something just like this...
嘘のない美しさがそこにはある。