このページの本文へ

GRAPHGATE企画展 奥田 峻史 作品展「地に足をつけて、浮く」

公開日:2026年9月8日

本展は、2025年にキヤノンマーケティングジャパンが開催した第3回 写真・映像作家発掘オーディション「GRAPHGATE(グラフゲート)」においてグランプリを受賞した写真家/映像作家・奥田峻史氏による個展です。
奥田氏は、自身や身近な家族にカメラを向けながら、身体を持って生きることの実感や、一人ひとりの存在のかけがえのなさを写真と映像で探求してきました。昨年の「GRAPHGATE」では、作品に込められた明確なメッセージ性と高い完成度、今後の可能性に加え、自身の制作意図を的確に伝えるプレゼンテーションも高く評価され、グランプリを受賞しました。
グランプリ受賞の副賞として開催する本展では、映像作品「クウを掘る」「ヤケグイ」、写真作品「食欲は、食べているうちに湧いてくる」「Buoyance」の4シリーズを展示します。人生の終末期を迎えた祖父母や共に暮らす妻、そして自身の身体に向き合った作品群を通して、食べること、呼吸すること、衝動にまかせて身体を動かすことといった営みに宿る生命の「浮力」を見つめます。
​奥田氏が捉えるのは、身体の重みや不自由さを抱えながらも、それぞれのかたちで今日を生きようとする人々の姿です。本展は、身近な存在との関わりの中から浮かび上がる「存在の肯定」をテーマに、私たちがこの世界に生きていることの実感をあらためて問いかけます。
展示する写真作品はすべて、キヤノンのプリンター「imagePROGRAF PROシリーズ」でプリントし展示します。​

開催日程 会場
2026年11月13日(金)~12月15日(火)
10時~17時30分(日曜・祝日休館)
キヤノンギャラリー S(品川)

作家メッセージ

このからだから逃れて、自由になれたらいいのに。
いつからか、そう思っていました。
ままならないからだを引きずりながら生きていく果てしなさを思うと、身動きが取れなくなるのです。
けれど、もうここにある重みから目をそらしても、虚無感が募るばかり。
自分の呼吸さえあやしくなり、生きる実感がどこにも見当たらない、地に足のつかない迷子のようでした。

そんななか、引き寄せられるように、カメラを向けた先がありました。
それは身近な人たちでした。
共に生活をすることになった妻。
末期がんが見つかった祖父母。

彼らは、自らにのしかかる重力などおかまいなしに、内側からの衝動によって軽やかに浮かびあがり、その日、その瞬間を生き抜く道を示しているようでした。
わたしの目の前で熱を放つその姿に、確かな「存在の肯定」を感じたのです。

重たい手や足を動かすこと、胸が呼吸に伸び縮みすること、そのすべてが、そのひとで、わたしもそうなのだ。そのことが腹に落ちるとき、目の前の世界が立ち上がってくる。
わたし自身の呼吸もまた実感できる。
遠い場所のことが手のひらに届く時代でも、からだはこの地面の上にあって、ここから世界を見て、触れて、食べて、ここに存在する実感を掴み、見失っては、また掴もうとする。
その、くり返し。
くり返し、くり返し、くり返し、くり返し、くり返し、掴もうとする。
もうベッドから動けなかった祖父母も、今日を生きる妻、そしてわたしも。
そんなくり返しは、しかしそのどれもがまぎれもない一度きりの、ほかの誰にもできないダンスのようです。愚直で、軽やかな、ダンス。

トークイベント・ギャラリートークのご案内

(1)ギャラリートーク

日時
2026年11月14日(土)16時~
会場
キヤノン S タワー1階 キヤノンギャラリー S(住所:東京都港区港南2-16-6)
ゲスト
天野太郎氏(東京オペラシティアートギャラリー/チーフ・キュレーター)
申し込み
不要
  • 入場を制限させていただく場合がございます。予めご了承ください。

ゲスト 天野太郎(あまのたろう)氏 プロフィール

撮影:池田宏

北海道立近代美術館、横浜美術館、横浜市民ギャラリーあざみ野主席学芸員を経て東京オペラシティアートギャラリー、チーフ・キュレーター。札幌国際芸術祭2020統括ディレクター。横浜トリエンナーレ』でキュレーター(2005年、2011年、2014年)を務めた。国内外での数々の展覧会企画に携わる。横浜美術館での担当展覧会に、『戦後日本の前衛美術』展(1994年)、『ルイーズ・ブルジョワ』展(1997年)、『奈良美智 I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.』展(2001年)、横浜市民ギャラリーあざみ野での担当展覧会として、『考えたときには、もう目の前にはない 石川竜一』(2016年)、『新井卓 Bright was the Morning一ある明るい朝に』(2017年)、『金川晋吾 長い間』(2018年)、東京オペラシティアートギャラリーでは『石川真生 私に何ができるか』(2023)。

(2)トークイベント

日時
2026年11月21日(土)14時~15時30分
  • 13時30分 受付開始・開場
会場
キヤノン S タワー2階 CANON INNOVATION LAB "WITH"(住所:東京都港区港南2-16-6)
ゲスト
為末大氏(東京大学 先端科学技術研究センター 附属包摂社会共創機構 教授)
定員
70名(先着申し込み順、参加無料)

ゲスト 為末大(ためすえだい)氏 プロフィール

1978年広島県生まれ。法政大学経済学部卒業。
中学時代より陸上競技をはじめ、男子100mから400mを経て400mハードルに転向。2001年世界陸上エドモントン大会にて47秒89の日本記録を樹立し、日本人として初めて世界大会スプリント種目でのメダル(銅)を獲得。2005年世界陸上ヘルシンキ大会でも銅メダルを重ね、シドニー・アテネ・北京の3大会連続オリンピック出場を果たした。現在も同種目の日本記録保持者。「走る哲学者」として知られる。
2012年の現役引退後は、スポーツ・教育・テクノロジー・社会包摂の交差点で多彩な活動を展開してきた。東京大学では、多様な背景を持つ人々が共に生きる社会の実現をテーマに研究・実践に取り組む。
主な著書に『熟達論』(新潮社)、『諦める力』(プレジデント社)、『Winning Alone』(プレジデント社)、『走る哲学』(扶桑社)など。

展示予定の作品

クウを掘る/video/2026
食欲は、食べているうちに湧いてくる/photography/2024
ヤケグイ/video/2025
Buoyance/photography/2025

作家プロフィール

奥田 峻史(おくだ しゅんじ)

1999年 奈良県奈良市生まれ。
高校時代、友人や街で出会った人々の語りをビデオカメラで記録し始めたことを機に、映像および写真制作をはじめる。以降、独学で作品制作を続け、現在は写真家/映像作家として活動。人間のからだが根源的に持っているエネルギーや、その「個別性」を軸に、個と世界との関わりについて探究する作品を発表している。

著作権について

当写真展関連ページに掲載されている写真の著作権は作者に帰属します。
これらのコンテンツについて、権利者の許可なく複製、転用などする事は法律で禁止されています。