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第12回 RF70-200mm F4 L IS USM

「RFレンズってどうなのかな?」「いい評判は聞くけど、なかなか手が出ないよね……」と気になっている皆さんのための連載です。
フォトグラファー・中西祐介さんが、毎回1本のRFレンズを本気で試し撮り。〈買い〉かどうかを率直に判定します!

今回から3回にわたりRFレンズ「F4 L」シリーズ全3本(RF70-200mm F4 L IS USMRF24-105mm F4 L IS USMRF14-35mm F4 L IS USM)を紹介します。カメラファンには「小三元」として親しまれる新たなF4 Lのラインアップ。第一打席に登場するのは、小型・軽量な中望遠ズームレンズ「RF70-200mm F4 L IS USM」。さて、その実力は?
中西さん、いかがでしたか?

このRFレンズ〈買い〉ですか?

写真と語り:中西祐介(フォトグラファー)

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:135mm)・F4・1/1600秒・ISO100
作例1

RFレンズF4 Lシリーズをバッグに詰め込んで、伊豆大島(東京都)にロケを敢行しました。竹芝客船ターミナル(竹芝桟橋)からジェット船に乗り、わずか1時間45分。大島の港に到着すると空は晴れわたっていました。

船から降りたってまず一枚。夏らしい雲と海、灯台、そしていま乗ってきたジェット船を入れて撮影。これから始まる旅の高揚感を写したくてシャッターを切りました。都心で暮らしていると見過ごしてしまいがちな雲の表情、空の色、島の雄大な景色が、私の心を晴れやかにしてくれました。

RF70-200mm F4 L IS USMは、中望遠レンズであることを忘れてしまいそうなほど小型・軽量なズームレンズ。いつも使用しているRF24-70mm F2.8 L IS USMよりもひと回り小さく、パッと構えて撮りたい場面でも全くストレスを感じません。この旅で出番が増えそうな予感です。

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:70mm)・F4.5・1/250秒・ISO100
作例2

大島ロケでは第64代ミス大島・白井理珠(りず)さんにアテンドいただき、名所を案内してもらいました。島の伝統的な衣装に身を包んだ佇まいがすてきな女性で、キリッとした雰囲気の横顔を撮らせてもらおうと、立ち寄った竜王崎灯台でポートレートを撮影しました。

すぐそこに広がる海から潮風を感じながらの一枚。大島で生まれ育ち、大島のために活動していきたいと語る姿がとても印象的でした。

背景の灯台を自然にぼかしながら人物を引き立てるためにチョイスしたのがRF70-200mm F4 L IS USM。特に目の表情の強さを表現したかったので、フォーカスはしっかり目に合わせました。フォーカス部はしっかりとシャープに、背景に向かってなだらかにフォーカスアウトしていくのが理想的な描写です。RF70-200mm F4 L IS USMが見事に再現してくれました。

RF70-200mm F4 L IS USMで撮影されたご自分の姿を確認するミス大島と中西さん

大島のほぼ南端に位置する波浮港(はぶみなと)近く、明治時代に建造された旧甚の丸邸付近で。RF70-200mm F4 L IS USMで撮影されたご自分の姿に、ミス大島も感嘆の声。

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:86mm)・F6.3・1/320秒・ISO100
作例3

その翌日、朝から三原山に向かいました。伊豆大島は島全体が活火山。島の中央に位置する三原山は島のシンボルです。宿泊先でガイドさんと合流して登山ルートに入っていきます。午前中は小雨と濃霧で、目の前の景色が見えない状況だったのですが、午後になると天気が一変、太陽が山肌を照らしてくれました。

ハードな登山ではないとはいえ長時間のトレッキング。できるだけ機材は軽くしたいと考えていました。こんなときはRFレンズのF4 Lシリーズは本当におすすめです。荷物はコンパクトにまとまりますし、小型・軽量ズームレンズがこれほどありがたいとは。今回の撮影で、身を持って知りました。

RF70-200mm F4 L IS USMは、ボディー内手ブレ補正機構を内蔵したEOS R5との協調により最大約7.5段分の手ブレ補正効果が得られます。三脚の持参をやめて全て手持ち撮影に切り替えることができました。

標高758mの三原山山頂付近。山肌から湯気が上がっているのがわかり、山は生きていると実感できる風景です。

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:138mm)・F6.3・1/500秒・ISO100
作例4

三原山山頂付近から登山ルートを進んでいくと左手に伊豆七島が見えてきました。右側が利島、奥には神津島の眺望。すぐにRF70-200mm F4 L IS USMを構えてシャッターを切ります。肉眼で見た景色をそのまま写真に閉じ込めることができました。

遠くの島を引き寄せて撮影したい場合は200mm程度の望遠レンズが必要だと思いました。荷物の重量を考えると標準ズーム1本で済ませたくなるところですが、中望遠で撮れるのはまた別世界。RF70-200mm F4 L IS USMは、山歩きにもできるだけ多くのレンズを持っていきたい願望を叶えてくれます。理想以上のコンパクトさと高画質の両方を追求した、まさに理想のレンズです。本当に持ってきてよかった!

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:169mm)・F4・1/250秒・ISO100
撮影協力:東京都立大島公園動物園
作例5

次に向かったのは、東京都立大島公園動物園です。名前を見て改めてここが東京都であることを思い出しました。この公園は火山島である伊豆大島の溶岩の地形をそのまま生かした公園です。

写真はバーバリーシープという羊とヤギの中間のような姿がユニークな動物です。岩場のてっぺんで微動だにせず佇んでいました。岩場の高さを表現するために背景をぼかして撮れる位置を探して、バーバリーシープの体の特徴がわかるよう真横から撮影しました。

撮影後に写真を拡大してみると、過剰にシャープ過ぎず、柔らかい毛並みの質感がよく再現されていると同時に、足元の硬そうな岩の表情もリアルに描写することができました。RF70-200mm F4 L IS USMは本当に守備範囲が広くて、一本持っているとさまざまな被写体に対応できる優れたレンズだと感じました。

ズームを最大に繰り出しても全長はご覧のとおりコンパクト。気が向いた場面でサッと構えて200mmの中望遠撮影が楽しめるレンズです。
ズームを最大に繰り出しても全長はご覧のとおりコンパクト。
EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:75mm)・F4・1/20秒・ISO500
作例6

三原山の山頂に向かう前に森の中を散策。天候は雨で霧がかかっていました。全身とカメラを雨具で包んで歩き始めます。せっかくなので雨天ならではのしっとりとした湿度を表現したくて、さまざまなものにレンズを向けました。

レンズの性能は、写真で湿度を表現するとき明確になると考えています。湿度の高い空気感を描写するときは、ハイライトとシャドウ部の間がとても緩やかなトーンになるため、天候のいい日にパキッとコントラストの高い写真を撮るよりも細かい部分を描き出す力が必要になるからです。そんな課題をRF70-200mm F4 L IS USMはしっかりとクリアしてくれました。

私が現地で感じた湿気と温度、そしてちょっと冷たい空気。それら全てをレンズに託してシャッターを切りました。

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:171mm)・F8・1/800秒・ISO100
作例7

この日、最後の撮影です。海を眺めながら少しずつ光が色づいていくのを確認してシャッターを切り続けます。わずかな光の表情の変化を目の当たりにするのはいつ以来でしょうか。

流れていく雲の隙間から太陽光が差し込んで海を照らしています。海と雲を画面いっぱいに入れて降り注ぐ光芒を撮ることにしました。強い風に流された雲の表情が変わっていくなかでベストタイミングを探します。

1時間ほどカメラを構えて撮れたのがこの写真です。ハイライトからシャドウ部の間に入る光芒の表情を見事に再現してくれました。逆光でフォーカスが迷ってしまうかなと思いましたが、RF70-200mm F4 L IS USMのAFは快速で、スパッと瞬時にフォーカスしてくれて気持ちよく撮影できました。

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:120mm)・F4・1/125秒・ISO1600
撮影協力:アイランドスターハウス・竹内英さん
作例8

アイランドスターハウスという個性的で楽しい雰囲気の宿のオーナーを撮影しました。ここに別荘のような宿を作った経緯や大島での生活などお話をうかがいながら、彼が醸し出す優しい空気を写したいと思いました。

室内は外からの光と柔らかい照明が入り混じり、その場の雰囲気をそのまま伝えるために感度を上げて地明かりだけで撮影しました。ISO感度1600、絞りはF4開放に設定。シャープさとソフトな空気感が同居した写真を作り出すことができました。もちろん手持ち撮影です。

いい色に日焼けした肌やTシャツの質感もいい感じで再現できました。これも被写体になっていただいたオーナーのおかげですね。ポートレートにも対応できるRF70-200mm F4 L IS USMは、旅に欠かせない一本になりそうです。

RFレンズF4 Lシリーズの代表選手として〈買い〉です!

EOS R5に装着されたRF70-200mm F2.8 L IS USM

これまでキヤノンの中望遠ズームは、EFレンズの初代EF70-200mm F2.8L IS USMEF70-200mm F4L IS USMから、RFレンズのRF70-200mm F2.8 L IS USMまでずっと使ってきました。今回のRF70-200mm F4 L IS USMは、小型・軽量と高画質の両方を兼ね備えた革新的なレンズでした。旅やスナップ、ポートレート撮影などオールジャンルで活躍しそうです。

WIDE時の全長は119mmと短いので、カメラバッグのサイズもひと回り小型化できますし、肩や首からカメラを提げていても重さや疲れを感じません。最も重要なことですが、これほど小さくなっても高画質であることや手ブレ補正機構などのクオリティには妥協していません。今回はEOS R5との組み合わせで使用しましたが、EOS R6やEOS RPなどのボディーとも相性抜群だと思います。

その魅力を一言で表すなら、こういうことだと思います。

このコンパクトさ、理想以上。中西祐介
第64代ミス大島・白井理珠さんと旧甚の丸邸にて

第64代ミス大島・白井理珠さんと旧甚の丸邸にて。東京都にこんな魅力的な島があるとはうれしい驚きの連続。各所のご案内をいただきありがとうございました。

一般社団法人大島観光協会

撮影協力:
一般社団法人大島観光協会

プロフィール

中西祐介
中西祐介(なかにしゆうすけ)

1979年 東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、講談社写真部、アフロスポーツを経て2018年よりフリーランスフォトグラファー。

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第12回 RF70-200mm F4 L IS USM
https://personal.canon.jp/articles/interview/nakanishi/column12
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/interview/nakanishi/column12/image/nakanishi12.jpg?la=ja-JP&hash=9BE7798AB328D5BF29EE862A9B04B517
2021-07-30
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