第13回 RF24-105mm F4 L IS USM
公開日:2021年8月23日
「RFレンズってどうなのかな?」「いい評判は聞くけど、なかなか手が出ないよね……」と気になっている皆さんのための連載です。フォトグラファー・中西祐介さんが、毎回1本のRFレンズを本気で試し撮り。〈買い〉かどうかを率直に判定します!
東京・伊豆大島の名所を巡りながら、RFレンズ「F4 L」シリーズ全3本(RF70-200mm F4 L IS USM、RF24-105mm F4 L IS USM、RF14-35mm F4 L IS USM)を1本ずつ紹介する特集のパート2。幅広い被写体に対応するLレンズの標準ズーム「RF24-105mm F4 L IS USM」の登場です。さて、その実力は?
中西さん、いかがでしたか?
このRFレンズ〈買い〉ですか?
写真と語り:中西祐介(フォトグラファー)
広角から中望遠域までカバーする利便性の高いズームレンズRF24-105mm F4 L IS USM。EFレンズにも同じ焦点距離のレンズがあり、長らく定番として親しまれてきましたが、RFレンズ版の24-105mmは大きく進化しているようです。
1枚目の写真は、前回も登場していただいた第64代ミス大島・白井理珠さんのポートレートです。明治時代に建てられた旧甚の丸亭の玄関先で撮影しました。引き戸のガラスに映り込む姿を入れ込んで、タイムスリップしたような雰囲気を意識しました。白井さんのキリッとした目の表情が力強く、期待どおりの一枚に。ガラスへの映り込みもクリアに描写できました。
窓から入ってくる自然光がきれいなトーンを作っていたので、その場の光を最大限に生かして撮影しました。人物と同じように光にも多彩な表情があります。この瞬間は穏やかで優しい光を撮りたいと思いました。
万能タイプのRF24-105mm F4 L IS USMですが、いわゆる「ポートレートレンズ」として特に有能です。人物撮影をするとき私がよく使うのは焦点距離80mm以上の中望遠域。RF24-70mm F2.8 L IS USMで撮っている流れで人物も撮りたくなった場合、レンズ交換が必要となりますが、RF24-105mm F4 L IS USMであればレンズ交換なしで完結できます。限られた時間で撮影する場合、レンズ交換の手間を省けるのは大きなメリットです。
RFレンズが素晴らしいと感じるのは、あたかもその場の空気や温度まで含んだように表現できること。そういったニュアンスは数値やスペックでは表せないものですが、私がレンズを評価する上で最も重要視しているポイントです。今回のRF24-105mm F4 L IS USMにもそういった魅力を感じました。
伊豆大島のシンボル、三原山です。この日は天候の変化が激しく、風に流される雲によって空の表情が目まぐるしく変わっていきました。雲が作り出す影の演出が面白くてたくさんシャッターを切りました。
ハイライトとシャドウが混在するシーンでも、RFレンズはトーンの再現性が優れていると感じます。現像ソフトを使えばトーンの調整は可能ですが、レンズが作り出すものとは異なります。よく見てみると手前に広がる森林のディテールまでしっかりと解像しているのがわかります。
さらに私が注目したのは雲の白色です。白の中にも繊細なグラデーションがあり、真っ白な部分から薄いグレーまでの階調豊かな描写は、さすがLレンズの実力ですね。
ジオガイドの案内で三原山をトレッキング。昼過ぎに山頂火口付近に到達しました。このような光景を見ると、自然が作り出す世界にただ圧倒されてしまいます。荒々しく露出した地層がかつての大噴火の凄まじいパワーを見せつけているようです。
ここで再現したかったのは地層の細かな質感と色です。RF24-105mm F4 L IS USMの過剰ではなくナチュラルなシャープさにとても好感が持てます 。撮影エリアが制限され自由な移動がままならない火口付近の撮影では、24-105mmという幅広いズーム域が本領を発揮。ズームを駆使して1本で撮影しきれるのはうれしい限りです。
三原山を目指して出発した朝はあいにくの雨模様。濃い霧に包まれ視界は極めて不良でした。晴天を期待していたのに残念。しかし、雨天でなければ撮れない写真を撮ろうと気持ちを切り替えました。あえてこの天候を味方に付けて、島の空気感まで写し込んでみようと出発しました。
森を進んでいくと道をふさぐほどの大きな水溜りを発見。水面を覗き込んでみると幻想的な光景が。バリアングルモニターを活用して水面ギリギリまで手持ちでカメラを近づけて、水面の鏡像と現実世界を上下に映し込みました。
湿気を含んだ森の空気は肌で感じるもので、目に見えるものではありません。でも、写真から少しだけ冷たいしっとりとした空気を感じ取っていただけるでしょうか。
柔らかく差し込む光が、この森に生きる生命の力を浮かび上がらせている。そんなイメージをRFレンズが余すことなく取り込んでくれました。このような状況で最大限の結果を残してくれるレンズは、とても信頼できますね。
溶岩に根を張り天高く伸びていた樹木です。濡れた木肌が神々しさを放ち、美しさと頼もしい生命力を感じてシャッターを切りました。相手は樹木ですが、人物のポートレートを撮るような気持ちで向き合い撮影したつもりです。
伊豆大島には固有の植物が多く存在します。山道を歩くと、希少な樹木に覆われた森がたくさんの命で作られていることを実感します。
雨の森は日中とはいえ暗かったのですが、少しでも機材を軽くするために三脚は持参していません。全て手持ち撮影で挑みました。RF24-105mm F4 L IS USMの光学式手ブレ補正とEOS R6のボディー内手ブレ補正による協調制御ISの効果(最大8段分)が、手持ち撮影をサポートしてくれました。
この一枚は、伊豆大島名産「牛乳煎餅」を製造販売しているえびす屋の3代目、津崎ほたるさん。ほたるさんは生まれも育ちも大島で、この島を盛り上げるために日々活動されています。その一つがオレンジ色のキッチンカー。島には飲食店が少ないためキッチンカーでおいしいご飯を届けたいのだそう。
キッチンカーのプロジェクトはクラウドファンディングによる多くの支援のもとでスタートしたそうです。サーフボードに書かれているお名前は支援者への感謝の印。おいしいご飯で幸せを運んでください。
こちらの写真は、前回ご紹介した島の秘密基地的な宿、アイランドスターハウスで出会った猫たちです。クラシックな車のルーフトップがお気に入りの場所。瞬時にサッと構えて撮りたいスナップ写真でこそRF24-105mm F4 L IS USMはいい働きをしてくれます。猫を脅かさないように距離を保ちながら、ズームで画面を整えて撮影しました。
勝手に居着いてしまった猫たちだそうですが、宿のオーナー曰く、お客さんを連れてきてくれる招き猫のような存在なのだとか。いつまでも長生きしてほしいです。
風景、人物、スナップに対応する万能選手として〈買い〉です!
伊豆大島ロケ2本目のレンズ、RF24-105mm F4 L IS USM。広角から中望遠域までをカバーでき、強力な手ブレ補正機構を搭載したレンズは本当に万能です。RFレンズ最初の一本にも最適かもしれませんね。WIDE側からTELE側まで満足のいく写りはさすがでした。
特に雨天のしっとりした空気感まで写し込める描写力はRFレンズだからこそ。レンズ交換を避けたい雨の日に、自然風景、ポートレート、スナップなど多様なシーンを1本でカバーできて本当に助かりました。万能に使えるだけでなく、描写性や耐久・堅牢性には妥協のない「Lレンズ」のクオリティー。取材撮影には欠かさず持って行きたいレンズになりそうです。
その魅力を一言で表すなら、こういうことだと思います。
ジオガイド・西谷香奈さんと、登頂記念に三原山の「三サイン」。今回も伊豆大島の皆さまに多大なご協力をいただきました。少しでも大島の魅力が伝われば幸いです。次回もお楽しみに。
撮影協力:
一般社団法人大島観光協会