グランプリ選考会レポート 2024年 第2回GRAPHGATE
グランプリ選考会レポート
写真・映像作家の発掘オーディションであるGRAPHGATE。
その第2回のグランプリ選考会が11月30日(土)に開催されました。
一次選考、二次選考、そして、選考委員の前でプレゼンテーションを
行う
三次選考を経て、優秀賞に選出された遠藤励氏、玉昇沅氏、
篠田岬輝氏、
長谷川尚子氏、山口えり花氏の5名が、
グランプリをかけて
最終プレゼンテーションを行うグランプリ選考会。
当日会場には、選考委員のほかに、
佳作入賞者をはじめとした応募者たち、
そして、多くの観客が集いました。
第2回グランプリは、
山口えり花氏が選出
ピンと張り詰めた緊張感が漂う中で始まったグランプリ選考会。プレゼンテーションでは、自身がこれまでどのように作品と向き合ってきたか、そして、グランプリを受賞した際に開催できる個展のプランなどを発表し、選考委員との質疑応答も交えて、それぞれの想いを真剣に語っていました。プレゼンテーションを見終えた選考委員が、質疑応答の時間に賞賛を送る場面が何度もあり、5名それぞれが込めた想いは、きっと、会場を訪れた観客たちの心にも届いたのでしょう。一人一人のプレゼンテーションが終わると、会場は大きな拍手に包まれていました。5名のプレゼンテーションが終わり、グランプリを決める協議を行うために別室に移動した選考委員は、一様に悩んだ表情を浮かべ、議論が始まってもなかなか一人に決められない様子でした。5名の作品やプレゼンテーションが素晴らしかったため、差をつけることが難しく、審議は難航しました。それでも選考委員は議論を重ね、その結果、グランプリに山口えり花氏が選出されました。
「多様性」というテーマを
かわいくポップながら
深く考えさせる表現で世に問いかける映像作品
山口氏の作品『CANDY STORE』は、「多様性」をテーマに描いた映像作品で、『「多様性」という概念のもと、ありのままの意思やあり方が調整された先にあるものは、本当に多様性なのだろうか』と投げかけるもの。内省的で目に見えない疑問を、かわいく、ポップに表現しながら、鑑賞者に深く考えさせられる手法が高く評価されました。また、グランプリ選考会のプレゼンテーションで山口氏が語った、個展で発表する新作の構想内容にも期待が寄せられていました。グランプリを受賞した山口氏には、賞金100万円が贈られるほか、3年間の機材サポートやテクニカルサポートを実施。さらに、2025年にキヤノンギャラリー Sでの個展が開催される予定です。また、優秀賞となった遠藤励氏、玉昇沅氏、篠田岬輝氏、長谷川尚子氏の4名はキヤノンギャラリー銀座、大阪での巡回展を開催予定。個展開催の折は、ぜひ皆さまも足をお運びください。また、キヤノン S タワー1階のキヤノンギャラリー Sでは、第1回GRAPHGATEグランプリ受賞者である逸見祥希氏の写真展が、2階のオープンギャラリー1・2では、優秀賞、佳作受賞者の作品が展示された「GRAPHGATE展2024」が開催され、多くの人が訪れていました。
+++ グランプリ受賞 +++
山口 えり花氏ヤマグチ エリカ
ヤマグチ エリカ
山口 えり花氏
この度はグランプリをいだだき、ありがとうございました。正直、グランプリをいただけるとは思っていなかったので、とても驚いています。というのも、前回の三次選考に出たとき、参加された皆さんのプレゼンを聞いて、私は場違いなところに来てしまった、と思いました。もしかしたら、私の作品の方向性は、GRAPHGATEが求めているものと違うのかもしれないと感じ、疑問を抱きながらグランプリ選考会の準備を進めていました。けれど、三次選考とグランプリ選考会で、今までの私とはまったく違う畑で、でも、同じような思いを抱きながら作品を制作している方たちのプレゼンテーションを聞き、作品に触れられたことで、とても刺激を受けました。今回、GRAPHGATEに参加したことをきっかけに、これからもさまざまな作品を作り続けたいと思います。
選考員のコメント
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梶川 由紀氏
グランプリ選考会に臨まれた皆さん、素敵なプレゼンテーションをありがとうございました。非常に難しい選考で、また、第2回GRAPHGATEのグランプリがどのような方になるかは今後のGRAPHGATEにとっても大切なため、選考委員一同とても悩みました。今回、ここに立っている5人のほかにも、多くの方に応募いただいたことに感謝しています。GRAPHGATEはコンペティションですのでグランプリが決定しますが、応募された全員が今後も作品制作を続けてほしいと思っています。応募するプロセス自体を楽しみ、そこで成長する。今後もそのようなGRAPHGATEであってほしいと願っています。
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品川 一治氏
三次選考会から2ヶ月ほどという短い期間で、グランプリ選考会の準備をするのは大変だったと思います。その中で、皆さん、前回よりプレゼンテーションがよくなっており、単純にすごいと感じました。今回、グランプリを決定するのになかなか意見がまとまらず、GRAPHGATEの意義に立ち返る場面が何度もありました。作品やプレゼンテーションなどを総合的に評価し、今後応援したい作家を選出する。その結果、グランプリは山口さんに決定しましたが、ほかの4人も負けたとは思ってほしくありません。本当に僅差で皆さん実力があり、だからこそ、これからも頑張ってほしいと思っています。
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千原 徹也氏
グランプリの選考は本当に大変でした。5人それぞれによいところがあり、選考委員が推すポイントもさまざま。その中で、山口さんの評価すべきポイントが、ほかの4人よりわずかに多かったことでグランプリが決定しました。山口さんの作品には、個人的にすごく期待しています。一年後の展示もとても興味がありますし、これからどのような映像クリエイターになるかすごく楽しみです。だから、山口さんには、このグランプリに誇りを持ち、活動を続けてほしいです。そして、今後、多くの人に作品を楽しんでもらえる映像クリエイターになられることを願っています。
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長野 智子氏
皆さん、素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。全員、一年後にキヤノンギャラリー Sでの展示が見たいと思えるほど、優劣を付け難く、選考は非常に難航しました。その中でわずかの差で山口さんが選ばれたわけですが、山口さんの映像作品は、単に事物を撮るのではなく、内省的なもの、目に見えない物を表現するところに個性を感じ、キヤノンギャラリー Sで展示するとき、その個性とキヤノンがどのような化学反応を起こすかが楽しみという点が挙げられると思います。もちろん、優秀賞になった4人の作品も素晴らしく、お一人お一人に大きな可能性があり、今後の活躍を期待しています。
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藤森 三奈氏
5人全員に可能性があり、素晴らしいグランプリ選考会だったと思います。優秀賞の遠藤さんは芯の通った作品が素晴らしく、篠田さんの完璧なプレゼンテーションには選考委員全員が感心しました。長谷川さんも短い時間の中で溢れる才能を感じることができ、玉さんは写真家の入り口に立ったところだと思いますが、今後に期待でき、またチャレンジしてほしいです。そして、グランプリの山口さんは、一次選考でその作品を見たときからインパクトがあり、すぐにグランプリ候補だとピックアップしたのを覚えています。春、夏、秋と長い選考でしたが、GRAPHGATEとともに充実した日々を過ごすことができて感謝しています。